サイドマウントでダイビング 違い・メリット・講習内容をレポート
徳之島の水中鍾乳洞「ウンブキ」を取材するため、テクニカルダイビングの領域であるフルケーブダイバー、そして水中探検家を目指すこととなったスイカ。必要なケーブダイビングなどの講習をウンブキの開拓者でもある水中探検家・カメラマンの広部俊明氏から徳之島で受講することに。初めに受講するのはサイドマウントスペシャルティ。
ケーブダイビングコース
- ・カバーンダイバー
- ・イントロケーブダイバー
- ・フルケーブダイバー
スペシャルティ
本記事ではサイドマウントのダイビングに興味がある方に向け、背中にタンクを背負うのとどんな違いがあるのかや、講習の中で感じたことをお伝えしていきます!
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徳之島で受講してきます!
なぜサイドマウント講習を受けるのか?
広部氏によると、洞窟を潜るために必須のサイドマウント。フルケーブのCカード取得には必須というわけではないが、結局狭いところを通るには、タンクの取り回しがしやすいサイドマウントが必要になってくるのだとか。でも、そもそもサイドマウントとはなんなのだろうか。
「サイドマウント」は体の側面に1本、もしくはそれ以上のタンクをマウントする(取り付ける)ダイビングスタイルのこと。そして、それぞれのタンクにファーストステージ、セカンドステージ、残圧計をセットして潜るのが特徴。ちなみに、背中にタンクを背負うダイビングスタイルは「バックマウント」というらしい。
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タンクを体の側面にマウントするのがサイドマウント
もともとケーブダイバーが、バックマウントでは通れないような洞窟内の狭い通路を通るために背中からタンクを外したのが始まりで、そこからさまざまなケーブダイバーたちが試行錯誤を重ねて今のスタイルになったらしい。未知の洞窟の先に、先人たちも行きたかったんですね。
狭い通路が通れるというメリットのほかに、TDIのサイドマウントのテキストには過不足のないバックアップ性や水の抵抗の小ささなども挙げられている。
抵抗が少なく活動しやすいサイドマウントが洞窟の中という狭い空間を潜りやすくするのはもちろん、すぐに水から上がれない環境でのバックアップは必須。2本以上のタンクを装着できるという点もケーブダイビングに適しているのだ。
器材に大きな違い
セッティングではなくコンフィグレーション
サイドマウント講習も通常のダイビングのCカード講習と同じように、まずは座学からスタートする。事前にテキスト、もしくはeラーニングで学習をするのだが、器材の名前から始まり、何やら知らない言葉が出てくる、出てくる……。
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テキストで学習中。言葉がわからない…
エアセル?リストリクション?プライマリー?
「コンフィグレーション」もその一つ。日本語に訳すと「配置」、「構成」、「形状」といった意味がある。読み進めていくと器材のセッティングのことではあるのだが、より自分の体に合わせて器材を調整していくことのよう。イントロテックマニュアルではそれぞれの用語解説がされているのだが、日本語に変換すると意味が少し変わってしまったり、簡単に解釈されたりすることもあるため、そのままの用語で記載されているようだ。
なぜコンフィグレーションが必要なのか。
テクニカルダイビングの目的は、通常のダイビングの範囲(40m以浅、減圧停止不要潜水、オープンウォーター環境)を超えたダイビングを楽しむこと。そのためにはより安全に、効率よく潜ることを突き詰めて考えていく必要がある。それがこのコンフィグレーションの必要性につながるのではないか。
特に洞窟の中ではレギュレーターのホースが長すぎてぶらぶらしたり、タンクが体の側面に平行になっていなかったりすると狭い隙間で絡まったり鍾乳石を傷つけたりしてしまうことがある。こういったことを起こさないためにも自分の体に合わせて器材の設定をする必要があり、コンフィグレーションの重要性を感じさせる。
実際にサイドマウントに必要な器材を見てみると、自分の体に合わせて調整していくことが前提となった作りとなっている。
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サイドマウントに必要な器材
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ハーネスは自分の体にフィットするように長さを調整する
講習のはじめにコンフィグレーションを行ったのだが、トータルで2~3時間くらいはかかったと思う。なんせ見たこともない器材。すでに組み立てられている広部氏の器材をお手本にしながら、自分の体に合わせて調整、組立を行った。
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右が広部氏の器材。左はスイカに合わせて組み立て途中の器材
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手探りで組み立てていく
「自分でやらないと覚えないからね!」と、広部氏がいう通り、時間はかかるが自分で一から組み立てることで構造がなんとなく理解できた。気がする。
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時間はかかるけどこのプロセスはなかなか楽しい
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装着するとぴったり。コンパクト
