カバーンダイバーコースとは? ケーブダイビングの初級コースに挑戦
透明な水中に差し込む美しい光と揺らめく地形。その間を潜るダイバーたち。メキシコのセノーテを代表する洞窟ポイントは、多くのダイバーの憧れではないだろうか。
今回は、憧れで終わらず実際にチャレンジしたい、本格的に洞窟ダイビングをしてみたいと思っている方に向け、入口となる「カバーンダイバーコース」についてご紹介。
レポートするのは、徳之島の水中鍾乳洞「ウンブキ」を潜るべく、フルケーブダイバー、そして水中探検家を目指すスイカ。インストラクターであるウンブキの開拓者で水中探検家・カメラマンの広部俊明氏から、ジャーダイビングクラブオーナーの戸崎邦治氏と一緒に受講したカバーンダイバーコースの様子を徳之島からお届け。
カバーンダイバーコースとは?
カバーンとは洞窟のこと。「ケーブダイビング」と言えば、聞いたことのあるダイバーも多いだろう。ケーブダイビングは洞窟など自然のオーバーヘッド環境、つまり天井がある環境で潜るダイビングを指すが、カバーンダイビングはその一つだ。
カバーンダイビングは、日光が入る時間帯で、入口の景観を見ることができるような自然のオーバーヘッド環境を探索するダイビングのことをいう。この環境下で安全に潜るための知識とスキルを身に着けられるのが「カバーンダイバーコース」だ。
光の届かない範囲まで行くにはイントロケーブダイバーコース、フルケーブダイバーコースとステップアップする必要がある。つまりカバーンダイバーコースは洞窟ダイビングにチャレンジする人の入口となるコースなのだ。
カバーンダイバーが潜れる範囲
入口と光が見えれば洞窟をどこまでも潜って行って良いのかというとそうではない。カバーンダイバーコース修了者が潜れるようになるのは以下の範囲だ。
※ガイドライン:水中で迷子にならないように洞窟内ではラインを引きながら進む。ダイビングポイントによってはラインが常設されていることもあり、これらをガイドラインと呼ぶ。
カバーンダイバーコースの流れ
カバーンダイバーコースは、大まかには学科講習→陸上でのスキル講習→限定水域でのスキル講習→海洋でのスキル講習といった流れで進む。スムーズにいけば全部で4日程度で修了できる。
ここからは実際に私が受講した感想も踏まえながら、流れをご紹介していこう。
テキストかeラーニングで自主学習
ダイビングの講習では当然ながら自主学習が必要となってくる。私はテキストを使って学習していったのだが、なかなかのボリューム。洞窟の特性やそれに合わせた器材やスキルのこと…初めて知る言葉も多く、きちんと理解するには何度か読み込む必要があると感じた。
また、各章の終わりには理解度チェックテストがあり、これはすべて正解する必要がある。
座学でインストラクターから学ぶ
自主学習だけでは理解しづらい点や補足の説明などをテキストに沿って習う。
海に入る前の陸上スキル講習をガッツリ
一番印象的だったのが陸上のスキル講習。オープンウォーターコースで器材の取り扱いや緊急時の対処を陸上でシミュレーションするように、カバーンダイバーコースでもシミュレーションをする。ただ、通常のダイビングとの大きな違いは、洞窟では迷わないようにラインを引きながら潜るということ。視界不良になった時やバディを見失った時でも、このラインを掴んで進めば出口に辿り着けるというわけだ。そのため、陸上でもラインの引き方や、視界不良時やバディ、ラインを見失ったときの対処をがっつり行うのだ。
水中でも迷わずできるよう、陸上では丁寧に一つひとつの手順を行っていった。それでも間違えることもあるし、今後自分で洞窟を潜るとしたら何度も復習する必要がありそうだ。
限定水域で実践!
