アクアの練習

この記事は約4分で読めます。

学連総会、新入生歓迎会を終えても、晴れることのない思い。

俺、ダイビングのクラブに入ったんじゃなかったっけ?

その思いが少し晴れるときがくる。
いよいよ3点セットとウエットスーツを買いに行くときがきたのだ。

当時OBが働いていたMAUIという器材販売店
(今でもここで買い物しております)に連れていかれ、
フィンは”泳ぐ”ということに重きを置いた、クラブの伝統で必ずフルフット。
安価でビギナーでも扱いやすいということでGULLのミューを購入。
マスクとスノーケルもGULL。色はレモンイエロー。

ウエットスーツは確かオリジナルだったと思うが、
色は黒字にやはりレモンイエローのライン。
ザ・初心者の一丁あがり。今思うと、ちょっと恥ずかしい。

そして、最後にウエイトベルトとウエイトを購入。
今では珍しいが、当時は「そんなものか」と丸っきり疑問を持たなかった。

後に、腰にウエイトを6㌔巻いて電車で伊豆の海洋練習に参加した際に、
同じ電車派ダイバーの中にウエイトを持っている人が見当たらず、
「ウエイト持ってきているの俺らだけじゃね?」、
「ってか、笑われてね?」と新入生同士でささやきあったものだ。

最初に出会うショップが大事だとわかるエピソード。
孵ったばかりの雛は、目の前のモノを盲目的に信じるしかない。

でも、おかげで足腰が鍛えられた。ありがとう、アクア!
今日はとっても好意的。

話を戻して、器材を購入した僕はそりゃやっぱり嬉しい。
さすがに鶏の3歩はバカ過ぎるが、
丸一日でだいたいのことを忘れるちょいバカなテラ青年は、
それまでのいろいろおかしなことはとりあえず忘れてしまう。

そして、いよいよ練習が始まる。

クラブは週に2回のミーティングとフリッパー練習が必須で、
よっぽどのことがなければ休めない。

ミーティングには、
先の新入生歓迎会の反省文を提出しなくていけなかったので、
「ラベルがこっちを向いていてすいません」的なことと
「髪型はダイビングには関係ないと思います」的なレポートを提出し、
上級生からの「ビ〜ルをつぐタイミングがよ〜〜〜」という、
ありがたいお言葉は丁重に右から左へ受け流し、
プールで3点を使うことのみを楽しみに、
圧迫面接のようなミーティングをやり過ごす。

ミーティング後に、
代々アクアの部員がアルバイトとして働いているスポーツクラブの前に整列。

ちなみに1分でも遅れたら大問題。泣くほど叱られる。
社会人になり定時に来ない編集部にびっくりしたものだ。
すぐに僕もそうなったけど。
易きに流れたって? いやいや、協調性があると言ってほしい(笑)。

話を戻して、ピカピカの3点を抱え整列する僕ら新入生。
先輩たちからありがたいお言葉をいただき、
ありがたいので僕らはその都度、新宿に響き渡る声で、
「ありがと〜〜〜ございま、したっ!」と叫ぶ。

トレーナーという役職の先輩からメニューが発表され、
いよいよプール練習が始まる。
練習は、営業終了後にプールを借りて行なわれる。

アップキック、ダウンキック、サイドキックなど、
フィンキックの基礎をとことこん練習。
さらに、ダッシュやらインターバルやら長距離やら結構泳ぐ。
1年生の僕らにはかなり辛い。浪人生活でなまった僕の体は悲鳴を上げる。

「俺はダイビングのクラブに入ったんじゃなかったっけ?」という疑問が、
新たな疑問へと変わった瞬間だ。

ダイビングって、こんなに辛い思いしないとできないの?

当時、遅めのチェリーボーイをやっと脱出したばかりのテラ青年は、
ただチャラチャラ潜りたいだけなのだ。

長距離では女性の先輩にもスイスイ抜かれていく。
剣道はそこそこ強かっただけに、とっても惨めな気分。

しかし、抜かれた後に、
かわいい女性の先輩の後にピタッとついていくという楽しみを
早い段階で見つけられたことは不幸中の幸いだ。

よく考えてみてほしい。
これほどの絶景を誰にも怒られることなく見ていられるのは、
フリッパー練習でしかありえないことだ。
辛い練習。これくらいの楽しみがなければやっていけない。

1500㍍とか20分間という長距離フリッパーのとき、
僕は適当に泳ぎながらも、
かわいい女性の先輩に抜かれたときにだけ、
力を振り絞り追走するという独特の泳法を編み出した。
そんな僕の泳ぎを先輩は、

「寺山は、抜かれても歯をくいしばってついていくところが偉い」
と、みんなの前で褒めてくれた。はははは。

とまあ、おもしろおかしく書いてきたが、
このときやったことは今でも役に立っているし、
ダイバーは基本的には「泳げないとダメだよな〜」と思うに至る原点でもある。
上下関係や伝統などの問題をなしにすれば、
ダイバーとしての基礎体力が完璧に身に付く理想的な練習だった。

しかし、上下関係や伝統などの問題をなしにできない
多くの同期がやめてしまったのだが……。

※気が向いたら続く。

ダイビング 和尚
ありし日の同期12人。死んでないけど。
みんな、何やってるんだろ……。

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

writer
PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
  • facebook
  • twitter
FOLLOW