フジツボのお話

ダイビング暦45年・やどかり仙人のアップアップ相談室

生物の多様性なんて話を、テラ和尚が大上段に切りつけてくるので、
“私ひとり、海に向かって立ちつくしているのです。壊れる地球を止めよ
うもありません(高石ともや)”みたいな問答になっちまって。自分に
喝!!

話は変わってではなぜ、これほどまでいろいろな生物がいるのか、亜
種、変種、親戚、おじさんおばさんみたいな、悪く言えば似たり寄った
りの、よく言えば微妙に違う生き物がいるのかって話。

50kgもの大間の黒マグロも回転寿司でおなじみのビンチョウだって、
少し離れりゃ、ほとんど相似形。シルエットで見りゃおんなじや。その
反対で近い親戚なのにまるで生態が違う。なぜだ。不思議だねーとし
かいえません。

今一冊のちっぽけな本を読んでいる。『フジツボ 魅惑の足まねき』(岩
波科学ライブラリー刊・倉谷うらら著)がそれ。

フジツボといえば、あの磯辺の岩に張りついて、いる富士山みたいな
生き物を思い浮かべる。でもあれは貝やらカニやらよう分からん生き物
で、はて何の仲間なのだろう?

正解はカニやエビの仲間で、甲殻類だそうな。カラを作って中に住んで
るやつと、尻尾で岩に食いついている亀の手みたい殻のないものま
で、千差万別、どれほどの種があるのか分からない。

ま、言ってみれば、動けない、いや動かないエビやカニといっていいら
しい。すんでいるところも、300度の熱湯の噴き出す深海底に居を構
える仲間もあれば、くらげに乗ってヒッチハイクするやつから、マナティ
ーの背中に住むやつまでいるそうな。

とりあえず富士山型のフジツボ(完胸超目)というらしい。さらにどんど
ん分類していって、鯨につくもので6種。一頭の鯨で数トンものフジツボ
を体に背負っているものもいるというから、これだけのほかの生き物を
養っている鯨もえらいし、また生きる環境として、鯨の胴体を家にした
フジツボもえらいとしかいいようがない。

もちろん鯨の先祖が海に入ったのは5000万年ぐらいの昔、その背中
で暮らすように進化したのも、まさに生物の多様性なのかなーと思う
ほかない。

やどかり爺の遠い親戚の、フジツボのはなしでした。

蛇足だけどこのフジツボの本の著者、イギリスの大学で生物学の勉強
してそのマニアチックば研究はもとより、フジツボでアクセサリー作りま
しょうなんていう変わった人です。

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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