遠のく華やかなキャンパスライフ……
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結局、入部した女子は私1人。男子は4人。5名の1年生と、
男3名、女1名の2年生、男6名の3年生、総勢15名で活動はスタートした。
「練習は厳しい」。その通りであった。
練習は週に3回もある。
まず火曜日は、千駄ヶ谷にある東京体育館の屋内プールで水泳のトレーニング。
ダイビングに泳力が必要なのは当然であり、
1年生の多くも中学、高校時代は水泳部に所属していたり、
スイミングクラブに通っていたりして、難なくこなした。
木曜日は神宮外苑の1.3㎞の周回コースを走る陸上トレーニングが行われた。
「法政〜、ファイト(ファイト)、ファイト(ファイト)!」と掛け声をかけながらランニング。
「声が小さい!」と叱咤激励を受けながらひたすら走る。まるで体育会である。
しかも、どのくらい走るかは上級生の気分次第、
5〜6㎞の日もあれば、10㎞を超えることも。
うさぎ跳びやらヒンズースクワットが加わることもある。
受験で身体が鈍っていた1年生は全員が音を上げた。
海という巨大なエネルギーを持つ自然に挑むダイビングは、体力が必要なのは分かる。
けれども、1年生は水泳は楽勝でランニングは辛いと知ると、
プールトレがなくなり、陸トレが週2回になったのはなぜ?
鬼軍曹のように立ちはだかる上級生に疑問をぶつけることなどありえない。
ダイビング上達のためには、理不尽に耐えることも学ばなければならないようだ。
私が入部したことを後悔したのは、厳しい練習よりも、クラブの挨拶を知った時だった。
海は男だから、女だからと手加減はしてくれない。
だから同じ練習をするというのは納得できたが、挨拶も男と同じ「オッス!」とは……。
「オッスなんて言いたくない。言うものか」と内心では思っていたが、
2年生の小柄でかわいらしいく、とてもオッスなんて言いそうもないM先輩も
「オッス!」と言っているではないか。
私も「オッス…」と口にした瞬間、都心の大学での華やかなキャンパスライフは遠のいていった。