愛媛・愛南(あいなん)に深海魚が続々出現!大瀬崎出身の浮遊系ガイドに聞く愛南のポテンシャル
愛媛県のダイビングエリア「愛南」で、深海魚であるリュウグウノツカイやテンガイハタの幼魚などが初観測されているというニュースが舞い込んだ。発見し撮影に成功したのは、DIVE愛南で昨年7月からガイドを務める熊谷翔太氏。以前は伊豆・大瀬崎の大瀬館マリンサービスでガイドをされており、オーシャナにも大瀬崎での浮遊生物情報を何度も教えてくれた人物だ。
そんな浮遊系に詳しい熊谷氏が、愛南でもリュウグウノツカイの幼魚をはじめ珍しい浮遊生物を発見したと聞き、発見時の様子と愛南の浮遊系ダイビングのポテンシャルについて聞いてみました!
大瀬崎での経験を生かし、浮遊生物を狙う熊谷氏
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リュウグウノツカイ(約6cm)
――初めてリュウグウノツカイの幼魚が見つかったときは、どんな状況でしたか?
熊谷氏
1月末に浮遊系ダイビングの調査を3日間にわたり行っていたときのことでした。以前の職場である大瀬崎でリュウグウノツカイを発見した時と同じように、大量のクラゲが調査ポイントに押し寄せていたので「これはもしかして」と思い、じっくり探していたら見つかりました!嬉しくて思わずガッツポーズしてしまいました(笑)。
――リュウグウノツカイ以外にも浮遊生物は見られたんですか?
熊谷氏
リュウグウノツカイと同じ深海魚であるアカマンボウ目のテンガイハタの幼魚や、成体は深海に住むソデイカやトウガタイカ、ユウレイイカの幼体など普段のダイビングでは見ることのできない珍しい生き物のオンパレードでした!
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ユウレイイカ(約15cm)
――すごいですね…。やはり大瀬崎での経験があるからこそ見つけられたのでしょうか。
熊谷氏
大瀬崎で大先輩方に教えて頂いた過去の情報や、自分自身で浮遊系を観察してきた経験が愛南でもすべてにおいて生きています。見てきた生物、潮や風の読み方など、ほとんど同じ状況が当てはまっています。
愛南の浮遊系ダイビングのポテンシャルはいかに
――熊谷さんからみた愛南のポテンシャルはいかがでしょうか?
熊谷氏
すごいポテンシャルを秘めています。まだまだ調査段階ですが、初日からリュウグウノツカイやこれほどの浮遊生物が見られる海はなかなか見つからないと思います。
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テンガイハタ(約3cm)
――愛南の地形や潮流などが関係しているんでしょうか?
熊谷氏
そうですね。リュウグウノツカイや深海魚の幼魚は黒潮にのってくるので、黒潮に面している愛南で見られるのだと思います。また、リアス式海岸で山の栄養分も豊富で、豊後水道や瀬戸内の方からも流れが入る、プランクトンの多い場所というのも関係あるかもしれません。
――今回のポイントはどうやって見つけたんでしょうか?
熊谷氏
それは企業秘密です…(笑)。というのは冗談で、港内にクラゲが溜まっている様子をよく見ていて、ここは浮遊系ポイントになりそうだなと思っていました。そうしたら1月に近所に住んでいる当店のお客様でもある漁師の方が、その港に漁のための桟橋を造られて、ダイビングでの利用も快諾してくださったんです。
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写真提供:海原田水産様
――で、潜って調査したらリュウグウノツカイがいたと(笑)。
熊谷氏
はい(笑)。新しいポイントを作ることができましたね。漁師の方には本当に感謝しかありません。
――これから開拓されていく、期待のポイントですね。
熊谷氏
浮遊系ポイントは今月発見したばかりなので、他の季節の様子や何が見られるかなど今後も調査を続けていきます。黒潮に乗ってくる深海魚の幼魚だけでなく、鵜来島の方で春頃みられるアカグツの幼魚なんかも見られないかな…と期待しています。
――アカグツ出たらまた教えてください(笑)! 最後に全国の浮遊系ファンに向けて一言お願いします。
熊谷氏
これからじゃんじゃん見つけていきますので皆さんDIVE愛南に遊びに来てくださいねー!
――熊谷さん、ありがとうございました。
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ビワガニのゾエア幼生(約2cm)
愛南の海はワイドからマクロ、なんでもあるのが魅力という熊谷氏。足の踏み場のないほどのソフトコーラルの群生、水深18mで見られるピグミーシーホース、ハンマーヘッドシャークやカマストガリザメ、オグロメジロザメなどサメが高確率で見られる外洋ポイント…。ここに浮遊系が加わり、ますます盛り上がりを見せる愛南の海。今後の開拓にますます期待したい。
取材協力:DIVE愛南