アルミとスチール、どちらが使いやすい?

ダイビング歴45年・やどかり仙人のアップアップ相談室。

■其の一 「アルミが軽いは早とちり?」
■其の二「アルミが軽いのかスチールが重いのか」

タンクのお話。最後は「アルミとスチールどちらが使いやすい?」です。

理屈の上では、 アルミであろうと、タンクであろうと、
容量が同じなら、ダイビングの終了時に減る空気の重さは同じなんですが、
アルミタンクが浮くという感想をおもちのダイバーは多いようですな。

理由は2つ。

最初の理由は、スチールタンクはもともと充填水中重量が、
使ってしまった空気の重さより重いのです。
空気を使ってしまっても浮力はマイナスのまま。
一方、アルミタンクは空になるとわずかに浮くようにできております。

第2の理由は、同じ容量のタンクでも、アルミのタンクは長いために、
空になるとBCDの固定ベルトから遠い底の部分が浮きやすい傾向があります。
どうもこの不安定さが敬遠の理由のようです。
この底の方が浮くのを嫌うダイバーには、
固定ベルトが2に本になっているBCDを選ぶという方法もありますし、
タンクの底のほうに取り付ける、調整用のウエイトも市販されておるようです。

最近は水面に戻るダイバーは、5mでの安全停止がほとんどマストになっておるので、
どうしても浮き気味になるのを敬遠されるようですな。

しかし、タンクの浮力の変化なぞ、結局は空気の重さだけであります。
アルミが軽いとすれば、その分1kgほどのウエイトをベルトに足すか、
ポケットに入れておけばすむのですが、
どうも重いスチール派のほうが多いようですな。

タンクが重い分、ウエイトが少なくてすむというのが、
スチール派の好きな理由のようです。

特にドライスーツ派が増え、しかも厚いアンダーガーメントを着ているなんて状況では、
当然多くの浮力相殺用のウエイトがいり、ウエイトベルトが重過ぎるといったわけで、
スチールタンクにウエイトを分担していただこうというのも理屈であります。

現実はウエイトをベルトにつけるか背中に分担するだけのことであります。大切なのは好きか嫌いかではなく、選ぶ理由であります。

昨今は何かと中性浮力、中性浮力(大昔に私が作った翻訳造語ですが)と大騒ぎしますが、
トータルの浮力の変化からみれば、タンクの浮力の変化なぞ、
たいしたもんじゃございません。

スチールが好きか、アルミが好きか、どちらでもよいのですが、
ぜひ充填水中重量、水の中で重いかぐらいは、
タンクをレンタルするときに確認していただきたいと思うのであります。

特に外国では圧倒的にアルミタンクが多いようです。
どちらが好きよりどちらも好きであって欲しいと、このヤドカリ爺は思うのであります。

蛇足ですが、ダイビングのタンクは急激に200気圧まで加圧し、
非常に短時間で減圧する、つまり急激に膨らませて、
急激にしぼませるという使い方をされます。
しかも水中でのバランスのために薄く作られていて、まるで風船のようなタンクです。
ぜひデリケートな取り扱いをしていただきたいものですな。
 

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
FOLLOW