冬の宮古島ダイビングの魅力を徹底リサーチ!冬に潜りたいポイントや、天気が悪い日の楽しみ方を探ってきました

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miyako1_上出俊作

こんにちは、水中写真家の上出俊作です。先日1週間ほど宮古島に滞在し、毎日みっちり潜ってきました。今日は「冬の宮古」の魅力を僕なりに紹介したいと思います。

早速ですが、宮古島のダイビングと言ったら、地形ですよね。

もちろん八重干瀬のサンゴとか、本ドロップのロウニンアジとか、ダイビングのコンテンツとしては他にもいろいろありますが、やはり多くのダイバーが「宮古」と聞いて想像するのは「魔王の宮殿」などの地形ポイントだと思います。

実際僕も、そんなイメージを持っていました。だから、ここ5年間は宮古島を訪れていませんでした。

あ、言い忘れていましたね。
僕は元々、地形ポイントが好きじゃないんです。暗くて狭いところがあまり得意ではないのと、どちらかと言うと生き物の方が好きなのとで、宮古島以外でも地形撮影はこの5年間ほとんどしていません。

これまでずっと、地形から逃げてきました(別に追いかけてこないですが…笑)。

miyako11_上出俊作

そんな僕が、今回はいろいろなご縁があって宮古島で潜る機会をいただいたので、「これは苦手克服のチャンスだ!」と自分に言い聞かせて、地形撮影にチャレンジしてきたわけです。

そして結論から言うと、僕の地形への思いは180°変わりました。

早速、僕を地形好きに変えてくれたポイント紹介をしたいところですが、その前にちょっとだけ、地形ポイントのシーズナリティについてお話ししておきます。

宮古島の地形ポイントの
ベストシーズンはいつなのか?

「地形を撮る」というのは、言い換えれば「光と影を撮る」ということです。生物やダイバーを絡めることもありますが、光をどう切り取るのか、というのが地形撮影のキモだと思います。皆さんも、レーザービームのように突き刺す光の写真を目にしたことがあるでしょうし、文句なしで美しいですよね。僕もせっかく地形を撮影するなら、そんな印象的な光景を切り取りたいと思っていました。

しかし、ここで問題発生です。

レーザービーム」を撮影するには、高い位置から太陽の光が差し込む「夏の晴れた日」に訪れる必要があるんだそう……。つまり冬は、「光を撮る」という意味では不利なんですね。

では、「やっぱり夏が宮古のベストシーズンなの?」と聞かれれば、必ずしもそうとは言えないようです。

宮古の有名な地形ポイントは下地島の南から西側に集中しており、このエリアは南風に弱いため、南風の吹きやすい夏は有名な地形ポイントに行けない日も多いとのこと。一方、冬になると北風の日が増えるので、「アントニオガウディ」や「魔王の宮殿」など、有名な地形ポイントに行きやすくなります。しかも、ダイバーの数も夏に比べると圧倒的に少なくなるので、ポイントのリクエストも通りやすく、有名ポイント貸し切りなんて事も十分あり得るとか…。

つまり、夏も冬も、一長一短あるわけですね。

夏のことは夏になったら考えるとして、今回は冬の魅力を探ってみました。

冬でも「光の筋」を撮れる
ポイントはあるか?

初日の朝、伊良部島にお店を構えるダイビングショップ「マリンズプロ宮古」代表の冨谷さんに「地形に差し込む光の筋を撮りたい」というリクエストを伝えたところ、こんな提案をしてくださいました。

冨谷さん「レーザービームのような強い光が入るわけではないけど、朝一番で光のシャワーを狙えるポイントがありますよ。」

期待が膨らみますね、光のシャワー

朝9時、伊良部島の港を出発した僕達が向かったのは、下地島の南西にある「マリンレイク」です。

■「マリンレイク」

この「マリンレイク」というポイント、言葉で説明するのは難しいのですが、長く入り組んだ洞窟になっています。
洞窟を進んでいく途中で何ヶ所か光を狙える場所があるそうですが、朝一で「光のシャワー」が見られるのは洞窟の終点、陸につながった池のような場所です。

