中村卓哉 “写真絵本”発売記念インタビュー
第10回:「わすれたくない海のこと 辺野古・大浦湾の山・川・海」作品紹介
中村卓哉さんの“写真絵本”「わすれたくない海のこと 辺野古・大浦湾の山・川・海」インタビュー、最終回はその中からいくつかの写真をご紹介します。
中村卓哉さんご本人によるキャプション(解説)つきです。
ティマ川の上流では澄み切った川の流れがとどまる事無く流れていく。
豊富な山からの栄養分を集めながらやがて広い海へと注がれて行く。
キラキラと輝く星空の下のマングローブの林。
潮が満ちると、すぐ近くまできていた海が、川をむかえいれにきていた。
川から海へと繋ぐ命のバトンは夜間も終わりなしに受け渡されている。
干潟の砂の中から微生物を濾しとって食べているミナミコメツキガニ。
その後出来る無数の小さな砂団子は潮が満ちるとはじけて水中に酸素を提供する。
「天使の羽」とも言われるウミエラが汽水域に近い砂地に多く生息している。
変わった形をしているが実はサンゴと同じ腔腸動物の仲間である。
赤土が入り込みやすい泥場に生きるスイショウガイにキクメイシモドキというサンゴが宿っている姿を見かける。
「歩くサンゴ」ともいわれ、泥をかぶると生きていけないキクメイシモドキにとってこの場所に適応する為の知恵なのかもしれない。
砂地を這うスイショウガイの足跡。
沖縄では珍しく水深3メートルの浅瀬に数多く生息するトウアカクマノミ。
彼等の表情を狙って夢中で撮影していたが、長時間カメラを向けている私に飽きたのか大きなアクビを何度もしていた。
陽光に照らされた巨大なアオサンゴのシルエットが浮かび上がった。
山脈の様に力強くそびえ立ち、幾重にも連なったサンゴの枝は太陽にむかってすくすくと伸びていた。
とてつもなく長い時間をかけて形づくられた命の造形は神々しさをも感じた。
以上、中村卓哉さんによる作品紹介でした。
◇取材後記◇
中村卓哉さんのインタビュー、いかがでしたでしょうか。
幼少の頃からお話をうかがったので、かなり長くなってしまいました。
お話をしていながら感じたのは、水中カメラマンとしての“謙虚さ”。
特に「今は少し慣れれば水中写真は誰でも撮れる」、「大御所や先生になりたいとは思わないので、みなさんと一緒に海を伝える活動をしていきたい」というお話は、中村卓哉さんならではのしなやかな姿勢がよく表れている言葉でした。
もちろん水中写真という「表現」を職業にされている以上、こだわりというのもとても大切な要素かと思います。
ただ、中村卓哉さんからはそれとはまた違った“やわらかな強靭さ”を感じました。
それは辺野古・大浦湾の海が様々なものと関わり合いながらもそれらが混じり合った場所として存在しているのと、よく似ているようにも思えます。
快くインタビューを引き受けてくださった中村卓哉さん、ありがとうございました。
なお、中村卓哉さんのブログでも、今回のインタビューの模様を書いてくださいました。
よろしければ、こちらもぜひご覧ください。