人間に歯みがきをしてもらうクエが可愛いと話題 ~名古屋港水族館
名古屋港水族館で、飼育員に歯みがきをしてもらうクエが話題となっています。
一見、普通のクエですが、飼育員さんが寄ってくると…
そして
口をパカっと開けて、何かをおねだり。 普通は「エサがほしいのかな」って思いますが、このクエが求めているのはエサではないのです。
飼育員さんがエサをあげてもスルー。この子が求めているのは……
歯みがき!?
完全に気持ち良くなっちゃってますね。
なんとも可愛らしい。
さらに、飼育員さんが無視なんかすると……
水を飛ばして、かまってアピール!
一見、怖そうに見えるクエですが、こんなに可愛いらしい一面があるとは。
人は見かけによらないと言いますが、魚も同じなんですね。
しかし、ナポレオンフィッシュが人に懐いている姿はよく見かけますが、クエは珍しいかもしれません。
なにより、人の手による歯みがき。
動物ならたまに聞く話ですが、魚の歯みがきというのは初めて聞きました。
うーん。海中にいるのでいつも歯はある意味洗浄されているはず。
魚に歯みがきって必要なのでしょうか。
というか、そもそも魚も虫歯ってできるの?(笑)
そんな疑問や興味をぶつけるべく「名古屋港水族館」飼育担当の岡本仁(おかもとひとし)さんにお話を伺いました。
飼育担当の岡本仁さんに聞く! 歯みがきクエちゃんのあれこれ
まず、このような関係になったのはいつ頃からですか? キッカケはありますか?
岡本
このクエが搬入されたのは2014年10月末でした。最初は展示水槽ではなく、バックヤードの水槽で様子を見ながら飼育していましたが、搬入後1カ月ごろから、餌を与えた後も水面で口をあけていることがあり、なんとなく餌を与えるときに使うピンセットで歯や歯茎などをつついてみたことがきっかけです。また、歯ブラシを使いだしたのは1年ほど前ですが、たまたま展示水槽を掃除するために、水槽の縁に置いてあった歯ブラシを使ってみたことがきっかけです。ただ、もともと人の手で触られるほうが気に入っているようで、最近は歯ブラシでなでると嫌がることもしばしばあります。
このクエちゃんは、歯みがきされたいのではなく、犬が頭を撫でられるのが好きなように、岡本さんの手で口をマッサージしてほしいということですね。
ダイビングの世界では餌付けで魚が懐くのは珍しくないですが、このクエちゃんは餌もないのに、なぜ人に懐くのでしょうか?
岡本
本当の理由はわかりませんが、人間をホンソメワケベラと同じ様な存在と思っているのかもしれません。もともとホンソメワケベラのクリーニングも寄生虫を取り除くだけではなくマッサージ効果もあると言われており、人の手で触ることも同じような効果があるのかもしれません。おそらくマッサージによる癒しを飼育員へ求めているのではないでしょうか
ということは、このクエちゃんはホンソメワケベラのつつくようなマッサージよりも、人間の手のマッサージの方が気持ちいいじゃん! てなってしまったのかもしれないのですね。
ホンソメワケベラの仕事を人間に求めるクエ。
海の世界でまったく異なる種類の生き物同士が助け合って暮らすライフスタイルを「共生」といい、クマノミやイソギンチャク、ハゼとエビなどが有名です。
こちらのクエは、人と「共生」をしようとしているのかも!?
【注】 こちらのクエは飼育員の岡本さんに慣れていて、安全を確認してこのような触れ合いを行なっています。野生のクエは、口に手を入れて噛まれた事例もありますので、ダイバーの皆さんは、クエを見かけても絶対にマネをしないでくださいね。
【名古屋港水族館】
イルカやシャチ、ベルーガなど海棲ほ乳類とその進化の歴史を紹介する北館と、「南極への旅」をテーマに日本から南極に至るまでに出会う生き物たち(魚類、ウミガメ、ペンギンなど)を5つの水域に分けて紹介する南館から成る日本最大級の水族館です。
日本最大のプールで行われるイルカのパフォーマンスや、愛嬌たっぷりのベルーガの公開トレーニング、幻想的なマイワシのトルネードなど生き物の魅力を活かしたイベントを毎日開催。
2年前に新設したライブコーラル水槽では、生きたサンゴが作り出すカラフルで美しいサンゴ礁の世界を見ていただくことができます。
(撮影・情報提供協力 / 名古屋港水族館)
(構成・文/マンタ林典子)