撮影の打ち合わせをして、早速エントリーしました。狭いとも広いとも言えない洞窟をゆっくりと進んでいきます。僕にとっては久しぶりの地形ポイント。期待と緊張が交じり合い、鼓動がどんどん速くなっていきます。

ブリーフィングで教えてもらった通り、最初の光スポットも、2番目の光スポットも、雰囲気はあるけれど光が差し込んではいません。確かに「朝一は最後の池がきれい」とは聞いていたのですが、「本当に光のシャワーが撮れるのかな」と少し不安になっていきました。

10分くらい、洞窟を進んだころでしょうか。前方に、開けた空間がぼんやりと見えてきます。

「ここが終点かな……光、差し込んでいなかったらどうしよう……」

そんな不安な気持ちを抱きながら広場に足を踏み入れた瞬間、僕は動けなくなりました。どこまでも澄み、流れることをやめた水の層。思い出したようにやってきては消える、小魚の群れ。その静謐な空間を、光のベールが優しく包み込んでいました。

そう、僕は地形に恋をしたのです。

時間の流れ方が違う世界に迷い込んだような、不思議な感覚だった。

時間の流れ方が違う世界に迷い込んだような、不思議な感覚だった。

季節に関係なく撮影できる
地形ポイントはどこか?

数日後の朝、あっさりと「地形好き」になった僕は、宮古滞在の後半お世話になった「エミナマリン」代表の松浦さんに船の上で相談しました。

僕「この時期ならではの地形ポイントがもしあれば、撮影してみたいのですが……」

松浦さん「光の筋にこだわらなければ、冬でもいいポイントはありますよ。特に深場のポイントは夏でも光の筋は出ないので、シーズンや天気に関わらず楽しめます

なるほど、そういう考え方があるんですね。さらにお話を伺うと、「アントニオガウディ」等の有名どころは、夏の海況のいい日はダイバーが集中するので、冬のほうがゆっくり撮影できるそう。

そんなわけで、深場の地形ポイント2か所に連れて行っていただきました。

■「女王の部屋」

もう、ポイント名がカッコよすぎですよね。「魔王の宮殿」と対になっているのでしょうか。

水深20m前後の所に、上向きにぽっかりと空いた穴があり、そこを入っていくと比較的すぐメインのホールに出ます。撮影していた水深は36~38mでしたので、無減圧潜水時間と残圧の管理には注意が必要ですね。

これまで地形に興味がなかったこともありますが、今回宮古に行くまで、僕はこのポイントの名前すら知りませんでした。ポイント名はカッコいいけれど実際はどうなのかな……と、潜る直前まで、実はそれほど期待もしていませんでした。

連れて行ってくれたエミナマリンさん、そして宮古の海を愛する皆様、失礼なことを言ってごめんなさい。

「女王の部屋」、ものすごく良かったです。

独特の雰囲気があり、スケール感もあって、素直にまた行ってみたいなと思いました。「女王」の由来はここに住んでいるホシゾラワラエビとのことですが、もっと大きな女王の存在を感じずにはいられません。たくさんの穴があり、その穴ごとに入ってくる光の角度や量が違うので、「どの光の中に女王がいるんだろう?」「この光と闇の織り成す空間そのものが女王なのかな?」と、想像がどんどん膨らみます。

撮影を終えて安全停止に入る頃には、これまで「地形は好きじゃない」なんてえらそうに言っていた自分が恥ずかしくなっていました。単純に、僕はこれまで、本物の地形ポイントに出会ったことがなかったんですね。

カメラなんか持たず、静かに眺めていたいな。そんなことすら考えてしまった。

カメラなんか持たず、静かに眺めていたいな。そんなことすら考えてしまった。

■「アントニオ・ガウディ」

宮古島で最も有名なポイントかもしれません。このポイントも、名前のインパクトがすごいですよね。「宮古のガウディ」と言ったら、あの不気味に笑ったような顔がパッと思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか?

