減圧症事件③ 対面

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皆さま、温かいメッセージやご意見ありがとうございます。
参考にさせていただいた意見もあります。
とりあえずは見守っていてくださいませ。
それと、僕はまったく大変ではありません。
考えたり、電話したりしているだけですから。
相手と直接話しているわけではないですしね。
大変なのはMさん。


【対面】
Mさんとアポを取る。
待ち合わせは御茶ノ水。
そこが「東京医科歯科大学」があるからという理由が切ない。
つまり、Mさんはチャンバー治療帰り。
電車の中でなぜか緊張。
何て声をかければいいのだろう?
っていうか、俺、おせっかいかな?
いきなり「会いましょう」って変なヤツだよな……。
などと考えるが、考えても仕方ないので、
まあ、成り行きにまかせよう。
階段を上がるとMさんがいて、笑顔で迎えてくれた。
おかげで「はじめまして〜」と普通に話すことができた。
喫茶店に入って話を聞くと、
減圧症事件の内容に関してはメールの通りだったのだが、
狂わされてしまった生活がとても気の毒だった。
Ⅱ型という重度の減圧症のため、週3回のチャンバー治療。
計画していたダイビング休暇はもちろんキャンセル、
会社も休むハメになってしまった。
医者からも「直るかどうかわからない」と言われており
(医者は大抵こう言うのだが)、
かなりの落ち込みようだった。
おそらく僕に気を遣って、気丈に振舞っていたのだろうが、
時折、目に滲むものがあったように思う。
自分に置き換えて考えてみる。
僕がもし一生潜れないと言われたら、
立ち直れる気がしない(僕の場合、仕事なのでちょっと特殊だが)。
もちろん、Mさんには潜れる日が来ると信じている。
そして、前日とまったく反対の感情が生まれる。
前日は訴えるかどうかなど冷静に考える必要があると考えたが、
Mさんを目の前にして、
単純に先方のガイドを「とっちめてやる!」と思う。
Mさんの「許せない」という気持ちは当然。
しばらく話したが、よく考えがまとまらない。
どうしたものか。そして、どうしたいのか。
結局、まずはとにかく抗議をしようということに。
Mさんもこの時は裁判など
大事なことを望んではいなかったし、
相手の対応を見てから考えようということに。
1時間ほど話して御茶ノ水駅で別れる。
Mさんは何度もお礼を言ってくれたが、
お礼を言われるような、
建設的な解決法を示すことはできなかった。
難しいのは僕が当事者ではないことだ。
僕がMさんなら、もう、ガウガウ騒ぎ立てて
自分のすべてを使って追い詰める。自信もある。
裁判に負けたって追い詰める。
とっくに実名だって挙げているだろう。
帰りの電車の中で自分のスタンスについて考える。
“味方の相談者”でいくことを決める。
僕はMさんの味方。これは、メールでのやりとり、
実際に会った印象、共通の友人からの話、
先方ガイドの性格(僕も面識有り)などから考えて、
総合的にMさんのことを信じることにした。
そして、Mさんが望むなら何でも相談を受ける。
きちんと最後まで。
相談に対して、僕なりに真剣に最善策を考え提案するし、
動けるところは動く。
ただ、当事者でも代理人ではないことはわきまえる。
選択はMさん。
そんなことを思いながら、
相手の誠意ある対応を心の底から期待して家路に着いた。
※明日へ続く。
【付記】
減圧症に罹ると生活が狂ってしまう。
最近は、減圧症に対する無知から罹患する人も増えている。
変な表現だが、とても“もったいない”。
Mさんのように自分のせいでないのに罹患してしまう
人がいるというのに。
ダイブコンピュータに表示される“無減圧潜水時間”を
理解してないようでは、
ずっとダイビングを続けていく上でリスクが高過ぎると思う。
必ず、理解して潜りましょうね。

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writer
PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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