鍵井靖章写真集『にほんの海 日本列島海中景色紀行』8/12発売

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水中写真家・鍵井靖章氏(以下、鍵井氏)の写真集『にほんの海 日本列島海中景色紀行』が8月12日に発売される。今までもたくさんの写真集を発表してきた鍵井氏だが、今回は南西諸島から知床半島まで、列島縦断3,000㎞を旅して撮影された日本の海の魅力を凝縮した一冊となっている。

国内26地域、50ヶ所近くで撮影された水中写真が満載

今回の写真集は、日本国内26地域、ダイビングエリア数でいくと50ヶ所近くで撮影された水中写真が全208ページに惜しげもなく掲載されている。ページをめくり、まず驚いたのが次々と登場する海の生き物たちのバリエーションの豊富さ、そして色彩に溢れた圧倒的な写真の美しさだ。

「日本の海って、こんなにいろんな表情があったんだ!!」と目からうろこの水中写真の数々の撮影地は、以下のとおり。

『にほんの海 日本列島海中景色紀行』撮影地

◎南西諸島:八重山列島、宮古列島、沖縄諸島、奄美群島、薩南硫黄島・トカラ列島
◎九州:鹿児島県錦江湾、熊本県天草諸島、長崎県辰ノ口、福岡県玄界灘
◎四国:愛媛県愛南、高知県柏島
◎本州:瀬戸内海、紀伊半島、伊豆半島、伊豆諸島、三浦半島、房総半島、小笠原諸島、山口県青海島、山陰海岸、能登半島・富山湾、新潟県佐渡島、山形県飛島、三陸海岸
◎北海道:積丹半島、知床半島

鍵井氏は写真集制作のために、この2年ほど日本中を飛び回り撮影をしてきたという。折しもコロナ禍の2020年から2022年の2年余りという期間。そんな厳しい状況の中でも立ち止まることなく撮影に出かけ、これだけの作品を撮ってきた鍵井氏。その情熱とエネルギーには感服するばかりだ。そんな鍵井氏に、写真集制作のきっかけや、どんな想いが込められた写真集なのか?を伺ってみた。

日本の海はバラエティーに富んでいて、
ガイドさんと心通じるところが魅力

紀伊半島 三重県尾鷲。カラフルなソフトコーラルに目を奪われる

紀伊半島 三重県尾鷲。カラフルなソフトコーラルに目を奪われる

オーシャナ編集部(以下、――) 新作写真集『にほんの海』を作ることになったいきさつを教えていただけますか?

鍵井氏

新型コロナウイルスの影響で、海外の撮影に行けなくなり、日本の海を撮影する機会が増えました。そんな折に山と溪谷社の編集者・神谷さんから「日本の海の写真集を作りませんか?」と声をかけてもらいました。今回、こういった機会をいただだけてとてもありがたかったです。

僕は今までは海外のダイビングガイドの方たちと仲が良かったんですが、いざ国内に活動を移してもまったく変わらずに、各地のガイドの方たちが僕のことを受け入れてくれて、撮影に協力してくれました。それはとても嬉しかったですね。

 

――写真集に掲載されている作品は、新しく撮り下ろしたものが多いんでしょうか?

鍵井氏

古い写真はあまり使っていません。写真集のために新しく撮影した作品が多いです。ただ初めて訪れた海は、やはりずっと撮り続けているわけではないので、撮影経験は浅いのかもしれません。しかし今まで世界中の海を潜って撮影してきて「この海の特徴はこれだ」という基準が、僕なりにはわかっているつもりなので。写真集のためにチャチャっと撮ったのではなく、今までの30年近い水中写真家としての経験の延長線上にある撮影だと思っています。

「この海の一番美しいところはここ」という直感を大事にしています。水中写真を始めたての頃より、見方は成熟していると思います(笑)。

九州 長崎県辰ノ口。今回、写真集制作のために鍵井氏が初めて訪れた海の一つ

九州 長崎県辰ノ口。今回、写真集制作のために鍵井氏が初めて訪れた海の一つ

――今回、制作のタイムリミットぎりぎりまで、かなり撮影でお忙しそうでしたよね…。

鍵井氏

出版不況と言われているこんな時代に、毎年コンスタントに写真集を出させてもらえて大変ありがたいなと思っています。だから声をかけてくださった神谷さんはもちろん、手に取ってくださる読者の皆さんを裏切っては駄目だなと思い、相当国内ロケを頑張りました。最後の約4ヶ月は、ほとんど家に帰る時間もないくらい…。

でも僕はいつも一人じゃなくて、たくさんの仲間が常に周りにいてくれるんです。たとえば「佐渡へ潜りに行きたい」というと、仲間が車を出して送り届けてくれて…。本当にありがたいことです。

――佐渡も撮影に行かれたのですね。撮影のための総移動距離たるや、すごいですよね(笑)!

