バハマでイルカと泳ぐ! 写真と動画で見る「聖地」の魅力を徹底解説
今や日本でも大人気のマリンアクティビティとなった「ドルフィンスイム」。そのドルフィンスイムの聖地と言われる中米の島国「バハマ」には、世界で一番人に馴れているといわれているイルカたちが暮らしています。今回はその魅力を、小笠原や御蔵島に20年以上ドルフィンスイムに通い、ガイドや撮影など精力的に活動する長谷川潤さんにレポートしていただきました。
僕が初めてバハマを訪れたのは2019年。長年ドルフィンスイムをしてきた僕にとっても、死ぬまでに一度は行きたい憧れの場所でした。行く前の印象は、「どこまでも青くて穏やかな海で、イルカたちとのんびり戯れ、癒される」という、多くの方が思い浮かべるであろうバハマのイメージそのものでした。でも実際にバハマに行き、長い時間を洋上で過ごしながらイルカたちとお付き合いしてみると、そのイメージは「良い意味で」見事に裏切られてしまいました。イルカたちと戯れ癒される、というのは間違いないのですが、とはいえ野生動物。バハマの海では、それまで想像もしていなかったイルカたちの一大スペクタクルが展開されていたのです!
そこで今回は、僕が2023年と2024年の合計4週間のバハマクルーズで撮影した写真と動画で、バハマのイルカたちの「本当の姿」を紹介したいと思います。
目次
「クルーズ」でイルカとの出会いを徹底的に楽しむ
本題に入る前に、まずはイルカにアクセスする方法から。バハマでイルカと泳ぐためには、大きく分けて2つの方法があります。一つはバハマ国内に滞在して、イルカが住んでいるエリアに近い島から日帰りのドルフィンスイム船に乗るという方法。もう一つは米国のフロリダ半島から出ているクルーズ船に乗って、1週間のドルフィンクルーズに参加すること。
僕は毎回、後者のドルフィンクルーズに参加しています。クルーズの良いところは、何と言ってもイルカを探せる時間が長く遭遇率が高いこと。また一日中海の上にいるため、夕方や夜にイルカと泳げるのも強みです。上の写真は、いつもお世話になっているクルーズ船ドルフィンドリーム号。船長のスコットはこの道40年のベテランで、茶目っ気たっぷりにぼくらゲストを楽しませてくれます。
バハマで会えるのは
タイセイヨウマダライルカとハンドウイルカ
バハマで会えるイルカは主に2種。この中でドルフィンスイマーに特に人気なのが「タイセイヨウマダライルカ」です。その名が示すとおり、大人のイルカは全身にまだら模様があります。子どもは生まれた時にはまだら模様がまったくないのですが、成長するにともなって、体のまだら模様が増えていきます。御蔵島や小笠原で会えるミナミハンドウイルカよりも一回り小柄で、人間と積極的に遊ぶフレンドリーな個体が多い種です。
もう1種は「ハンドウイルカ」。タイセイヨウマダライルカよりも体が大きく、吻(くちばし)が太く短いのが特徴です。タイセイヨウマダライルカと比べると人に対しては素っ気ないためか、人気はいまひとつなのですが、僕はこのハンドウイルカも大好きです。好奇心旺盛な個体は、水中で人の近くに来た時に首を「クイッ」と曲げて顔を覗き込んでくるのですが、この仕草がたまらなくかわいいのです!
クルーズのハイライト!
超フレンドリーなイルカと泳ぐ
「バハマのイルカと泳ぐ」ことは、世界中のドルフィンスイマーの憧れと言っても過言ではないでしょう。人馴れしたタイセイヨウマダライルカが定住しているビミニ諸島周辺の水底は、水深8~10mの真っ白な砂地。ベテランスイマーは、まず水底まで潜ってイルカと合流し、イルカと見つめあい、回りながら、陽の光あふれる海面に向かって一緒に浮上していきます。特に人馴れしている個体は、人が泳ぐスピードに合わせて泳いでくれることも。また背景は美しい砂地なので、カメラをどこに向けても絵になり、撮影が一番の目的であるスイマーにとっては、バハマは理想の撮影スタジオと言えるでしょう。
ちなみにイルカたちは、機嫌が良い時は水面で遊んでくれることも多いので、水底まで潜れない初心者スイマーでも十分に楽しむことができます。
サメもご同伴!
