海のSDGsを若い世代へ!小笠原愛&関戸紀倫が中学校で念願の初講演

2020年11月28日、豊島区立巣鴨北中学校にて、中学校3年生を対象に海とSDGsに関する講演が行われた。登壇したのは、オーシャナでも活躍中の「ちきゅうの学校」主宰・小笠原愛さんと自然写真家・関戸紀倫さんだ。

声を揃えて「夢が叶った!」と感動の声をあげる2人。その講演が実現するまでの経緯と当日の様子、地球環境に対する2人の想いに迫っていく。

講演当日の様子

講演当日の様子

What’s SDGs
「Sustainable Development Goals」の略称。2015年の国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき持続可能な世界的開発目標のこと。17のゴールと、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを宣誓している。

海のSDGsを中学生へ
思わぬ出会いがきっかけに

実は、小笠原愛さんが巣鴨北中学校で講演を行うのは2度目。2019年7月に公開されたWEBメディア・アナザーライフの記事が、豊島区教育委員会事務局の関根憲一先生の目に留まり、2019年にキャリア教育についての授業を依頼されるに至った過去を持つ。

2019元年8月に改築された巣鴨北中学校の新校舎

2019元年8月に改築された巣鴨北中学校の新校舎

「六本木のNo.1ホステスから自然と調和する暮らしへと舵を切った、生き方に注目していただけました。関根先生は、“パッションのある教員を育てたい”という強い気持ちをお持ちの方。私でいいの!? と思いましたが、『多様な生き方を生徒に伝えたい』とおっしゃっていただけて、とてもうれしかったです。
そして、今回は、『SDGsの文脈でもできますよね』とお話しをいただいたんです。ぜひやりたいです、と即答しました」。(小笠原愛)

そこで、小笠原愛さんは、かねてからSDGsについて子どもたちに伝えたいと言っていた関戸紀倫さんを関根先生に紹介。2人揃って、登壇することになった。

2人は海で一緒に仕事をしてきた仲間だ photo by 真山拓郎

「写真や映像を通して、地球の美しさを伝えてきましたが、環境をテーマに講演するのは、はじめてで。それも、中学生に伝えられるなんて、とてもうれしかったです。
愛ちゃんとは、思っていること、伝えたいことが一緒だから、揃ってやれることもとてもうれしく思いました」。(関戸紀倫)

2014年「消滅可能性都市」の指摘を受けた豊島区も、今や持続可能なまちづくりへの取り組みが評価され、内閣府により「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」に選定(2020年7月)。

また教育について豊島区は、SDGsの目標4(質の高い教育をみんなに)に取り組むほか、広く持続可能性について学ぶ環境教育(ESD)に関する施策も促進している。

校内にはSDGsについての掲示もみられる

校内にはSDGsについての掲示もみられる

今回の講演で目指すのは、“SDGsの自分ごと化”と据えた。
「おカタイ内容ではなく、SDGsって楽しそうとか、地球ってキレイだなとか、中学生の感性に訴えられるような内容になるよう工夫しました。まだまだ、SDGsって何だろうといった感じだろうと思うんですね。まずは、興味を持ってもらうという段階から入ろうと」。(小笠原愛)

「とはいえ、持ち時間は35分。まずは、僕らのような人がいて、こういった実践をしていることを知ってもらうことを大切にしました。SDGsに対して『あ、これでいいんだ』『自分の行動ってSDGsにつながるんだ』という気づきのきっかけになれば」。(関戸紀倫)

題して、「海の世界をのぞいてみよう〜海と暮らしとのつながり〜」。実際の講演の様子を少し紹介しよう。

講演は体育館で行われた

講演は体育館で行われた

「海の世界をのぞいてみよう」
講演の様子をご紹介

講演は、チャイムと同時に号令からスタート。いつもより少し高揚している様子の登壇者2人は、生徒たちを前に一段と目を輝かせた。

自己紹介からはじまり、2人の仕事とSDGsの関係、2人が感じている海の変化や環境への影響へとプログラムは進む。奄美大島、八丈島、ハワイ、オーストラリアなどで実際に目にした海の環境変化について、写真とエピソードで紹介していく。