鍵井氏

今回、初めて北海道にも流氷を撮りに行きました。「ロビンソンダイビングサービス」の西村さんに毎年「流氷撮りに行きます」って言うんだけど行けてなくて…。“行く行く詐欺”状態だったんですが(笑)、初めて撮影できました。

――これだけのキャリアをお持ちなのに、流氷の撮影が初めてというのは、意外な感じがします。

鍵井氏

だって、怖いじゃないですか(笑)! いや、もう経験したからあの低水温も怖くなくなったけど、未経験のときはもう「流氷の下に潜るって、どういうこと!?」って感じでしたから。というかね、それだけ僕は日本の海を知らなかったということです。

北海道知床半島。流氷の撮影は初めてのチャレンジだったそうだ

北海道知床半島。流氷の撮影は初めてのチャレンジだったそうだ

――今回、北は北海道から南は沖縄まで潜って撮影されて、改めて日本の海にどんな印象を持たれましたか?

鍵井氏

やっぱり本当に驚きましたよ。皆が同じようなこと言うので言いたくはないんですけど、やっぱりバラエティーにあふれていて素晴らしかった。正直、これからしばらく外国に行かなくてもいいかなって思うくらいに。それと、日本国内は時間どおりに安全に移動できるから、それも最高じゃないですか。

――日本での取材ではガイドの方とのコミュニケーションの取りやすさ、また気持ちが通じ合うというか、そんな部分も大きなメリットのように思います。

鍵井氏

僕が通い続けているサービスのガイドって、皆さんそうなんです。信頼できる人にガイドしていただくと、いい写真が撮れます。多くの方のサポートがあってこそ、この写真集が出来上がったと感謝しています。ぜひたくさんの方に『にほんの海』を手に取っていただき、日本の海の素晴らしさを感じてもらえればと思います。

――ありがとうございました。

鍵井氏に話を伺ってみて、この写真集を作るにあたって協力してくださった全国各地のガイドへのリスペクト、そして多くの方に日本の海の魅力を伝えたいという気持ちがあふれていた。写真はもちろん、各地の海についての紹介文もとても興味深いので、ぜひ手に取って日本の海の魅力を皆さんにも感じていただきたい。

『にほんの海 日本列島海中景色紀行』

著者:鍵井靖章
出版社:山と溪谷社
発売日:2022年8月12日
判型・ページ数:A4変型278×210mm
オールカラー208ページ/並製
定価:4620円(本体4200円+税10%)

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【応募方法】
下記のメールアドレスに指定の件名で、メールをお送りください。
応募期限は、8月31日(水)まで。当選者には、メールにてご連絡いたします。
発送は9月中旬予定です。
※1週間以内に送り先等の情報についてご返信がない場合は、無効といたします

■応募先メールアドレス:info@oceana.ne.jp
■件名:オーシャナプレゼント 「にほんの海」
■本文に以下を記載:①当選時のご連絡先メールアドレス ②氏名 ③お住まいの都道府県名

水中写真家 鍵井靖章
1971年、兵庫県生まれ。1993年よりオーストラリア、伊豆、モルディブに拠点を移し、水中撮影に励む。
1998年に帰国し、独立。自然のリズムに寄り添い、生き物に出来るだけストレスを与えないような撮影スタイルを心がける。多彩な視点と色使いが人気で、大胆かつグラフィカルな水中写真で多くの人々を魅了する。一方3.11以降は、震災を経験した海に生きる生命を定期的に記録している。主な写真集に『unknown』(日経ナショナルジオグラフィック社刊)、『不思議の国の海』(PIE International)など多数。
2013年、2015年 日経ナショナルジオグラフィック優秀賞受賞など受賞歴多数。TBS「情熱大陸」、TBS 「クレイジージャーニー」などにも出演。

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PROFILE
大学時代に慶良間諸島でキャンプを行い、沖縄の海に魅せられる。卒業後、(株)水中造形センター入社。『マリンダイビング』、『海と島の旅』、『マリンフォト』編集部所属。モルディブ、タヒチ、セイシェル、ニューカレドニア、メキシコ、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、オーストラリアなどの海と島を取材。独立後はフリーランスの編集者・ライターとして、幅広いジャンルで活動を続けている。
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