ガウディのメインのアーチは水深30mくらい、穴を見上げて写真を撮るためには35m前後まで潜る必要があります。まともに撮影するのは初めてでしたし、深場の滞在時間も限られているので、今回は余計なことをせず「THEガウディ」というカットをおさえにいきました。地形だけだと写真としては動きが出しづらいかなと思い、ガイドさんにモデルとして入ってもらえるように打ち合わせをして行ったのですが…。

なんと、アーチをくぐって撮影場所まで降りていこうとすると、すでに先客がいるではないですか。

アーチの間を出たり入ったりしながら、2匹のロウニンアジがゆったりと泳いでいました。いつもいるわけではないようなので、ラッキーでしたね。

ロウニンアジのお出迎えは予想外だったので、ダイバーと魚を画面の中にどうやって配置しようか悩みました。何とか作品としてまとめることができたのは、慣れないモデル役を120%の力でやり切ってくれたガイドさんのおかげです。

暗闇の中、限られた時間。高揚感と共にシャッターを切る。

暗闇の中、限られた時間。高揚感と共にシャッターを切る。

天気が悪ければ、
潔くマクロに切り替えるのもあり?

今回の宮古島滞在中は比較的お天気がよく、地形と光を撮影することができました。でも、いつもそうとは限りません。むしろ、沖縄の冬はどんよりと曇った日の方が多いです。

そんな時、ワイド撮影はスパッとあきらめ、マクロ撮影に切り替えてみるというのはいかがでしょうか?

これは宮古島に限った事ではありませんが、「ワイドを撮れる状況じゃなかったらマクロを撮ろう」という選択肢を持っていると、とっても気が楽です。ワイド一択だと、毎日天気予報ばかりが気になってしまいますよね。

特に冬場はウミウシも増えてきますので、マクロの被写体には事欠きません。今回も、5㎜に満たないような可愛い極小ウミウシがたくさんいました。(自分ではなかなか見つけられないのですが…)

キイッポンウミウシ。ウミウシに詳しくない僕は、シンデレラの子供だと思って撮っていた…笑

キイッポンウミウシ。ウミウシに詳しくない僕は、シンデレラの子どもだと思って撮っていた……笑 撮影ポイント「ミニケーブ」

ミドリアマモウミウシ。小さすぎて、どっちが頭かしばらくわからなかった…

ミドリアマモウミウシ。小さすぎて、どっちが頭かしばらくわからなかった…… 撮影ポイント「オアシスⅡ」

そうそう、僕は甲殻類を普段あまり撮らないのですが、今回はエミナマリンさんの得意分野ということもあり、何種類か撮影してみました。

イダテンヒメホンヤドカリ。貝殻から体を出した瞬間、猛スピードで走り出します。

イダテンヒメホンヤドカリ。貝殻から体を出した瞬間、猛スピードで走り出します。 撮影ポイント「キャニオン」

イボツブコブシ。じっとしていると岩みたいで、生き物かどうかすらわからない。

イボツブコブシ。じっとしていると岩みたいで、生き物かどうかすらわからない。 撮影ポイント「管制下」

安全停止をするエリアも、魅力的な被写体であふれています。浅場で魚とにらめっこする時間、僕は大好きです。

メガネゴンベ。僕が一眼レフで初めて撮った魚。

メガネゴンベ。僕が一眼レフで初めて撮った魚。 撮影ポイント「キャニオン」

モンツキカエルウオ。安全停止中と言わず、ずっと向き合っていたい。

モンツキカエルウオ。安全停止中と言わず、ずっと向き合っていたい。 撮影ポイント「ハナダイの根」

今日は、冬の宮古島の魅力を

①冬でも光の筋を撮れるポイント
②季節に関係なく魅力的な地形ポイント
③天気が悪い日でも楽しめるマクロ撮影

という3つの切り口から紹介してきました。

少しでも皆さんの参考になればうれしいです!

■撮影・取材協力:マリンズプロ宮古エミナマリン

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PROFILE
1986年東京都生まれ。
2014年、かねてから抱いていた沖縄移住の夢が抑えられなくなり、沖縄本島の名護市に移住。
「水中の日常を丁寧に切り取る」というテーマで、沖縄を中心に日本各地の水中を撮影。
ブログ「陽だまりかくれんぼ」や写真展などのイベントを通して、水中写真と沖縄の海の魅力を発信し続けている。
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