知床の海から水中生中継
こんにちは。須賀潮美です。
先日は学生時代からの知人で、知床の漁師であり
TV撮影の時は強力な助っ人ダイバーとなるSさんの上京に合わせ、
仲間と恒例の忘年会。新橋駅前の某店でおおいに盛り上がりました!
さて、今回はその知床で、
水温マイナス1度の極寒の海から生中継を行ったときの話を。
※
「ニュースステーション」は生中継にこだわった。
全国の桜の名所を訪ね、
満開の桜をライトアップした豪華な「夜桜中継」は名物コーナーになった。
当時は夜の生中継、しかも水中生中継は前例が少なかったことから
「ここはやるしかない!」と1月5日、お正月明けの1回目の放送に、
知床半島から生中継することが決まった。
気温はマイナス13度、水温はマイナス1度の極寒の地に、
およそ50名のスタッフと共に訪れた。生中継の舞台は知床半島のウトロ。
流氷ダイビングでおなじみの場所だが、1月にはまだ流氷は接岸していない。
潜るのはウトロ港のすぐ側の水深5mほどの海底だ。
港の中なら穏やかに思えるが、冬のオホーツク海は大荒れ、
透明度は3mほど、うねりで海藻の切れ端が舞い上がっている。
東京のスタジオにいるメインキャスターの久米宏さんと回線が繋がる。
水中ではモニターを見ることができないから、映像なしで音声だけで会話をする。
久米さんは「厳冬のオホーツク海からの水中生中継は史上初の暴挙」と前振りし
「テレビというのは信じられないんですが、
海の底に潜っている潮美さんと話ができるんですよね。
海底の潮美さん、寒くないの?」と問いかけてきた。
寒いに決まっているが、身体の濡れないドライスーツを着ていること、
下にはセーターをしっかり着込んでいると笑顔で答え、
水中で出会った花咲ガニやエゾバフンウニ、コンブの森、
真っ白な花畑のようなヒダベリイソギンチャクの群落、
水中ライトに集まって来たプランクトンを食べるコマイなどを次々と紹介した。
水中生中継では、水中カメラ2台、ライト、水中をリポートする私、
サポートダイバーと、7名ほどのダイバーが潜っている。
大がかりでケーブルが届く範囲も限られていることから、
さほど移動は出来ないものの、さすがはオホーツク海、
魅力的な生き物が切れ目なく登場する。
だが、なにしろ海が荒れている。
吹雪の中、陸上でレポートをする立松和平さんは雪だるまのようになっている。
水中もうねりが強く、身体を安定させることはできないし、
水中カメラも翻弄され船酔いしそうな映像しか撮れない。
けれども、TVを見た知人からは
「夜10時過ぎに、お正月気分の抜けないお茶の間で、
コタツに入りミカンを食べながら『うわぁ〜、荒れている。
あんなにスゴイ所に潜っているよ』と見た知床の海中は迫力満点だった」と褒められた。
翌、1月6日にも知床海中生中継を行った。
1日違いで奇跡が起きたかのように海の様子が激変したが、
この時の様子は次回に。
つづく
「ニュースステーション」初の生中継は知床から。
私の後ろにあるのは、中継用のパラボラアンテナ(1987年)