和尚はストレスダイバー

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今回の取材では、いろいろ収穫があったが、
最も考えさせられたのが“ストレス”について。
やはり、自分はストレスダイバーと再認識。
1本目。
エントリー直後に「ヤバイかな……」という予感は
あったのだが、やはり潜降中にストレス全開。


潜った直後にもう上がりたくなり、
頭が「イヤダ、イヤダ」、「上がりたい、上がりたい」と
指令を出す。
明らかに呼吸が速くなり、心臓はバクバク。
息が詰まる思い。
しかし、さすがは“深呼吸様”。
目をつぶりながら、
深呼吸をしばらく続けたら何とか落ち着きを
取り戻すことができた。
今回のストレスの原因は明確だ。
まず、2ヶ月ぶりのダイビング。
ボートダイビングに限れば昨年末以来となる。
そして、低水温(心臓との動きに連動しているし)と
潜降時に水底が見えないこと(人間、把握できないことにはストレスを感じる)。
そして、最もストレスの原因となったのは、
やはり“取材”ということだろう。
さらに詳しく考えれば、
一緒に潜るガイドさんとカメラマンがいずれも
自分など話にならないくらいのベテランダイバー。
“迷惑かけてはいけない”。この思いがまず大きい。
そして、二人も僕に対して、安心しきっているはず。
また、取材でのダイビング自体が少々ハード。
正直、無理をする。
減圧停止は出ない程度に深場にいることも多いし、
エアがギリギリまで潜ることも多い。
しかも、仕事なので成果が求められるわけで、
そのプレッシャーも感じている。
特殊に思うかもしれないが、
“ブランクダイビング”や“迷惑をかけてはいけない”
という思いなどは、
皆さんにも置き換えることができるだろう。
ストレス、そしてパニックにならないためには、
やはり久しぶりのダイビング時は、
まずはストレスの低いスポットに潜ることが大事。
徐々に水深を落としていけ、岸に泳いで帰れる
穏やかなビーチスポットは、
その点、ブランク明けにはもってこいだろう。
“迷惑かけたくない”という思いは、
自分と同じくらいのレベルの人と潜るとか、
自分の不安をカミングアウトしてしまうなどを心がけたい。
夜に話を聞くと、
もう25年くらい潜っている北さんでも、
パニックに近いストレスを感じることがあるという。
そんな二人が共通して「あるある!」となったのが、
“レギュレーターを外したい”という衝動。
何というか、合理的に考えられなくなり、
水中でどうしても「プハァ〜」と息が吸いたくなり、
「レギなんかいいや」という思いがしてくるのだ。
僕は元々ストレスを感じやすいタイプなのだが、
北さんは若いころはまったく感じなかったが、
歳をとったら感じるようになったと言っていた。
守るものが増えたからだろう。
「ダイビングって怖い」
この思いは10年以上潜っている僕の中に常にあるし、
北さんにもある。
そして、ガイドさんにもあるとのことだった。
今回お世話になったTATSUMIのガイドさん、
通称“親方”が言っていたが、
「怖さをまったく感じたことのないプロダイバー
ってのは逆に怖い」。
まったくの同感。
意外とストレスを抱えているダイバーってのは少なくないのだが、
人間、自分ができることは他人もできると思いがちなわけだから、
自分がストレスを感じたことがなかったら、
人のストレスには気が付きにくいような気がする。
また、ダイビングをテーマパークみたいに考えて気軽に
潜る人もいるが、やはりダイビングは怖い。
いや、誤解を与えてしまうかもしれないので、
言い直すと、ダイビングは楽しいが怖い面もある。
僕はストレスなく潜る方法論は知っているのだが、
つい取材ではそれを主張できない。
実際に、その主張を通せば支障が出てしまうし。
それは、何となくお店の流れに巻き込まれてしまう
ダイバーさんも同じことだろう。
また、プロダイバーの中でもストレスを抱えている人ってのは
結構いるのではないかと思う。
僕と同じように仕事で潜るわけで、
ゲストの前で変なことできないし、
客商売なので、勝手なこともできないだろうし。
雇われている若手なんかは特に。
プロダイバーが自分のストレス体験をゲストに話すってことはとても有意義だと思う。
まあ、何はともあれ大きなストレスを感じ、
対処できたことは大きな収穫だった。
読者にも親身になって適切なアドバイスができるだろうし。
余談だが心と頭はリンクしているので、
今回、水中で便意を催した際もものすごいストレスで、
パニックになるかと思った。
ストレスは数が増えていくわけではなく、
どんどん加速するもの。
小さくてもストレスの芽を潰すことが大事。
今回の取材では、その他、ドライスクイーズについて、
ビーチでフィンをはく新たなコツ、
取材時のダイビングリスクのマネジメント、
ドライの吹き上がり対処法などなどスキル的な発見もいっぱい。
さらに、サービスとショップ、いいお店と悪いお店、
Cカード講習の適正価格、ガイドと恋愛、などなど
現場のガイドさんを交えて盛り上がったし、
新しい知識もたくさん得た。
これらはおいおい日記にアップしく。
やはり現場に出ることは大事だと実感した次第。

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writer
PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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