ダイビングって危ないの? を巡る話

〜やどかり仙人の炬燵話〜

前回はダイビングの死亡事故率について、DANアメリカが発表した
10万人につき16.4人という統計を発表したというお話でした。

錚々たるみなさんから、いろいろなご意見、ご感想をいただきました。

大雑把過ぎる、タンクの本数あたり
つまりダイビングの絶対回数あたりの事故率が分からなければ意味がない、
どうデータを集めても実態をつかむのは、難しいだろう……などなど。

どれもまさにそのとおりであります。またヤドカリ爺のお話の本意はそこにありました。

もちろん飛行機のように、飛行時間あたりの事故率がわかるのがベストでしょう。
本当にアクティブなダイバー人口の事故率が求められれば、それが理想であります。

タンクの本数から割り出せというご意見は傾聴に値いしますが、
ではダイバーが使用したタンクの本数は、どうすれば集計できますのやら。
カードだけ持っている休眠ダイバーがはたしてダイビング人口の一員といえそうもないのですが、
これをダイバー人口から差し引く方法は、そう簡単ではございません。

事故率として捉えるには分母になる根拠あるダイバー人口数が必要なのですが、
これがまるで、あっちにふらふらこっちにふらふらの正体不明で、
結果として誤差偏差といったレベルとは程遠い数字がでてくるのであります。

そんな中で、DANアメリカが自分の組織の実態的な数字保険の加入者数、
そして死亡事故者数という分母と分子にして計算したということです。
分母と分子になるデータを同時に持っている数少ない組織だということです。
しかもDANは基本的にはダイバー会員の会費で運営されている組織であります。

もちろん保険会社は、当然ダイビングのリスクに関するデータは持っておりましょうが、
これはビジネス上のトップシークレットだと思われますし、ダイバー目線での情報ではなさそうです。
その意味では、DANの統計は、リクリエーションダイバーの視点での統計であると、
ヤドカリ爺は期待している、いやそうあってほしいと期待しておるのであります。

このDANアメリカと申しましても、カリブ海からハワイまで、
さらには寒冷地にカナダ、アラスカまでのエリアをコントロールしているわけで、
メンバーそれぞれの気候、海況、ダイビングスタイルなどの条件も違うわけであります。
当然事故の起きかたも違うであろうとおもわれます。

そんな意味で誰にでも、どこででも、ドンぴしゃりと当てはまる統計データなんてものは、
はなから無理なんですな。
その逆にダイビングスタイル、環境、地域性に根ざした、
ローカルな事故分析が大切ってことになるわけであります。
ちなみに最近メンバー増が目覚しいといわれるDANヨーロッパも
この会議に事故分析のデータを発表しております。

このちっちゃな島国にも、グーンとサイズは小さいもののDANJAPANがございます。
年間何千人のダイバー保険の加入者がいるかは分かりませんが、
それでも10年間の保険の加入者をまとめれば、5万や10万人にはなるでしょう。
当然、保険金の支払いを請求されたダイバーの実数は分かるはずですな
(もちろん事故の当事者すべてが請求していると限りませんが)。
しかも、一応医師の診断書のような証明もついておりましょう。
どちらにしてもこれも、貴重な情報源であります。

これを分析すれば、次の世代の安全につながるヒントの1つや2つは出てきそうなものであります。
いやそれどころ最も具体性を持ったデータはDAN JAPANにもあるはずなんですが、
あいもかわらず、DAN JAPANはなにもしませんな。

海上保安庁からもらった事故資料をそのまま、
DAN JAPANの名前でリリースしているだけであります。
DAN JAPANはメンバーから会費をいただいているダイバーの支援組織ですから、
警察権を持つお役所目線で集めたデータをそのまま、
メンバーにリリースするなんてのは、おかしいとヤドカリ爺はおもっております。
(しかもこの15年間、まったく同じ内容とテキスト)
と最後は愚痴というか悪口になっちまいましたが、今日のところはこのへんで、、、。

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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