ダイビングなのに体育会系?!農大ダイビングクラブにせまる(第1回)

ダイビングサークルなのにガチ体育会系の部活なみにハード!? 東京農大ダイビングクラブの活動実体に迫る!

2022年夏合宿(撮影地:八丈島・底土)
初めまして!私は、今年度で結成48年を迎える歴史あるダイビングサークル「東京農業大学ダイビングクラブ(以下、農大ダイビングクラブ)」の幹事を務めている大西美沙希(以下、みさっちゃん)と申します。
私は、両親の影響でダイビングを始めたのは8歳のときでした。そんな私は農大ダイビングクラブで初めて伊豆の海を潜り、さらにダイビングに魅了され今では年間100本近く潜るほどに!その中で、ご縁がありオーシャナ編集部でのアルバイトを経験し、それをきっかけに今回、記事を書かせていただく機会を頂きました!もっとたくさんの人に日本の海やダイビングの魅力を知ってほしい!という思いで記事を書かせていただきます。

今回は、学生サークルの中でも数少ないセルフダイビング(バディダイビング)を中心に活動している農大ダイビングクラブの、練習内容や年間の活動内容を紹介していきます。これからセルフダイビングを始めようかなという方もぜひ参考にしてほしいです!

※TUA(Tokyo university of agriculture)2017年のフォトコンで入賞したタオル

※TUA(Tokyo university of agriculture)2017年のフォトコンで入賞したタオル

この農大ダイビングクラブには他のダイビングサークルと決定的に異なる点がありまして、それは少人数で毎週まあまあハードなダイビングの練習を行うということです。その練習や合宿には絶対参加なので部活と言っても過言ではありません。さらに年に2回八丈島三宅島や小笠原諸島などに2週間の合宿で滞在します。
毎週のダイビング練習、年2回2週間の合宿・・・ゼッタイ参加・・・。

そうです、本気(マジ)でダイビングやってます!

クリスマスダイブ(撮影地:IOP)

クリスマスダイブ(撮影地:IOP)

農大ダイビングクラブの活動内容

まずは年間の活動スケジュール(※)をご紹介。

(※)世田谷キャンパス

年間スケジュール

部員数:合計:13名(1年生:5名、2年生:2名、3年生:4名、4年生:2名)
活動内容: 4月~12月末に毎週日曜日真鶴琴々浜での練習
3月春合宿(2週間小笠原or西表島)
6月ライセンス合宿
7月大瀬崎での夏合宿前強化練習
8月夏合宿(2週間八丈島・三宅島)
10月大瀬崎合宿
11月引退雲見合宿
12月クリスマスダイブ
年間50本を超える充実した活動内容だ。大学の昼休みには週に一回ミーティングを行い、練習内容の確認や海の知識の勉強会をする。

さらに春合宿とライセンス合宿以外はすべてセルフダイビング(バディダイビング)。セルフダイビングのメリットは、スキルの向上や生物を見つける目が養われること、自由にダイビングできること、ダイビング費がガイド付きダイビングより安く済むことです。しかしながらインストラクターが付いていないため安全面が劣るというデメリットもあります。そのためより安全にセルフダイビングを楽しむためには、自己管理やスキル向上のため毎週の練習が不可欠なのです。

関連記事:How to バディダイビング(セルフダイビング)

夏合宿の八丈島で出会ったハチジョウタツ

夏合宿の八丈島で出会ったハチジョウタツ

クリスマスダイブ

クリスマスダイブ

セルフダイビングの練習って何してるの?

では、具体的にどのような練習をするのか、陸上と水中に分けて見てみましょう。

~陸上編~

①器材の使い方
器材をセットする際は、Oリングにひび割れがないか「OリングOKです!」、タンクがBCDから抜けないかBCDを持ち上げて振り「タンクOKです!」、残圧確認で「残圧180です!」のように声を出して確認していく。

練習風景(撮影地:琴ヶ浜)

練習風景(撮影地:琴ヶ浜)

②ブリーフィングの練習
本日のポイント、海況、練習内容、ダイブ計画(潜水時間最大水深、進路)、陣形、持ち物、合図、緊急時の対応をブリーフィングを何も見ずに言えるように練習する。

③バディ同士でBWRAFをして潜水前最終チェック
BCD:きちんと装着できているか
Weight:ウエイトをねじれずしっかり付けられているか、
Release:リリース類がまとまっているか、絡まっていないか、インフレーターホースが付いているか
Air:バルブは開いているか
Final:持ち物など最終確認をバディ同士で確認し合う。

④ログ付け・反省
ダイビング後に先輩から後輩に水中での動きやブリーフィングの出来をフィードバックする。
セルフダイビングなので、見た生物の名前を自分たちで調べる。

~水中編~

①スキンダイビングの練習
練習の最初に耳が抜けるか、海況は良いか、ジャックナイフ(素潜り)をして確認する。ウエイトやフィンを落として拾いに行く練習などもする。必ずバディ同士でOKを取りながら片方ずつ潜る。また、水面で足の力だけで浮く手上げや遊泳や水面ダッシュを行い体力をつける。これらの練習は毎年夏、御蔵島で行うドルフィンスイムを安全に楽しむためでもある。

ジャックナイフする部員(撮影地:琴ヶ浜)

ジャックナイフする部員(撮影地:琴ヶ浜)

2022年夏ドルフィンスイム(撮影地:御蔵島)

2022年夏ドルフィンスイム(撮影地:御蔵島)

