法政大学アクアダイビングクラブのおもひでぽろぽろ(第3回)

ビールのラベルの向きと長髪を叱られて困惑 ~新入生歓迎会の衝撃~

この記事は約4分で読めます。

俺はダイビングのクラブに入ったんじゃなかったっけ?

大いなる疑問を抱えたままクラブ活動が始まる。
そんな疑問をさらに大きくさせることになった一大行事が、“新入生歓迎会”。
新歓コンパではなく、正式なクラブ行事で、OBも多く参加するお披露目会だ。

会に向けて、全OBへの招待状発送、会場の手配などなどクラブは慌しくなる。
名目は新入生のためだが、OBのためでもあり、先輩たちがOBに対して自分たちの管理能力を示す会でもあるのだ。
上級生から、事細かに指示が出る。

総会で教わった、大声での挨拶を再び行なうこと、ビールを注がれたら両手で受けて飲み干すこと、正座を崩さぬこと、OBのグラスが空いたらすかさず注ぎ、その際はもちろん両手、さらにラベルが上に向くようにすること、などなどなどなど。

テラ青年、
ビールのラベルの向きに困惑する

新入生歓迎会が始まる。

「法政だいがくぅ〜、アクアダイビングクラブ〜、第32期〜、寺山英樹ともうしむぁぁぁぁ〜っす!!」

大声で挨拶を無事に終える。ちょっと気持ちいい。慣れって怖い。
しかし、ここから洗礼が待っていた。

僕は言われたとおりヘラヘラとOBたちの話を聞いていると、上級生に「こっちへこい」と廊下へ手招きされる。
怯える子羊のようなテラ青年に上級生は、室内に聞こえないように声をかみ殺して叱る。

「おめー、置いてあるビールのラベルが、自分の方を向いてただろーがぁ!」

ビールのラベルの向き! この理由で叱られた経験のある人はもはや希だろう。
腑に落ちないテラ青年は子供じみた言い訳をする。

「ビールのラベルを上にして注ぐ事は聞いたが、相手に向けて置くとは聞いていない」
「普通、常識でわかるだろーが! ラベルを上にして注げば、自然に相手に向けるってことぐらい想像つくだろ!」

腑に落ちないテラ青年は、理屈っぽい反論をする。

「ビールのラベルを上にして注いた後にそのままテーブルに置けば、ラベルは自然にこちらに向く」
「ひっくり返せばいいだろーが!」

これが大学生の会話でいいのだろうか(笑)。
ことはラベルだ。小さい。もったいないからって、残圧で潜ろうとするくらい小さい。
議論の内容が環境問題でも政治でもなく、ラベルの向き……。

チャラい髪型を怒られて
むしろドレッドとアフロになる

席に戻り、ラベルもきちんと直し、再びOBまわりを始めるテラ青年に、再び死角からハイキックが飛んでくる。

一人のOBが僕を見てにらみつけている。

え〜〜、なになになになに〜?
あのおじさん、なんなの~?

OBの一人は、突然キレて僕の髪の毛をわしづかみ。

「この髪型はなんだ! こんな長髪はアクアの魂じゃねぇ。チャラチャラしやがって〜〜〜」

ふぁ。アクアの魂の髪型ってどんなん……。
それに、こちとらチャラチャラしたいお年頃じゃないっすか。
部活とか浪人生活とか終わってさ、女の子のことしか考えているわけないじゃないのさ。

僕はやはり子供じみた言い訳をする。

「髪型とダイビングは関係ありません……」
「あんだと〜〜〜」

小さい。エアをケチって、レギュレーターでなくギリギリまでスノーケルをくわえているくらい小さい。

「す、すいません。言って聞かせておきますので」
さすがに先輩が助け舟を出してくれる。

でも、言われたって聞かないもんね〜だ。
実際、僕はその後ツイスト(ドレッドっぽいやつ)になり、同期の女子はアフロになり、最後の一人はスキンヘッドになったついでに眉毛も剃った。

やがて宴も終わりに近づきホッとする新入生。
すると、主将が座敷の中央にひざまずき、地面にコブシを立てる(キャンディーズがマイク置く姿勢)。

そして、主将を中心に現役&OBで半身になって円陣を組んだところで、主将が声の限り叫び始める。

「天下に轟くぅ〜〜〜、法政大学ぅ〜〜〜、校歌ぁ〜〜〜」

え? え? え?

その主将の言葉に呼応するように、上級生とOBはコブシを天に突き上げながら力の限りに叫ぶ、

「せ〜〜〜〜〜〜っい!」

そして、振り上げたコブシを大きく上げ下げして調子を取りながら、校歌大熱唱。

「わ〜か〜き〜、我らが〜〜、命の限り〜〜……」

まだ覚えていないのでもちろん口パク。
そして、校歌を歌い上げると、主将が再び声の限り叫ぶ。

「フレーーー、フレーーー、アックッア」

それに呼応するように、周りのみんなも叫ぶ。

「フレッフレッアクア、フレッフレッアクア〜〜」

自分たちを応援! もうヤケだ、俺も一緒にフレッフレッ……何度だって言ってやる。

俺ってば、ダイビングのクラブに入ったんだよね?

フォローしとくと、もちろん、当時の視点なので、今になって思えば、ほとんどが良いおじさんたちで、生徒もみんな純粋ないい子たち。
それに、今になって思えば、この時の経験には感謝している。

今になって思えていないテラ青年の思い出話は続く……。

(続く)

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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