ダイビング中にエアーが出なくなった場合の原因と対処法
ダイビング器材は、正常に壊れたとき、フェイルセーフといって、「安全側に壊れる=エアーが止まらず出続ける」ように作られています。
つまり、基本的には、レギュレーターはフリーフローするように、BCインフレーターはエアーが入り続けるようにできています。
※ごく僅かな例外もありますが、今回はトラブルの一つをご紹介することが目的なので、そこは省いてお話をさせて頂きます。
それなのに、「ダイビング中、エアーがこなくなったんです!!」とのお申し出が、これまでに数件ありました。
今日はその中で最も多い事例をご紹介します。
トラブルが起きたときの状況
海外でアルミタンクを使用してのダイビング中、水中で逆立ち姿勢になったとき。
※ヘッドファースト潜降をしたり、頭が下がりタンクバルブが下部になった状態
症状
- 呼吸しづらくなったり、一時的に呼吸ができなくなった。
- 吸う度に、残圧計の針が大きく振れ、十分な量の空気が吸えない。
- 口の中が少しヌルヌル粘つく感じがする。
原因
アルミタンク中に海水が浸入したり、真水が溜まるとアルミが腐食を起こし、ゲル状のアルミ酸化物(水酸化アルミが主成分)が多数発生します。
ダイビング中に逆立ち姿勢になり、タンクのバルブが下側になったときに、その異物がエアーに混じり、レギュレーターに流れ込みます。
タンクからくるエアーは、まずレギュレーターのフィルターを通過します。
フィルターは、ゴミや塵といった異物を取り除いて清潔なエアーをレギュレーター内部に送り込むための重要な部品です。
ゲル状のアルミ酸化物はたいへんな異物。
それを通過させるわけにはいかない!とフィルターがせき止めるわけです。
どんどん異物が流れ込んできた場合、フィルターは目詰まりを起こし、遂に限界がきたときには、フィルターの網目は異物で塞がれ、エアーの通り道もなくなってしまいます。
エアーがこなくなった原因は、“フィルターの目詰まり”です。
器材が悪いからエアーが出なくなるのではありません。
むしろ器材が正しいですよね、汚染空気を呼吸させない為に機能しているわけで。
たまたま当たってしまった、内部が腐食したアルミタンクのせいです。
トラブルが起きたときの対処方法
とりあえず落ち着きましょう(なかなか難しいことですが)。
水平、または頭を上にした姿勢に戻ってゆっくりと吸えば、少しずつ呼吸できるように
なる場合があります。
上記のような症状があった場合、または少しでも違和感を感じたら直ちにダイビングを中止し、バディと一緒に浮上してください(ダイビング前であれば、その器材でのダイビングは中止して点検に出してください)。
予防方法
セッティング前に、アルミタンクのバルブを真下にし、バルブを少し開いて“空気しか出てこない、水が出てこない”ことを確認するのがベストですが、重いタンクをひっくり返すことはとても大変なこと。
それならせめてでも、タンク内のエアーのチェック、必ず自分自身で毎回行いましょう。
現地のスタッフがセッティングをしてくれるから…というお話もよくうかがのですが、もし心配であれば、ご自身でセッティングされるのもひとつかもしれません。
今のところ、このようなトラブルが起きたという報告を受けているのは主に海外です。
点検不十分なアルミタンクを使用しているダイビングサービスで、この様なトラブルが発生しているようです。
とても稀なケースなので、過剰に心配して頂きたくはないのですが、安全に潜るための知識として、頭の片隅に残しておいていただけたらと思います。
器材の実物ですが、白いゲル状(乾くと白い粉状)の付着物が見られました。
「定期的な器材の点検・オーバーホール」、「バディダイビングの徹底」が、改めてとても重要なことだと思います。
“過信“や”油断“がトラブルの引き金になりますのでどうかご注意いただき、安全なダイビングをお楽しみください。