Q.2本目が深くなってしまうのですが……

ダイビング暦45年・やどかり仙人のアップアップ相談室

相談室といっても 殻1つ身1つ。
たいしたご返事もできませぬが、
せいいっぱいお調べしてお答えしてみましょう。

今回のご質問は,若い(たぶん)かわいい(たぶん)女性(たぶん)からのもの。

Q.
“沖縄のリゾートにいきました。
午前中はしっかりと12mでチェックアウトダイブ。
午後は待望のボートダイビング24m。

ここでダイビングの教科書を思い出してちょっと不安になってしまいました。
だって、浅いダイブが先で、深いダイブが後、これっていけないんじゃありませんか?

減圧症がちょっと心配になりました。大丈夫なのでしょうか……。

A.
深いダイブを先にするのをフォワードプロファイル、
浅いダイブを先にする反復ダイブをリバースプロファイルなどと最近は申すようです。

かくいう仙人も最近知ったわけでありまが、このリバースプロファイル
が良いのか悪いのかという、ご質問であります。

爺の特権としてまず背景的な余談から始めましょう。

この深いダイビングを先にするというのは、
リクリエーションダイビングがスタートしたころから、
鉄則と言うか、金科玉条(表現が古いナ)のごとく、30年にもわたって、
横暴かつ教条的に、ダイバーに君臨していたルールであります。

しかも潜水医学の専門家から、わたくしヤドカリ仙人も、
はては昨日カードをもらったノービスダイバーまでが
疑うことなく守っていたという常識中の常識ですから、
リバースプロファイルに突然遭遇した、
質問者がびっくりするのは無理もございません。

これにはいささか背景の変化がありました。

10年ほど前に、さすがにどなたか疑問を抱く学者グループがいたらしく、
リバースプロファイルの根拠を再検討する会議をDAN
(といってもDAN japanじゃありません。海の向こうの)が開催した結果、
具体的な根拠がみつからないという、驚くべき結論に達します。

簡単にいえば、しないほうがよいけど、
しちゃいけないという格別な理由がなかったってことなんであります。

では、誰が言いだしっぺかという犯人探しをしてみると、
どうも’70年代のPADIのテキストが最初らしい。

リバースプロファイル(そのころはそんな言葉はありませんが)は、
しないほうが良い→してはいけない→‘90年代にはついには絶対にいけないと、
だんだんとエスカレートしていったという噂ですが、
他の指導団体だって、右に倣えで似たような表現をしていたのですから、
あながちPADIだけのせいともいえませんぞ。

ただ嘘から出た真って諺があるように、
このおかげでどれだけのダイバーが減圧症から救われたか分かりません。

と勝手に思い込んでる、責任の一端をになったヤドカリ仙人であります。
今日のところは「フォワードリバースプロファイルが絶対に正しいというのは、
ひょっとしたら単なる思い込みかも?」ということを知っていただき、
次回に続きます。

 

 

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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