辞めちゃってみる?

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僕よりもかなり若いイントラの方に、
「ショップを辞めるかどうか悩んでいる」という相談を受けた。
よくある相談だが、ダイビング自体の相談なら喜んで答えるが、
人生相談のような類の相談は、
こっちが相談に乗ってもらいたいような人生を送っている身としては、
なかなか答えづらい。
しかし、彼の話を聞いて確実におかしいと思うことがあったので、
“ぜひ日記で返答を”というリクエストを受けてお答えする。
他人の人生ということで適当な真剣さでお答えするので、
適当な真剣さで聞いてください。


相談者の状況を簡単にぼやかして説明すれば、
彼は信じられないような安い給料ときつい労働条件で働いているが、
“ゲストとの交流”や“海の仕事”というやりがいで乗り越えてきたという。
しかし、ショップ内でどうしても許せないことがあり、
しばらくはフリーのイントラをしつつ、
他のお店への転職や他業種への就職を考えているという。
ただ、先述したようなゲストとの関係ややりがいのことを考えて
もう少し我慢してみようとも思っているとのこと。
ここまでは失礼ながらよくある話で、おかしいと思うのはここからだ。
このおかしな話も彼を引き止める要因になっている。
そのおかしなこととは、彼の属するショップは、なんと
「もし辞めたら、フリーはおろか他店で働くことは許さない」と
言っているのだ。
とりあえず、「なんと」などと驚いたフリをしてみたが、
そういうショップは他にも大小含めていくつか知っている。
しかも、業界はその流れを後押しする流れになっている気がする。
いくつかの指導団体の動きを見ると、
ショップに登録していないイントラは、
イントラとして活動できない流れ、
そして他店へ転職する意欲を奪う流れになっていると思われる。
その理由や詳細を書くには、
今は少し自分のエネルギーが足りないのでいずれとしておくが、
この仕組みは業界や消費者にとっていい面も多分にある。
しかし、イントラ個人としての活動の範囲は狭められる結果となる。
これらのことを考えていると、
たしか転職の本かなんかだった気がするが、
そこに書いてあった“奉公構い(ほうこうかまい)”という言葉を思い出す。
これは大名が家臣を囲い込むためのシステムで、
辞めた家臣を“奉公構い”と宣言すれば、
他家はその人を採用しないという、
人を組織に縛り付け、そして搾り取るための仕組みだ。
厳密にはその意味合いは違うのだが、
つい奉公構いだの丁稚奉公だの、
封建時代の言葉を連想してしまうことがこの業界にはよくある。
他の業界はよく知らないけど。
話を戻して相談をしてきたイントラさん。
適当に真剣にお答えするなら「辞めちゃってみる?」
ゲストとの交流や海に関われることのやりがいってのが、
本当に生きるモチベーションで幸せなら別に続ければいいとも思う。
しかし、このやりがいが現実に目をつむるだけの逃げ道になっていたら、
結果はただの思考停止。
まず考えるべきは、
「フリーになったり他店に行くのは許さない」と
口に出してしまう頭の悪いお店が、
では「自分に何をしてくれるのか?」ということだ。
もっと具体的にいえば、
「金と休みをどれだけくれるのか?」ということになる。
よく日記にする法政アクアの世界なら、
我慢こそ美徳だし、未熟者は権利を主張してはいけないので、
下級生は無条件に我慢すればいいし、
やりがいがあるだけありがたがればいい。結構、素敵な青春だ。
しかし、青春はある一時期だけだから青春として成立する。
既得権を持つ業界の上の人たちや
時には他業種で活躍するファンダイバーの方と話をしていると、
何だか「イントラはバカ」だとなめられている気がするのは
僕の気のせいだろうか?
でも、“目的もなし”に給料5万ほどで、
衣食住もやりがいもあるからと寝る間も惜しんで
喜んで働いちゃったらバカだと思われても仕方ない気もしてしまう。
それと「他で働くのは許さない」という言葉には、
当たり前だが何の効力もない。少なくとも今は。
親ならまだしも頭のおかしい人から「許さない」と言われて、
耳を貸すほうがもっとおかしい。
僕には悩む理由がわからない。本当はわかるけど。
ってことで、その他のここに書けないような
いくつかの具体的な事柄から察する雰囲気も含め、
「辞めちゃってみる?」という結論に至るわけだが、
あくまで雰囲気から考えた僕の適当に真剣な答えなので、
なるべく適当に聞いてください。
ちなみに、僕だって、
30歳を過ぎて飯を食えているイントラはかなり少ないという
現実と向き合い、その中で生きていくにはどうしよっかな〜と
日々悩んでいるので、むしろ誰か相談に乗ってください(笑)
※10日間も返答せずにすいません。どうしたものか悩んでしまい……。

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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