酸素の危機!?
「薬事法の一部を改正する法律」が2009年1月7日に公布され、
6月1日に施行される。
各メディアで「コンビニや家電量販店での販売」や
「ネットでの販売」というテーマは話題になっているが、
実はダイビング業界にも影響を与える対象がある。それは、
酸素
減圧症の治療として有効なことは言うまでもなく、
これまでは善意あるグレーな運用がなされてきた。
しかし、改正の動きにより厳しく規制される恐れがあり、
実際、そうした動きが目に見えて出てきた。
まずは、厚生労働省の通達からの抜粋と解説。
「(1)新法第25条第3号において、卸売販売業の許可については、
医薬品を、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは
販売業者又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者
その他厚生労働省令で定める者に対し、販売し、
又は授与する業務について行うとされたところであるが、
厚生労働省令で定める者は、次に掲げるものとしたこと。
(新施行規則第138条関係)」
つまり、医薬品を販売していい相手を定めていて、
ダイバーとしてのポイントは「その他厚生労働省令で定める者」に
ダイビング事業者が入るかどうか。
そして、厚生労働省が定める者についての事項の最後15番目に、
「⑮ ①から⑭に掲げるものに準ずるものであって販売等の相手方として
厚生労働大臣が適当と認めるもの」とあり、
「厚生労働大臣が適当と認めるもの」の具体例が以下のように挙げられている。
「潜函業務を行う事業者や有毒物質を取り扱う事業者等の
危険な業務を行う事業者であって救護のために医療用酸素等を
備え付けるもの又は中毒時に解毒剤等を使用するもの」
潜函業務を行なう者の救護とは、「潜函病」つまり「減圧症」のこと。
しかし、「潜函業務」に作業潜水は含まれておらず、
レジャーダイビングなどは言わずもがなである。
※潜函とは
先述したように、これまで酸素は善意あるグレーの運用がなされてきたが、
はっきり黒とされる可能性が出てきた。
実際、《NPO沖縄県ダイビング安全対策協議会》村田幸雄会長によれば、
「ダイビング関係者への医療用酸素の販売・供給について、
沖縄県の薬務衛生課より薬事法違反との通告が販売業者にありました」とのこと。
これまでダイビング現場への医療用酸素の配置と
DAN酸素プロバイダー育成、安全教育等を積極的に行ってきた
《NPO沖縄県ダイビング安全対策協議会》としても、
今後の対策を講じる必要性に迫られている。
その尽力の過程の一端を知る者としてはとても気がかりであるし、
実際問題、減圧症治療の後退や規制の全国への広がりが危惧される。
DANジャパンが厚生労働省に確認にいくとのことで、
まずは、その動きに注目したい。