アマミホシゾラフグ産卵の瞬間を激写、1匹に対して5匹以上のメス現る

アマミホシゾラフグ(以下、フグ)のシーズンも終盤に差し掛かっていた2021年7月19日。奄美大島南部にある清水(せいすい)にて、フグの産卵の瞬間を捉えたとの情報が入ったので、フィジーでダイビングインストラクターを勤め、国内でも現役として活躍中の渡部紗季子さん(以下、渡部さん)にその時の情報を詳しく伺った。

時は遡り、2021年7月18日の11時頃。渡部さんは、現地インストラクターとフグのオスが産卵床を作っている所を鑑賞・撮影するため、その日2本目のダイビングに向かっていた。

エントリー後、ブイ横のすぐ側にすでに完成していたサークルがあり、その場にオスの姿が見られなかった。周辺を探すとインストラクターが近くにいたオスを発見。そちらに向かい近づくと、オスの側に卵を抱えてお腹がパンパンに膨らんだメスも同時に確認できたという。

その時のメスは、「産卵床はどんなもんかしら?」とサークルを確認しに来ていたような気もしたと渡部さんは話す。ところが、渡部さんたちに驚いてしまったのかすぐにメスは離れてしまい、メスが離れてしまったあとでもオスはどこかで見ているかもしれないメスにアピールすべく、ヒレで溝を整えたり、産卵巣には不必要な物を運び出したりと細かな手入れをしてたという。

結局、その日はオスがサークルを整えるだけで、メスは現れなかったというのだが、一生懸命なオスのフグに「お嫁さん貰えるように頑張れよー!」という気持ちで写真撮影し渡部さんはその場を離れた。

ボートに上がった後、渡部さんたちは「近くにお腹に卵抱えたようなメスがいたよね!あの感じなら明日にも産卵するかもね!」と推測し、次の日も潜ることを決断。とはいえ、時間がはっきりとわかっておらず、運にかけたいという思いが強かったためガイドをお願いしたという。

そして次の日(2021年7月19日)。時刻は8時4分、渡部さん一向は再び清水の海にエントリー。しかし、近くに行ってみると、すでにオスが卵保護をしている状態で「あー、遅かったかな」と少し残念な気持ちになったというが、それでも一生懸命にヒレを動かし、卵と新鮮な海水をかき混ぜ世話するオスに感動し、夢中でカメラを構えていたという渡部さん。

すると、ファインダー内にもう1匹のフグの姿が写り、それがメスだと分かった時にはすでに産卵し始めたという。その時は何が何だわからず、上手く撮れなかったとのことだが、産卵後にいなくなったはずのメスが、更にまたやってきて、何匹ものメスが順番で産卵しにきてたようだったとのこと。

この写真は何匹かのメスが順番にどこからともなくサークルに現れ、その中で正面向きで産卵した時の様子だ。その時間は、長くても3秒くらいだったとのこと。渡部さんは「そのときはメスがオスを噛んでいたように思えたのですが、後日、写真を見て個体識別したら、オスがメスの下顎を噛んでいました」と興奮気味!

「この時、トータルで5匹〜6匹のメスがやってきてたような気がします。ファインダーで見ていた為、詳しくはわからないのですが、あとからガイドさんに聞いたら『そのくらい来てたよ』と。とにかく産卵シーンが見られたことに終始感動しまくりで、その瞬間のたった一枚だけでいいから、どうにか撮りたい!という気持ちでした。

エキジット後、上手く撮れてるかどうか確認した時、あの写真が撮れていたことが嬉しくてボート上で余韻に浸っていました。アマミホシゾラフグのオスは誰に教わるわけでもなく、小さな体でとても美しいサークルを作り出します。本当に神秘的です」と終始感動を堪えきれない様子だった。

筆者者自身もアマミホシゾラフグのミステリーサークルを追い、数日をかけて狙った産卵の瞬間であったが命が繋がれるシーンを見届けることはできなかった。どれだけ、目星をつけていたとしても奇跡的な瞬間にそう簡単に遭遇することはできないと知っているからこそ、今回の写真を見て改めて感動がこみ上げる。来年もまた、奄美の海がフグたちにとって産卵に適した場所として選ばれるよう今後も守っていきたい。

情報提供先:渡部紗季子さん

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PROFILE
静岡県西伊豆町出身。

ドルフィントレーナー専門学校を卒業後、ダイビングインストラクターや操舵手といった海に関わる職歴を持つ。

現在は、ライターとして「地球に暮らす全ての生き物がHAPPYな未来を」と願い、記事を書く。
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