ライン引きからマスク交換、バディ・ライン探しなど
陸でのシミュレーションを終えたら次は限定水域で実践!講習を行ったのは「湾屋」というビーチポイント。湾内は砂地が広がっているが、少し泳ぐとダイナミックな地形が楽しめるというまさにカバーンダイバーコースにうってつけの場所。
湾内で器材の位置や、中性浮力を確認し、陸上でシミュレーションしたことを中心に行っていく。
そして緊急時の対応も水中で実践。
海洋実習はカバーンエリアで実践
海洋実習は「湾屋」の湾内から出てカバーンエリアへ。湾内で練習したようにまずはライン引き。陸上と違ってラインを留める場所を自分で探し、判断して引いていかないといけないため、思ったよりも迷ったり手間取ったりすることが多かった。
また、フィンキックを気にしたりレギュレータを交換したりとやることが多く、なかなか前半は余裕がなかった。しかし後半では少し慣れてきて、地形と砂地、そして光が織りなす美しい景観を感じることができた。
そして総仕上げとしてウンブキへ。目標としていた場所だが、講習で来てしまっていいのか…と戸惑いつつも嬉しい気持ちの方が大きい。広部氏によるとウンブキのカバーンエリアは実は講習向きらしい。それほど深くなく、広いホールで複雑な地形ではないためだ。とはいえ、貴重な土器なども見つかっている調査中の場所ではあるので、今回は特別ということらしい。感謝。
ウンブキには常設ラインがあるため、ライン引きは水面近くから常設ラインまで。そこからはポジショニングを意識して潜ることを中心に行った。ポジショニングとは、チームで潜る際に使用する手法で、それぞれのダイバーがライトを進行方向に向け、先頭のダイバーが全員分の光が並んでいることが確認できたら進むというものだ。こうすることで、振り返らなくても全員の所在を確認でき、何かあった時はライトを動かして合図ができるので効率が良いのだ。
とはいえ慣れないうちはバディと離れすぎてしまったり、ライトを並べることを忘れたりしてしまい、講習中は何度も広部氏から注意を受けた。カバーンエリアとはいえオーバーヘッド環境。安全に進むためにはきちんとスキルを身につけることが重要だと改めて感じる講習だった。
【動画】講習の様子
講習の様子は広部氏のYouTubeでも公開中。詳しく知りたい方は是非ご覧あれ。後半ではウンブキの様子も。
カバーンダイバーコースはケーブダイビングの入口!
洞窟を潜る楽しさ、適正がわかる
約4日間にわたる講習を終え、無事にカバーンダイバーコースを修了!戸崎氏とともに無事に認定ということになった。
とはいえまだまだスキルを磨いて経験を積まないと、自信をもってケーブダイバーと自称することはできなさそうだ。実際、ウンブキを潜った時に、「あ、怖いな」と思う瞬間が何度かあった。カバーンエリアとは言え薄暗く、閉鎖環境での圧迫感はこれまでにないものだった。自分がケーブダイビングに向いているかどうかわからない方は、まずはカバーンダイバーコースを受けるというのもアリかもしれない。スキルや緊急時の対処は確実に身につくので、いつものダイビングにも生かせるだろう。私自身、陸上や限定水域できちんと学んでいたからすぐに落ち着くことができ、無事にダイビングを終えることができたと思う。だが、何かあった時のことを考えると、まだまだ練習したいのが本音だ。
しかし、その先にある景色に出合う瞬間には、何物にも代えがたい喜びや達成感がある。写真や動画だけでは到底わからない水中洞窟の世界を五感で感じ、さらにその先に何があるのかというワクワク感を味わえるのはケーブダイバーだけなのだ。
ウンブキのカバーンエリアはまだまだ入口。広部氏自身も開拓中で、入口から総延長で1km地点までが現在行ける範囲。カバーンエリアの奥には砂紋が広がる回廊のような通路や、大きな鍾乳石が立ち並ぶ広いホールなどまだまだ見どころがあるそう。地形好きや洞窟が気になる方は、ぜひカバーンダイバーコースでケーブダイビングデビューをしてみては。私もその先の景色を見るべく、次のランクを目指しステップアップしていきます!
カバーンダイバーコースを行っている
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取材協力:TDI、広部俊明、マリンドリーム〈夢塾〉、マリンサービス海夢居、ジャーダイビングクラブ水戸
\広部氏のYouTubeでも講習の様子は配信中!/
▶︎YouTube 水中探検家広部俊明のWater World
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