ハンドウイルカのモグモグタイム
ドルフィンクルーズに参加していると、イルカたちの様々な野性味あふれる行動を目にすることができます。朝一番のスイムでは、ハンドウイルカが集団で採餌しているのを何度か見かけました。砂の中にいる小魚を狙って、体を垂直にしてグリグリと顔を砂に押し付けます。砂地には、何らかの生物の痕跡と思われる丸いくぼみが、まるで月面のクレーターのように点在していました。
ハンドウイルカの群れには、大きなコモリザメが混ざっていることも。イルカたちが食べ残した「おこぼれ」でも狙っているのでしょうか?普段からイルカと一緒に行動しているからか、人が近づいても逃げる様子がありません。
異種間でも!?
オスの群れの「絡み合い行動」
御蔵島などでよく見られる絡み合い行動は、バハマでも頻繁に見ることができます。絡み合い行動は、若いオス同士の交尾の練習と言われていて、この行動中は口を大きく開けてガーガーとけたたましく鳴いていることが多いため、英語圏の常連さんは「barking boys(吠える少年たち)」と呼んでいました。イルカたちは、整然と固まって泳いでいたかと思うと、突然「絡み合い」を始めたり、水面に向かって突進してジャンプしたり…激しいアクションは見ごたえ満点!
そして、上の写真をよく見てください。絡み合い行動の群れに、タイセイヨウマダライルカとハンドウイルカが混ざっているのが分かりますでしょうか? 2種類のイルカが1つの群れで行動しているのは以前からよく見かけていましたが、絡み合い行動を一緒にやっているのを見るのは、この時(2024年6月6日)が初めてでした。
群れの中には、個人的?に仲が良さそうに見えるタイセイヨウマダライルカとハンドウイルカも見受けられ、尾ひれで相手の顔を引っぱたいたりしてふざけあっているようにも見えました。小笠原では、ミナミハンドウイルカがハシナガイルカの子どもをさらって連れまわす、という一方的な異種間交流を見たことがありますが、バハマでの異種間交流は、両者合意のもと友好的に行われている印象がありました。
海のハンター!?
野性味あふれる夜の顔
海況が安定している日は、夜もイルカと泳ぎます。これぞクルーズの特権!
船から集魚灯を海中に垂らすと、魚やイカたちがわらわらと寄ってきます。集魚灯を投入してからしばらくすると、魚やイカを狙ってどこからともなくタイセイヨウマダライルカが集まって来ます。スタッフの「Go!」の合図を待って真っ暗な海にエントリーすると、そこには、昼間のフレンドリーな雰囲気とはまったく異なる、獲物を狙うどう猛なハンターたちの姿がありました。
上の写真を撮影した時(2023年6月7日)は、アジ科と思われる魚の大群が集まって来て、イルカたちは盛んに群れを追いかけていました。
集魚灯の周囲には、他にもアナゴやダツ、トビウオなどさまざまな魚が集まっていました。しかしイルカたちは、なかなか魚を捕まえることができません。狩りの成功率はあまり高くないようで、捕食の瞬間をカメラに収めるのにとても苦労しました(笑)
自分の意志で人と交流してくれる
バハマのイルカたち
バハマは、野生動物であるイルカと人間が、お互いの自由な意思に基づいて交流している稀有な場所だと思います。イルカたちの多くは、人間の前で自然なままの姿を見せてくれて、また気が向けば人間と遊んでくれ、気が向かなければただ通りすぎていきます。バハマのイルカたちは、野生動物から搾取することなく交流するためのヒントを、ぼくら人間に与えてくれます。
このようなかけがえのない体験が出来るのも、長年にわたってイルカたちとの信頼関係を築いて来た、スコット船長およびドルフィンドリーム号クルーの皆さん、そしてバハマのドルフィンスイムツアーに関わるすべての人たちの努力の賜物だと思います。本当に感謝しかありません。
そして、よそ者である僕らを(たぶん)快く迎えてくれるバハマのイルカたち。
本当に、本当に、ありがとう!!