障がいがある人も海遊び!広島の江田島でユニバーサルなマリンフェスを開催

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鹿児島県大島郡瀬戸内町にある障がい者と健常者が共に安心・安全に楽しめるマリンスポーツ総合施設「ゼログラヴィティ」を運営する一般社団法人・ゼログラヴィティ(以下、ゼログラヴィティ)が、全国のマリンアクティビティ施設へ向けたユニバーサルデザイン導入支援プロジェクトを全国で行っている。

ocean+αでは本プロジェクトの活動を度々取り上げてきたが、今回は2024年6月16日(日)に広島県江田島市の長瀬海岸にて行われたユニバーサル「海で遊ぼう」マリンフェスをご紹介。

過去に取り上げてきた活動の記事一覧

長瀬海岸は、穏やかな波と透明度の高い水質で、夏にはたくさんの海水浴客で賑わう人口海浜(写真:江田島市役所ホームページより)

長瀬海岸は、穏やかな波と透明度の高い水質で、夏にはたくさんの海水浴客で賑わう人口海浜(写真:江田島市役所ホームページより)

【ゼログラヴィティが推し進める“ユニバーサルデザイン”とは】
障がいの有無、国籍、年齢にかかわらず、誰にとっても海での遊びや学びが日常となるデザイン(設計)のこと。ゼログラヴィティでは、SDGs達成の原則にもある「誰一人取り残さない(leave no one behind)」という世界を実現するため、このユニバーサルデザインに則って障がい者向けのプログラムを作成したり、マリンアクティビティスタッフへの研修、設備導入などを実施している。
ゼログラヴィティが、ユニバーサルデザイン導入支援プロジェクトを本格的にスタートするきっかけとなったのは、初年度に行った障がい者に対する意識調査。そこで明らかになったのは、障がい者の70%以上が「障がい者はマリンアクティビティに参加できない」と思っていること。一方で半数以上がマリンアクティビティに興味を持っていること。実際にマリンアクティビティを体験された障がい者の方の90%以上が「世界が変わった」、「何事にも挑戦する意欲がわいた」と感じていることである。この結果を踏まえ、誰もがマリンアクティビティを楽しめる環境づくりをする強い必要性を再認識した。

江田島でのユニバーサルデザイン導入支援プロジェクトの過程

ここ江田島は、豊かな自然や透明度の高い海が魅力の瀬戸内海に浮かぶ島。マリンアクティビティも盛んに行われており、2022年からユニバーサルデザイン導入支援プロジェクトに取り組んでいる。2023年には、江田島やその州へ地域のアクティビティ提供者などに向けた座学研修、加えてクローズドなマリンアクティビティの実践研修(体験イベント)も行った。

障がいの有無は関係ない!広島の江田島でユニバーサルなマリンレジャーイベント開催

参加者は大満足!ユニバーサル「海で遊ぼう」マリンフェスの様子

本イベントが行われたのは、江田島で一番穏やかで、地元のカヌー愛好者たちもお墨付きの長瀬海岸。マリンアクティビティに初参加の方、障がいがある方にとって最適な環境だ。用意されたアクティビティは、①クリア・カヤック、②ビッグサップ、③サップ、④ビーチスター(※)の4つ(下図参照)。事前申し込み制で、9時半〜15時半の間で開催され、障がいの有無関係なく、どなたでも参加可能というスタイルで実施した。

※ビーチでの衣装を想定された三輪車の水陸両用車いす

イベント当日。梅雨どきの6月中旬だったにも関わらず、当日は晴天に恵まれ、絶好のマリンアクティビティ日和に!さまざまな障がいを持つ14名を含む総勢65名が会場に集まった!

前日の準備の際に海ごみなどを取り除いた砂浜には、車いすが通るための専用のマットを敷き、バリアフリーに

前日の準備の際に海ごみなどを取り除いた砂浜には、車いすが通るための専用のマットを敷き、バリアフリーに

天候も良く、笑顔の参加者たち

天候も良く、笑顔の参加者たち

マリンアクティビティの中でも特に多くの方に楽しんでいただけたのは、船全体が透明で水中が覗けるクリアカヤック。クリアカヤックは、重度の障がいがある方でも乗船しやすく、今まで見たことがない海の中が覗ける素晴らしいアクティビティだ。安定性も優れてため気軽に安心して楽しみやすく、初挑戦する体験者本人とそのご家族も大満足!さらには、周りでサポートしていたスタッフたちも、その様子を見て感動!