難しい言葉を使わず、時に質問をはさみながらの進行。堅苦しい授業形式ではなく、溶け込むように語りかける姿から、中学生によりそう姿勢が見て取れた。

講演の終盤、小笠原愛さんはこう言った。

「地球環境についての話を聞いて、怖い、今度どうなってしまうんだろうって思う人もいると思うんですね。私自身も心を痛めて病んでしまった過去があります。だからこそ、どうやって自分が前向きになれたかをシェアさせてください。
まず、“自分の行動が未来を変えていくっていうことを信じていくこと”、これがとても大事です。どんなに小さなことでも、行動した先にある未来と行動しなかった先にある未来、どっちが良い未来なんだろう? みんなの力は絶対に未来を変えられる、それを信じて行動して欲しいなって思います」。

そこに、関戸紀倫さんも言葉を重ねる。

「今やっている活動を全てストップしてまで環境問題に取り組んで欲しいわけではありません。私たちの日々の生活の中でできる小さなことを一つひとつ積み重ねていけば、もっと明るい未来が開けるんじゃないかなと思います」。

最後に、2人が日常生活で実践しているマイボトルやエコバッグの利用、箸・スプーン・ストローの携帯、そして、手作り歯磨き粉の紹介が行われ、講演は幕を閉じた。

質問の時間をはさんだ後、一人の生徒からお礼の言葉が述べられた。一部をご紹介する。

「僕は最初、地球の環境は悪くなり続けていて、どうしようもないのかなと諦めていました。しかし、今日の話を伺って“できることはある”“希望はある”と思うことができました。
自然は、日常の背景程度にしか認識していませんでしたが、今後は人間と自然のつながりや自然が教えてくれることに目を向けていこうと思います。また、SDGsが存在する理由と意義を自分の中で見つけることができました」。

きっと、中学生たちに講演者2人の真摯な想いが届いたのだろう。普段は触れられない2人の生の言葉を聞く時間は、実りのあるものだったに違いない。

若い世代へ伝えたい
地球環境への想いをインタビュー

講演後の2人に、今回の感想と合わせて、改めて今回の講演への想いを伺った。ここからは、インタビュー形式でお届けする。

緊張から解放された2人

緊張から解放された2人

ーーまずは、講演を終えた感想を教えてください。

関戸さん

最後に話してくれた生徒さんの言葉が、シンプルに心に響きました。「自然と日常のつながりを感じていなかったけれど、関係あると思えた」という声が聞けて、率直に今日成功した! と思えました。本当にはじめてだったので、どんな反応が返ってくるのか、正直不安だったんです(笑)。

小笠原さん

いや、救われましたね。「諦めていた」とも彼は言っていましたが、希望を見出してくれた。もう、うるっと泣きそうになるくらい今日話した意味を感じました。
質問とお礼の言葉を通して、交流できたこともよかったです。どんなことを感じて、興味を持っているのかなって。
質問をくれた生徒さんもいました。今活動している人たちに興味を持って手を挙げてくれる。そういう前向きな気持ちに出会えたことが、私の活動の原動力になります。

ーーSDGsについて講演するのは、2人にとってはじめてですよね。今回の講演の内容には、どんな想いを込めたのでしょうか?

小笠原さん

私は、高校生の頃に地球の未来を考えたときに、“怖い”って思ったから。たぶん同じように恐怖とか不安を感じている子もいると思うんです。どうすることもできないじゃん! っていう気持ちを軽くしてあげたかった。できるよ、やれば変わるんだよって思ってもらいたい、というのも今回の目的でした。

ーーご自身の経験から、若い世代に希望のメッセージを伝えたかったんですね。

小笠原さん

子ども時代って、見てきている世界がすごく限られているように思うんです。親、家庭、学校、地域……ぐらいかな?それこそ、自由に自分のやりたいことを仕事にしている人に会うって、親御さんがそうでない限り、会う機会もないし、もしかしたら知る機会もないかもしれない。子どもたちには、選択肢を広げるという意味で、多様な世界を知ってもらいたいですね。自分の生きたい道に希望を灯せるといい。

ーーその原動力は、いったいどこから来るのでしょうか?

小笠原さん

地球環境を守りたい、それしかない!(笑)。私にとって地球は、自分自身。自分が地球の一部だし、地球も自分の一部。海や森から受け取って食べて、それを排出して還元して……全部つながって、自分の中でグルグル回っていく一部だと思っています。地球を守ることは、自分を守ることだから。離れているものをつないで、自分ごとにしてあげたいんです。

子どもって、頭じゃなくて心で感じる力が強いと思うんです。環境破壊のニュースを知識で得るよりも、見て感じて、“悲しい”“どうにかしたい”って思った時に人は自発的に行動すると思うから。感受性豊かなうちに、たくさん心で感じてもらいたいですね。

ーー関戸さんも若い世代に伝えたかったんですよね?

