水中ご遺体捜索ドキュメント 水中編
陸上編
■撮影/石丸智仁
※注意:以下記事の中には、ご遺体の一部が写った画像があります。
水中ご遺体捜索の一日が始まる。まずは打ち合わせから。
今回の水中捜索に費用はNPO法人ユニバーサルダイビングネットワーク(UDN)と
日本財団の助成金でまかなわれている。
有志メンバーで始めたが、活動のしやすさや費用のことを考えて、
太田さんが理事を勤める障害者ダイビングのNPO法人で、
「潜水捜索救難協会」部門を作って活動を行っているのだ。
これまで25体のご遺体が上がっていて、
沿岸部や瓦礫の集まるところで発見されることが多かったそうだ。
特にカキやホヤ、ホタテの養殖イカダにひっかかっていることが多く、
クレーンでイカダを引き上げたときにご遺体が引っかかっていたり、
引上げた後のイカダを仕分けしていたときにご遺体が見つかったりしているとのこと。
そこで、水中捜索はこの養殖イカダと水中に瓦礫が集まっていそうな場所を重点的に行われる。
海図をもとに予想を立て、しらみつぶしに探していく。
当初は海に出ればご遺体が収容される状況だったが、
今は時々見つかる程度。それでも取材日の4日前に収容されたばかり。
※
ボランティアセンターから車で10分。
漁協の跡地で、持ち込んだ器材をセッティング。
コンプレッサーは現地にある。
※器材提供:ダイビングショップNANA
山田湾は波ひとつない穏やかな海。
ここが津波の舞台となったとは信じられない。
和船に乗って瓦礫をかきわけ”あたり”をつけたポイントへ向かう。
水面には木材やベット、ランドセルなど生活材がたくさん浮いていて、
ペラに絡みつく危険性があって慎重な操船が求められる。
目指す養殖イカダに到着。イカダに船を係留しエントリー。
エントリーしてまず目に飛び込んでくるのは、
イカダから水底に垂らされた養殖用のロープ。
そのカキやホタテ、ホヤがびっしり付いたロープを横目にまずは水底を目指す。
水温9℃。水底はヘドロ状で、透明度は1mにも満たないが、
浅瀬に行けば5㍍以上あってわりときれいな印象。
はぐれないように、バディ同士ロープでつながって捜索。
水中拘束を想定しナイフは必須。
また、ご遺体が見つかったときのリフトバックなどが通常とは違う装備。
およそ水深35mの水底には、ヘドロに混じって、
人の生活の痕跡がそこかしこに沈んでいる。
あらためて、津波の破壊力を思い知らされる。
ヘドロに沈む自動販売機と漁協のものと思われる桶。津波のパワーの凄まじさを物語る。
養殖イカダの残骸と家の残骸の中から出てきた着物の帯。
引き上げられたアルバム写真。
いろいろなものが沈んでいるが、人の温もりを感じさせる、
“その先の持ち主”を連想させるものを見ると、
一気にリアリティが増して胸に迫るものがある。
水底の瓦礫の中でご遺体を探した後は、水深を上げて養殖イカダの捜索。
まずは、外から目視でイカダの中にご遺体がひっかかっていないかを探す。
確かに、引き波でもっていかれないとすれば、
このイカダにひっかかるのが自然だと感じる。
垂れ下がる養殖ロープの束の中を確認し、
安全が確保できるようであればイカダの中に入ってご遺体を探す。
およそ25分でエグジット。絶対に事故は起こせないので無理は禁物だ。
こうして今回は2本潜ったが、残念ながらご遺体を見つけることはできなかった。
※
以上が水中ご遺体捜索の一部始終だが、以下、
この活動に参加して感じたことや今後の展開、
さらに、活動にかかわる方々の声などを紹介する。
■水中捜索のダイビング
ダイビングに関して率直にいえば、想像していたより難しいものではなかった。
水温は9℃であるが、ドライスーツでしっかり保温すれば問題ないし、
湾内の海況は非常に穏やか。透明度は悪いものの、
もし、はぐれても落ち着いて浮上しフロートを上げれば問題ないだろう。
また、捜索方法は基本的には目視なので、特に危険な作業ではなく、
実際、僕も2本目は捜索に加わった。
しかし、間違ってはいけない。
これはその前の活動があってこそ。
状況がまったくわからず手探りの状態で潜らねばならない当初は、
考え尽した装備で潜らねばならなし(実際、最初はヘルメットをかぶって潜水)、
綿密な計画を求められる。さらに、ストレスは雲泥の差だろう。
ここで考えられる今後の可能性としては、段階的なダイバーの投入。
まずは経験豊富なダイバーが準備として潜って道筋をつけ、
状況がある程度できあがったところで、
その作業に見合ったスキルを持つダイバーが潜るというもの。
また、作業に見合ったスキルを身につける訓練と認定を行なうことも大事。
※「手が足りない」「うちにも潜って欲しい」という声が各地であり、
潜水捜索救難協会ではボラン