水中を覗くことができるクリアカヤック

水中を覗くことができるクリアカヤック

ほかには、ビーチスターも人気だった。砂浜の利用にとどまらず、座ったままで、水に入り、浮かぶことができるので、心地よい波の揺れの気持ちよさを楽しんでいた様子。

ビーチスターに乗って、水中散歩に挑戦

ビーチスターに乗って、水中散歩に挑戦

イベント後に実施した参加者アンケートでは、「海とは、もう縁がないと思っていたので…、生きていて良かった!幸せでした!」、「手厚いサポートのおかげで、一緒に参加した車いすユーザーの友達と楽しむことができて感謝いっぱいのイベントでした」、「小さい子どもでも、障がいがあっても、水が苦手でも、初めてでも、楽しめました!」と、非常に充実した時間を過ごしたことがわかるコメントが寄せられた。

また、体験者本人だけでなく、サポートスタッフも貴重な機会に携わり、障がい者がマリンアクティビティに挑戦する姿や心から楽しむ姿を間近で見守り、そこから得た気づきは大きかったよう。この活動を継続することで、地域における障がい者への意識改革やマリンアクティビティの価値を高めていくに違いない。

障がいの有無、参加者、サポートスタッフ関係なく、全員が楽しめるイベントとなった

障がいの有無、参加者、サポートスタッフ関係なく、全員が楽しめるイベントとなった

本イベントの主催でユニバーサルコーディネータである上岡氏は、「江田島では、今後も障がい者がマリンアクティビティを楽しめるようなを環境を目指すべく、本イベントを毎年継続的に開催して、江田島の穏やかで美しい海とユニバーサルな取り組みを全国に伝えていきたい」と振り返った。

また、江田島での今後の展望については、「継続して実施するためには、サポート人材の確保と参加者確保という面で開催の周知が鍵となります。行政機関による補助金の支援や自治体と連携を深めることは重要事項。実施が叶えば、参加者やスタッフから口コミで広がり、どんどん大きなイベントに発展する流れが生まれます。また、江田島は、島ならではの人の温かさも感じることができるので、マリンアクティビティから得られる体験に深みと満足度をプラスできるような場所に発展すると期待しています。島全体の魅力を感じるために全国から、人が訪れるような場所になると思います」と話した。

マリンアクティビティを諦めていた障がい者やその家族、さらにはサポートスタッフや地域にとって、本イベントが与える影響はかなり大きい。今後も毎年継続して開催されることに期待したい。

障がいの有無は関係ない!広島の江田島でユニバーサルなマリンレジャーイベント開催

上岡央子
2010年からユニバーサルコーディネーターとして活動。店舗のユニバーサル設計や福祉住環境デザインなど、バリアフリーの観点から発展したユニバーサル化を提唱。ハード面だけでなくソフト面のバリアフリー化も重要と考え、人材育成として研修会なども実施している。ハード面の整備ではなくソフト面がポイントとなってくる自然相手の本プロジェクトの主旨に共感しスタッフ指導担当としてプロジェクトに参加している。
ゼログラヴィティ

障がい者と健常者が共に安心・安全に楽しめるマリンスポーツ総合施設として、2016年、奄美大島瀬戸内町清水に 「ゼログラヴィティ清水ヴィラ」が設立。宿泊施設をはじめ、自社船、プールなど全てがバリアフリー設計となっており、スノーケリング、スキューバダイビング、カヤック、クルージング、ホエールウォッチングなど、奄美の海で の豊富なマリンアクティビティを誰もが安心して楽しめる設備とサービスが整っている。「旅と海遊びで夢と希望を作り出す」をコンセプトに、日本のダイビング業界におけるユニバーサルデザインの普及を推進しています。

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日本財団の補助事業により実現
本プログラムは、日本財団の補助事業により実現。「バリアフリーマリンレジャー事業」は、 日本財団が推進する「海と日本PROJECT」の取組の一環として行っており、スサミトラベルカウンターFRONT110おけるユニバーサルデザインの導入のための補助として、一施設の工事の実施および機材などが寄贈された。
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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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