注意! 間違ったダイビング器材のお手入れ法

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神子元島のダイビング(撮影:寺山英樹)

器材のお手入れ方法・保管方法など、インストラクターから教わる以外にみなさまはどのようなものを参考にされているでしょうか?

各指導団体の器材スペシャリティーのマニュアルであったり、ダイビング雑誌の記事などを参考になさっておられるのではないでしょうか。

自身も器材の扱いについて執筆する中、さまざまな出版物を拝見し、器材にとって、もっと良い取り扱いの仕方があると思うものがございました。

今回は、その中からいくつかご紹介したいと思います。

「BCを逆さまにして内部の水を抜く」がダメなBC

器材の使用後、BCジャケット内部に入った水を排出される際、どこから抜いておられますか?

このようにインフレーターの排気ボタンを押して抜いていないでしょうか?
間違った器材メンテ(提供:高尾)

「BCDを逆さまにして内部から海水を抜く」と書いてありますが、実は、そうしてよいメーカーの器材とよくないメーカーの器材があります。 

写真のS-PROのBCDは、給排気操作部がAIR2であってもバランスインフレーターであっても、このようにインフレーターから水を抜くと、海水に混じりBCジャケット内に入り込んだゴミや砂粒が給気側に入り、BCのエアーが入りっ放しになるというトラブルを起こす原因になりうります。 

肩や腰にこのような排気バルブがついていますよね。

間違った器材メンテ(提供:高尾)

このバルブを下に向け、地面と並行にして、紐を引いて水を抜くようにしてください。

ちなみにTUSAもATOMICに関しても同じです。

AQUALUNG(SEAQUEST)、NDS、SASはインフレーターの排気ボタンから水を抜いていただいても大丈夫です。
もちろん排気バルブからでもOKですので、やりやすい方を用いてください。

インフレーターという名称は同じですが、メーカーごとに構造が異なるので、マイギアにとって適切な方法を用いていただくと、器材のコンディションをよりよく保つことができるようになりますよ。

「レギュを干す時はダストキャップを外す」は大間違い

次は、すべてのレギュレーターに共通していえることです。

間違った器材メンテ(提供:高尾)

「GOOD」と○がついていますが、本当にそうでしょうか?
理論的に考えてみれば、「BAD」であり、×だといえます。

“開けておいたら空気に触れて乾燥しやすい“とイメージされる方が多々おられますが考えてみてください。
ダイビングで使用するタンクの中のエアーの湿度は何%でしょうか?
  
およそ4%未満である、乾燥した空気が充填されていますよね。
すなわち1stステージ内部を通過する空気は非常に乾燥した空気です。

一方、私たちが生活する空間の湿度は?

たとえば日本であれば平均湿度60~70%、梅雨時期になると80%を超えますよね。 
湿気は高い方から低い方に流れ込む。

だったら、ダストキャップを開けたまま置いておくことは、器材の内部を乾燥させるのではなく、反対に湿度を取り込むことになるといえると思います。 

“内部までしっかり乾かす”とありますが、どういう想定でそう推奨されているのか私には意図が理解しかねます。
構造上、内部が濡れることはないですよね。

もし、結露を懸念されてのことであれば、結露する条件下でレギュレーターを使用した場合は、ダイビング終了後に、常温環境でタンクに繋いでパージボタンを押し、エアーを出し続けていただけばいいと思います。

通常のレジャーダイビングをする域ではなかなか無いシチュエーションではありますが。

もし、水没させてしまったという想定であれば、海水なら潮を、水槽の水ならゴミや砂を取り除くために1stステージを分解して洗浄乾燥しないと、干しただけで放置していたら作動不良や金属腐食で修理を要することになってしまいます。

ダストキャップを開けるのは器材にセッティングするとき、オフティングするとき、のみ。
それ以外のときはダストキャップをしておくことが賢明です。 

そうすれば修理やオーバーホール時に必要以上の部品交換をすることを避けることができますよ。

簡単なことですので、ぜひ実践してください。

つけ置きしてはいけないレギュレーター

最後は特殊な例なのですが、ATOMICレギュレーターをご使用の方にご注意いただきたい点です。

器材の使用後に洗浄される際、どのように洗っておられますか?

間違った器材メンテ(提供:高尾)

ATOMICの2ndステージは他のレギュレーターの2ndステージと構造が異なります。
この記事のまま真似をするとレギュレーターが水没する可能性があります。

ATOMICの2ndステージは、シートセービングオリフィスといって、圧をかけなければ(タンクにつないでエアーを出した状態でなければ)、LPシートとオリフィスの間に隙間があるため、そこから水が入ります。

大きな水槽であればタンクにつないでバルブを開いた状態(圧がかかった状態)でつけ込むこともできると思いますが、あまり現実的な話ではありませんよね。

2ndステージは水槽につけ込まず、マウスピースの口から水が入らないように軽く流水で流すにとどめておいていただくことが無難です。
あとは定期的にオーバーホールに出していただければ、清潔に使っていただけますのでご安心ください。

これに関してもインストラクターや販売店の方(プロ)であっても、そのことをご存じない方がたくさんおられます。
ATOMICユーザーの方はご自身で注意して扱うようになさってくださいね。

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PROFILE
大学在学中、グアムで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、卒業と同時にダイビングの会社に就職。
その後、数店舗の都市型ダイビングショップで、スクールや器材販売、ツアーの企画・引率をし、2000年にインストラクターに。

数メーカーのメンテナンス講習を受けた後、ダイビング器材オーバーホール専門店「アイバディ」に10年間勤務。
現在はフリーインストラクターとして活動する傍ら、ダイビング器材・オーバーホールについて執筆活動中。

「器材の中身は見えない。だから伝えねばならない」がモットー。

ダイビング器材の中身は見えない。だから伝えねばならない~オーバーホールの現場から~ | オーシャナ
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