4つのE 〜ダイビング教育〜
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我れ潜る。故に我あり。
「4つのE」という表現がある。
もっともこの「4つのE」、分野によってさまざまなようだ。
たとえばビジネスリーダーに必要な4つは、
Energy(→仕事を成し遂げる熱意)、Energize(→周囲を元気づける)、
Edge(→困難な問題にも決断を下す)、Execute(→実行力)だそうである。
PADIも独自に「4つのE」を組織の基盤に掲げている。
Education(教育)、Equipment(器材)、Experience(経験)、Environment(環境)
の4つがそれだ。
実はこの4つはダイブマスター・マニュアルの
「ダイビングビジネスとキャリア」の章に出てくるので誤解されやすいようにパパもんは思う。
ビジネスとしての教育とは継続教育、つまり次のランクや
スペシャリティのカードを売りつけるための講習をどう勧誘するか、
器材とは器材販売で利益をあげる方法のレクチャーかと受けとめられかねない。
パパもんはこの4つのEを自分なりに次のように理解している。
まず人間は水中では生きていけない。
水中世界という未知の環境(Environment)に入っていくという
エキサイティングな経験(Experience)を味わうためには
それなりの器材(Equipment)を身につけなければならない。
そのために必要となるスキルを教えるのが教育(Education)なのだが、
そこにはふたつの側面がある。
まずダイビングという活動の土台となるスキルとして、
水中という特殊環境でリスクを管理し安全を維持するために必要な能力の開発がある。
これなしで水中環境に行こうとするのは無謀だが、しかしこれはあくまで「手段」でしかない。
目的はもうひとつのE、すなわちEntertainment、水中環境を楽しむということのはずだ。
![](http://media-diving-commu.oceana.ne.jp/media/40/20111021-4E.jpg)
お恥ずかしい話だが、以前のパパもんは後者の部分を軽視しすぎていたように思う。
まるで修行僧よろしく、ひたすらスキルアップを目指してトレーニングを積ませ、
あるいは知識の習得に専心させることだけが、
つまり果てしなく長い講習を続けることだけが「教育」だと勘違いしているところがあった。
しかし、今、パパもんが一番重視しているのは「潜る」ということの楽しさを伝えることだ。
パパもん潜水塾(こういう名前でやってます)の塾生たちがいったんその楽しさに目覚めれば、
ほっておいても自分の力でスキルや知識を身につけたいと思うようになるだろう。
教育とは、ダイビング教育であれ、学問の場合であれ、
生徒を「自律」させることなのであり、
その意味で一番ダメなショップとはお客さんを
いつまでも自分のショップにつなぎとめておくためなのだろうか、
ガイドの後ろを金魚の糞のようについてくことしかできないダイバーを作り出すショップだろう。
こう考えてくると、残念ながら日本のダイビング業界の全体的方向性は間違っていると思わざるをえない。
パパもんはダイビングをビジネス、金稼ぎの手段にするなと言っているのではない。
教育かビジネスかは二者択一ではないだろう。
(パパもんも私立大学で、学生からいただいた授業料から給料をいただいている。)
そうではなく自分たちが「教育」にたずさわっていると自覚して欲しいと言っているだけである。
学なんかなくても、この業界にはパパもんにとっても「先生」はいっぱいいる。
水中生物の生態を熟知し、たぐいまれな個体識別能力を持つガイドさん、
はるか遠方から微細な、あるいは擬態している生物を探知する能力にたけたガイドさん、
仕事だから当然つきまとう苦しさを微塵も感じさせず、
全身から「楽しさオーラ」を出しているガイドさんの背中から学べることは多い。