【世界初】環境移送ベンチャー「イノカ」が、真冬に水槽内でのサンゴ産卵に成功
2月16日、東京・虎ノ門の研究所にて人工的にサンゴ礁の海を再現した閉鎖系水槽でサンゴ(エダコモンサンゴ)の産卵に成功した。独自の環境移送技術により、サンゴ礁生態系を再現し、日本では通常、6月に産卵するサンゴを真冬に産卵させることを可能にしたという。海洋大国日本にとって貴重な資産でありながら、2050年までに90%消失が危惧されるサンゴの保全に大きく貢献しそうだ。
水槽内に人口的な生態系を再現する独自技術を開発
サンゴの産卵を成功させたのは、日本で有数のサンゴ飼育技術を持つアクアリスト(※)と、東京大学でAI研究を行っていたエンジニアが、2019年に創業したベンチャー企業「株式会社イノカ」。自然を愛し、好奇心に基づいて飼育研究を行う人々の力とIoT・AI技術を組み合わせることで、天然海水を使わず、水質・水温・水流・照明環境・微生物を含んださまざまな生物の関係性などのバランスを取りながら人工の生態系を水槽内に再現する「環境移送技術」の研究開発を行っている。
※アクアリストとは、自宅にて魚や貝、そしてサンゴまでをも飼育する、いわゆるアクアリウムを趣味とする人々のこと
今回成功したサンゴの産卵の実験方法
沖縄県瀬底島の水温データを元に、自然界と4ヶ月ずらして8月に12月の海水温を再現。飼育を継続し、2月16日にサンゴの産卵を確認した。
サンゴ人口産卵の様子▼
本実験の成功により、サンゴの産卵時期を自在にコントロールできる可能性が見込まれているという。年に一度しか研究が不可能であったサンゴの卵、幼生の研究がいつでも可能となり、保全知見が深まるとともに、創薬などのイノベーションについての基礎研究が進展することに期待が高まる。
今後は、サンゴが毎月産卵するような実験設備を構築することでサンゴ幼生の着床率をあげるための実験や、高海水温に耐性のあるサンゴの育種研究へと繋げていきたいと考えているという。
同社の代表取締役CEOの高倉葉太氏は「2019年に沖縄で初めてサンゴの産卵を目にして、『これをみんなにも見せたい』というシンプルな思いつきからチャレンジを進めてきました。初年度は抱卵までの成功、2年目は抱卵どころか親サンゴの不調を招いてしまうという数々の失敗を重ねてきたのですが、ついに成功し、本当に嬉しく感じています。産卵成功にあぐらをかかず、この成果をサンゴのため、海洋のため、ひいては人類のため。地球貢献ができますよう今後も尽力致します」と話す。
環境省によると日本は、世界で800種類存在するサンゴのうち約450種類が生息しており、領海が領土の12倍存在している海洋大国だ。そんな日本だからこそ、環境分野においてサンゴ礁の研究は、今後世界の中での日本らしさを象徴するものとなっていくだろう。
「サンゴの抱卵に成功」したときの模様も、1月6日の記事で取り上げている。