関戸さん

まさに、僕も一緒ですね。大人は環境破壊のニュースに触れた際、背景を探ったり、複雑に考えがちです。思索を深めるのももちろん素晴らしいことですが、子どもはもっとシンプルに受け止める力を持っているんじゃないかな。

――関戸さんの原動力はどういったところでしょうか?。

関戸さん

僕は、「未来の子どもたちに今と同じ景色を見てもらいたい」。これに尽きます。サンゴや魚などの海の自然も、それから陸の自然も。そのためには、僕らが今変わっていかないと。

どんどんテクノロジーは発展して、人間社会は進化していく。それが、地球にどれだけのダメージを与えていくかなんて、正直、想像するだけで怖いです。結局のところ、すべては人。一人ひとりがどういう気持ちで生きていくか。大人は忙しいですよね。考える余裕がある人が少ない。その人の人生に余裕があれば、考える時間ができると思うんです。もっと自由に生きていいんじゃない?と思うこともあります。

子どもたちが、僕らのようにやりたいことを仕事にしている人に出会える機会は少ない。これから大人になっていく子どもたちが、「自分で道を切り拓いてOKなんだ」って思うことができたら、選択肢が広がるんじゃないかな。失敗したっていいと思う。自由に生きる人が増えれば、自然と環境のことも考えられる人が増えるんじゃないかと。

ーー日頃からお2人は、各種メディアやSNSを通して、発信活動をされています。地道な発信が身を結んだという側面もあると思いますが、そういった意味での達成感もありますか?

関戸さん

無駄じゃなかった、と思えました。発信を続けていれば、見つけてくれるんだって。それも子どもたちに伝えたいですね。自分がやりたいことがあれば、自然とその道を仕事にすることもできるんだって。最初はうまくいかないかもしれないけど、ずっとやり続ければ、応援してくれる人がきっと出てきます。

小笠原さん

本当に、思えば叶うんだって。信じてやり続けることの大切さを感じています。
去年、キャリア教育から入って機会をいただきましたが、めちゃくちゃ感動しました。ずっとやりたいと思っていたことが、奇跡のタイミングでやってきて、予想もしない形で実ったので。パッションを信じてくれる人がいる、これはとても心強いです。

ーー念願の中学校での講演が叶いました。これからは、どんな展開をしたいですか?

関戸さん

いやほんと、こんなに都会の豊島区の中学校で講演をやらせていただいて本当にありがたいです。

小笠原さん

どんどん場を増やしたいですね。

関戸さん

小学校でも、ぜひやってみたいです。

ーーありがとうございました。

今回の講演は、2人の「子どもに伝えたい」という願いが叶った形だ。そこで、ポジティブな声が聞けたことで、「もっとこの活動を続けていきたい」と純粋な想いが湧き立っている。自分の信じた道をひたむきに進む。その強い信念が、挑戦の機会を呼び込むのだろう。

SDGsというテーマで中学生へ向けて講演をされた2人。興味を持ってもらう入り口として、より多くの方に聞いてもらいたい内容だ。

ひとつ夢を叶えた彼らが、どう活動を広げるのか。これからの展開に目が離せない。

プロフィール

小笠原愛

小笠原愛

自然と人をつなぐ体験プログラムを行う「ちきゅうの学校」プロジェクト主宰。BSACスキンダイビングインストラクター。持続可能な地球を実現するため、ライター、スキンダイビングインストラクター、アースメディエイターなど、様々な顔を持ち発信・活動を続けている。元No.1六本木ホステスという異色の経歴を持つ。
ちきゅうの学校

関戸紀倫

関戸紀倫

自然写真家。フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、幼少期をフランスで過ごす。沖縄、オーストラリアでダイビングインストラクターとして活動後、一眼レフカメラを手にオーストラリアを放浪。以後、写真家として、水中写真と動画作品をメインに地球の美しさを発信し続けている。
●YouTube:KIRIN SEKITO

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PROFILE
海とスキューバダイビングの総合サイト・オーシャナ、つまりこのサイトの編集部です。

いろんなニュースや、オーシャナからのお知らせを発信しています。