②スキューバダイビング小物練習
マスクをすべて外して目を開けてOKを取る練習。レギュレーターを口からはずしレギュレーターを再び吸うレギュレーターリカバリーの練習。レギュレーターから相手のオクトパスに切り替える練習。これらは水中でマスクやレギュレーターが外れても冷静に対処するためだ。

③スキューバダイビング中性浮力の練習
フィンピポッド(肺の力で上体を上下させる)、ホバリング(体を停止させ浮いてとどまる)、水中移動(水底ぎりぎりを※あおり足で進む)、中層移動の練習。

※あおり足は膝を曲げて足首だけを動かす

あおり足で移動すると砂を巻き上げない、体力の消費が少ない(撮影地:八丈島・底土)

あおり足で移動すると砂を巻き上げない、体力の消費が少ない(撮影地:八丈島・底土)

④緊急時の練習
エア切れの際、バディのオクトパスを吸いながら移動する練習や緊急スイミングアセントなどの練習。

⑤ガイドやナビの練習
コンパスを使いブリーフィングの通りにガイドする。ほかのメンバーの残圧管理や安全管理もガイドが行う。

また、安全のため年中5㎜ウエットスーツで潜らないといけない(※)のです!!ドライスーツは動きにくいため緊急時に救助が遅れてしまうかもしれないからです。12月末や4月は特に寒いですが、過去の先輩方は2月伊豆の海でウエットスーツで潜ったこともあるそう。恐ろしい伝統です。

※低体温症などの安全には十分配慮して練習を行っていますので真似はしないようにしてください。しかし実際のところ練習で動き回るので寒さは慣れてきます…!マスク・ウエイト・フィンをすべて外して5-10mの水底に沈め、浮くまでにすべて装着出来たらロクハンを使っていいことになっています。

このような毎週の練習を行うことで根性も鍛えられ、一本一本の密度が濃いダイビングとなっており、1年生の上達にも目を見張るものがあります。春には春濁りでみそ汁のような透明度になりますがが、これでガイドが完璧にできれば晴れて一人前のダイバーというわけです!

春濁りのコトガハマ

春濁りのコトガハマ

冬は透明度が良いコトガハマ

冬は透明度が良いコトガハマ

練習を行うメリット

まるで部活な農大ダイビングクラブがここまでハードな練習を行うには主に3つの理由があります。
・安全面
普段からマスクを外して目を開ける練習やレギュレーターリカバリーをしているので経験値が増え、マスクが外れてもパニックになりにくい。

・環境面
日頃の徹底した中性浮力の練習により、着底しないでダイビングできるようになるのでサンゴや生き物を傷つけない。

・楽しさ
中性浮力がうまく取れるようになると、エアの消費を減らせる、写真をうまく撮れるようになる。あおり足をマスターすると砂を巻き上げないで潜ることができる。練習すればするほど、ダイビングがより楽しくなっていく。

など、練習するメリットはたくさん。練習はきちんと行い、楽しむところは楽しむ。大切なのはメリハリです。

安全停止中に先輩のお尻を狙う後輩(撮影地:コトガハマ)

安全停止中に先輩のお尻を狙う後輩(撮影地:コトガハマ)

日本のダイビング発祥の地、真鶴琴々浜

練習を行っている真鶴琴々浜は日本のダイビングの発祥地とも言われています。ガイド付きダイビングを提供しているショップが少なく、セルフダイビングがほとんどを占めています。また簡単な地形なので初めてセルフダイビングをする人や、練習してみたいダイバーにもおすすめです。

ネコザメの赤ちゃん(撮影地:琴々浜) ネコザメの赤ちゃん(撮影地:琴々浜)

ネコザメの赤ちゃん(撮影地:琴々浜)

ハリセンボン(撮影地:琴々浜)

ハリセンボン(撮影地:琴々浜)

マツカサウオ幼魚(撮影地:琴々浜)

マツカサウオ幼魚(撮影地:琴々浜)

サザエ根(撮影地:琴々浜)

サザエ根(撮影地:琴々浜)

農大ダイビングクラブはセルフダイビングを中心とした活動のため、毎週練習を行ない、安全管理のため部員も多く増やせません。しかしながら、しっかり練習しているからこそセルフダイビングでもより安全に楽しめるのが醍醐味。
ぜひ今年の夏はセルフダイビングに挑戦してみては!?
ガイド付きダイビングを行う際であっても同じようにBWRAFをして器材のチェックをしたり、コンパスを使ってみたり、あおり足を意識してみたりすると、いつものダイビングより少し成長できるかもしれない。

次回は、農大ダイビングクラブの小笠原合宿にせまる!~前編~
3月に小笠原父島へ2航海行ってきました。壮大な自然と温かい人々との交流“人生が変わる島“と言ってよいほど素晴らしいところでした。小笠原に行くまでの過程と、到着してまだ2日しか経っていないのに満足してしまう圧巻の海の様子をお届けします!
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東京農業大学ダイビングクラブ 
セルフダイビングを中心に毎週の練習と長期合宿を行い、日本の海を本格的に楽しむサークル。

   

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PROFILE
東京農業大学ダイビングクラブ47代幹事を務める。初めてのダイビングは8歳の時。農大ダイビングクラブに入部してから伊豆諸島や伊豆半島でのセルフダイビングにどハマりし、年間100本潜るほどに。学業でも海に関わりたく、伝統的な水産発酵食品“くさや“の研究ができる研究室に所属。自然の恵みに感謝しながら、海を守っていくにはどうしたらいいかを日々考えながら海と関わっている。
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