流氷の下から中継
こんにちは。須賀潮美です。
Dコミュで話題に上がった潜水士免許。私も大学生のときに取得しました。
けれども、更新のない潜水士免許、写真は女子大生のまま。
今でも通用するのかドキドキです。
さて、今回は「ニュース・ステーション」初リポートとなった知床の海です。
2月の末、知床半島に流氷が接岸した。
本来なら卒業試験のはずが、大学封鎖により中止に。
これが私には幸運をもたらし「ニュース・ステーション」のロケに参加できることになった。
フルフェイスマスクを付けた私が水中からリポートし、
地上で作家の立松和平さんが、
水中から送られてくる画像をモニターで見ながら私と会話をする。
後にシリーズとなった「立松和平・こころと感動の旅」の
掛け合いスタイルがこのときから始まった。
「立松さん、海底にカニがいます!」
「あ〜、カニだね〜。海の中の命だね〜」
かみ合っているのかいないのか……、よくわからない会話が展開されたが、
報道番組といえば、アナウンサーがきれいな発音で話すのが当然と思われている中で、
シューボコボコという呼吸音とともに話す水中リポーターと、
栃木のお国訛りで話す作家は異色のコンビとなった。
知床半島の特集は、1本目はオホーツク海に面したウトロ側、
2本目は太平洋に面した羅臼側を取り上げた。
ウトロ側はロシアから流れ着く氷がびっしり接岸する。
多い年には数㎞にわたり氷の平原が海に現れる。
流氷で覆われた海に潜るため、地元の力自慢の漁師に協力してもらい、
バール(鉄の棒)でガツガツと氷を砕き(今はチェーンソーを使用するそう)、
穴を開けてもらう。流氷に潜るのは洞窟に潜るのと同じだ。
出入り口を見失ったら命取りになる。
穴を見失わないようにガイドロープが必要だが、
私は音声集録用のケーブル、カメラマンはカメラケーブルをガイドロープ代わりに潜る。
水温はマイナス2度。やはり冷たい。
フルフェイスマスクの中で吐く息が白くなる。
ドライスーツに分厚いグローブ、顔はフルフェイス。
身体が水に触れる部分はなくても、どんどん熱が奪われていくのがわかる。
けれども、流氷の海中風景には圧倒された。
海中から見上げると、青白く光る巨大な氷の塊がいくつも連なり、
大理石の宮殿の中にいるようだ。
海底にはオレンジや白のヒダベリイソギンチャクの群落が花畑のように広がり、
カニ、ガジやゲンゲといった北の海特有の魚たちが
愛くるしい顔であたりをうかがっている。
流氷でおおわれた北の海は、つかの間、静かな眠りについているように見えた。