“誰も見たことがない”産卵を追えーーパラオで始まったミカヅキツバメウオ極秘リサーチ(第3回)

産卵はもう終わったのか──成果ゼロのまま過ぎていく3日間

強すぎる潮流、消えた産卵前集群、逃げ続ける魚たち。2日目、3日目と潜り続けても、決定的な行動は確認できなかった。見つかるのは深場を移動する警戒心の強い群れだけ。写真を検証しても、産卵前特有の個体差は見られない。

「ピークは、もう終わってしまったのかもしれない」

ガイドの秋野氏と水中写真家・峯水氏の判断はーー。

2日目

1本目

エントリー。透明度はそれほど悪くないが、昨日とは打って変わって潮の流れが強い。一旦、さっと海底に降りて、リーフの窪みに身を寄せながら強い流れをいなしつつ、沖を見つめてその場で待機。しばらくすると水深40mくらいのドロップオフの際を130匹ほどの群れが通り過ぎるのが見えた。予想しないダイバーの姿に驚いたのか、ドロップオフのオーバーハングの裏に入り込んだようで、すぐに姿が見えなくなった。そのまま裏側を通り過ぎたかと思った次の瞬間、体を翻しながら、もと来た方向へとあっという間に過ぎ去った。しばらくその場で待ってみたが、その後は二度と戻って来ず、ほどなく我々はリーフを離脱した。

深場にいたミカヅキツバメウオの集団。昨日とは違って渦にはなっていない。ダイバーに対してもとても敏感だ

深場にいたミカヅキツバメウオの集団。昨日とは違って渦にはなっていない。ダイバーに対してもとても敏感だ

その集団が産卵前集群の一部だったのか、産卵に集まる前か、終わった後なのかはその場では判断できなかった。いずれにしても、昨日のようなピラミッド状の群れの姿はなく、おそらくこの強い流れのときには、産卵前集群は見られないのだろうという結論に至った。

2本目

エントリー。状況変化を期待して産卵ポイントに入る。流れは先ほどと違って極めて緩やかで、中層を一定の位置でキープしながら滞在するのも特に問題にはならない。目下の深場を小ぶりのグレーリーフシャークがふらふらと泳いでいて、先ほどとは違い、むしろまったりした時間さえ漂っている。時折、アプローチできないくらいの深場を少数のミカヅキツバメウオが泳ぎさる姿を目にしたが、その時間に特別な出来事は無く、その日の最終ダイブを終えた。

1日を終えて考察

今日は、昨日のような産卵前集群がいなかったが、その原因はなんだろうか?

流れ説:ミカヅキツバメウオはあの体型だから、流れが強い時間帯は、流れの抵抗に対して泳ぎにくくなるため産卵行動をしない可能性。流れが弱くなってから産卵するんじゃないか。

見つけられなかった?:風が強く透明度が悪かったので、もしかしたら探せなかったかもしれない。もしそうであれば、産卵前にエントリーして、群れを見つけてから追い続ける必要がある。

夜、昨日通り過ぎた群れの写真を秋野さんに見せて検証してみたところ、いずれも産卵前とは言えないようなお腹の膨らみ具合であった。もし産卵に関係するメスがこの中にいるとするならば、もっとお腹が膨れていてもおかしくないが、写真の群れの中にはそのような個体が見当たらない。つまり、産卵前集群とは関係の無い群れ?もしくはオス集団?もしかしたら産卵のタイミングのピークはすでに過ぎてしまったのかもしれない。

3日目

1本目

エントリー。潮の流れが速い。深場のミカヅキツバメウオの群れもあっという間に逃げ去った。状況は昨日とほぼ変わらず、2ダイブをここに費やしたが、産卵前の集群は確認できず、目立った変化もないまま時間だけが過ぎていった。やはり、産卵のピークはすでに終わってしまった可能性が高い。今回、与えられた撮影期間は4日間。この時点で、決定的なシーンは何ひとつ押さえられていない。

ドロップオフの際に見え隠れしながら逃げていくミカヅキツバメウオの集団

連日、同じ海域で集群を探し続ける中で、他にも何も撮れていない状況に、さすがに焦りも出てきていた。こうなれば、別の選択肢もある。たとえばパラオを代表するポイント、ブルーコーナーへ向かい、確実に「絵になる」群れの写真を押さえる。誌面としての完成度を考えれば、それもひとつの判断だ。だが、それでいいのか。今回の取材は、最初のミーティングの時点で方向性が決まっていた。結果が出ても出なくても、そのすべてを記録する。成功も失敗も含めて、ありのままを伝える。その前提で臨んでいる以上、途中で対象を変えるわけにはいかない。最終日まで、このテーマに向き合い続ける。そしてその結果がどうであれ、すべてを記録として残す。そう改めて腹を決めた。

いよいよ最終日。秋野氏と峯水氏は最後の賭けに出た——

第4回:最終日のレポートは8/7公開!

DayDream Palau 龍馬クルーズ

DayDreamパラオのスタッフたち

龍馬Iの外観(DayDream Palau提供)

龍馬Iのキャビンの一例。バス・トイレ付のデラックスルーム

日本人スタッフ常駐で安心して楽しめるパラオ屈指のダイビングショップ。自社で積極的にダイビングポイント開拓も行うパラオダイビングのパイオニア。もちろん、透明度抜群のブルーコーナーやジャーマンチャネルなど、世界中のダイバーが憧れる定番ポイントにもご案内。「龍馬クルーズ」では、快適なクルーズ船で移動しながらパラオの海を満喫することができる。食事や宿泊も船内完備で、仲間と語らいながら贅沢なダイビングライフを楽しめる。初めてのパラオの方にもリピーターにも、安心・快適・充実の海旅を提供してくれる。

DayDream Palau 公式サイト

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PROFILE

1970年大阪府枚方市生まれ。西伊豆大瀬崎でダイビングガイドとして活躍した後、1997年にフリーの写真家として独立し、峯水写真事務所を設立。公益社団法人日本写真家協会会員。2001年から2012年まで、ダイビング誌にて海外ロケを中心とした 撮影に従事。プライベートでは浮遊生物を中心とした海洋生物の撮影に長年取り組んできた。数多くの児童向け書籍やTV番組などにも写真及び映像を提供する他、著書に「世界で一番美しいイカとタコの図鑑」エクスナレッジ、「日本クラゲ大図鑑」平凡社, 「ときめくクラゲ図鑑」山と渓谷社「Jewels in the night sea - 神秘のプランクトン」ナショナル ジオグラフィック社 など他多数。2015年にはBlack Water Dive®を商標登録し、さまざまな浮遊生物をフィールドで観察できるイベントBlack Water Dive®を国内外で展開。2016年 第5回 日経ナショナルジオグラフィック写真賞 グランプリ受賞。2017年6月、アメリカニューヨーク市のFoto Care Galleryにて自身初の個展「The Secret World of Plankton」を開催。BBC ,NBC, ABC, National Geographic などにこの作品が紹介された。2019年、日本写真協会賞の新人賞を受賞。TBSテレビ「クレイジージャーニー」「情熱大陸」などテレビにも多数出演。

https://www.ryo-minemizu.com/

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