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エントリー口でタンクを取り付けるので背中に背負ったまま移動する必要がない
そしてコンフィグレーションは一度組み立てて終わりではない。実際にタンクをつけて潜ってみると、私の場合はタンクが下がってしまっていた。これはタンクの頭を固定するバンジーコードが長すぎたことと、タンクの下部を固定する場所が下すぎたことが原因だ。
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体の側面ではなくほぼ前面にマウントされている。バルブの位置も前に来てしまい扱いづらい
次のダイビングの前にコードの長さや位置を調整して、自分の体に合わせる。この調整を繰り返し、自分に合ったコンフィグレーションを探していくのだ。どんな趣味でもハマっていくと自分の使うものにこだわり出すと思うが、そんな楽しみもサイドマウントでは感じられた。
水平姿勢が取りやすく、進みやすいしかっこいい
バックマウントと大きく違ったのは、2本のタンクを取り扱うというところ。1本でも体の側面にマウントしていればサイドマウントとは言えるのだが、基本的に2本のタンクで講習を行う。
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エントリー後すぐ、胸のインフレーターホースのボタンを押すのに手間取り沈んだ様子。最初からエアを入れておけよって話ですね
最初は器材の取り扱いに慣れておらず沈んでいってしまったものの、中性浮力がとれると水平姿勢が楽なので、自然と綺麗なトリム(姿勢)になっていく。バックマウントでもわかると思うが、水平姿勢で綺麗なストリームラインができると水の抵抗が少なく、進みやすいんですよね。それがサイドマウントだとより取りやすい。
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講習が終わる頃の姿。だいぶ安定したトリムになってきた
そして、シンプルに見た目がかっこいい。と思いませんか?(笑)。他のスポーツでもうまい人のフォームほど美しくかっこよく見える。そんな感じで、水平姿勢はよりプロっぽさが出てかっこいいと感じるのかもしれない。
左右順番に吸う!? レギュレーター交換など器材の取り扱いの違い
エキジット寸前に、アルミタンクの残圧が減って浮いてきてしまったという経験はないだろうか。
サイドマウントでは片方のタンクからある程度吸ったら反対へ交換して、またある程度吸ったら交換して…。となるべく左右のタンク残圧が均等になるようにレギュレーターを取り替えながら潜る。
エアが減った分、タンクは軽くなる。2本のバランスを取りながら潜るには、順番に吸って重さを均一にする必要があるのだ。
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最初に練習したのがこのスキル。両手で取り替えるパターンや片手で取り替えるパターンを行う。
そしてバディとのエアシェアやフリーフローをした時の対処、タンクのつけ外しのスキルなどを学んでいく。
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水に入る前に陸上で手順を学ぶ
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エアシェア。ロングホースのレギュレーターを渡すのが基本 ※感染症対策のため直接口にはくわえずに模擬で実施
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タンクの取り外し。タンクの取り回しがしやすく、狭い通路を通ったりエキジットの時に先にタンクをあげたりできるのもサイドマウントのメリット
講習の終盤、左側のタンクに取り付けていた残圧計を見るために強くひねりすぎたのか、パンッと外れてしまった。バックマウントで1本しかタンクを持っていなければパニックもので、バディに助けを求めなければならないが、2本あるという安心感からか、冷静に対処できた。自分がくわえているレギュレーターがどちらのタンクのものか確認し、残圧計が吹っ飛んだ方のバルブを閉じ、バディとコンタクトを取りエキジットの判断。自分が落ち着きすぎていて、驚いたほどだった。
サイドマウント講習全体の流れ
さて、ここまでサイドマウント講習を受けてみた感想やバックマウントとの違いをお伝えしてきた。洞窟を潜るために必要なスキルだから講習を受けたが、思った以上に楽しめたので、改めて私が良さを感じた部分をお伝えすると、下記のとおりだ。
- ・器材をコンフィグレーションしていく面白さ
- ・水平姿勢が取りやすく泳ぎやすい
- ・空気のバックアップがあるという安心感
- ・見た目がかっこいい
もっと具体的にどんな内容を学んでいるか知りたい方は、ぜひ動画もご覧いただきたい。
広部氏から講習を受けるスイカの様子を見ていただければ、なんとなく様子がつかめるのではないだろうか。私が受講したのはテクニカルダイビングを前提としたサイドマウントだが、一般的なダイビングにおけるスペシャルティとしてのコースもあるそう。実際にやってみたいと興味を持ってくれた方は、受けてみて、そして、私と一緒にサイドマウントで潜りましょう。
サイドマウント講習を行っている日系 TDIショップ
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https://www.sditdierdi.jp/tdi-blog/entry-383.html
取材協力:TDI、広部俊明、マリンサービス海夢居
\広部氏のYouTubeでも講習の様子は配信中!/
▶︎YouTube 水中探検家広部俊明のWater World
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