女川「たげな」の海がオープン!~北のアイドルと“あべこべ”を楽しむ海~
北のめんこいスーパーアイドル
先日の記事で紹介したとおり、宮城県は女川町「竹の浦」、通称、たげなの海がオープンし、8月30、31日と潜ってきました。
これまでダイビングエリアの女川として知られていたのは、ビーチスポット「石浜」ですが、今回オープンした「たげな」はボートダイビング。
港から5分ほどに位置する「アコ島」と「弁天島」の2つのポイントがあり、共に水深10メートル前後でのんびりまったり楽しむスタイルです。
水中の見どころは何と言っても、北のスーパーアイドル・クチバシカジカ。
8月は水温20度と宮城では最も水温の高い時期で、まだ壁に引っ込んでいますが、それでも壁の中をのぞくと、名前にもなっているクチバシ(のような吻)と美しいグリーンの目、顔の特徴的な模様を見ることができます。
さらに、カジカ類と双璧で人気のギンポ類の中でも特に人気の高いフサギンポを探していると、なんと、クチバシカジカと2ショット!
貴重なシーンに遭遇できました。
ダイバー偏差値を試される“あべこべ”な海
ブイから垂れるロープを手繰って潜降し、島に向かって泳いでいると、なんか変……。
一見すると、伊豆や湘南の海で見る風景ですが、生物の生息環境に大きく作用する水温が違うので、当然、生物たちも状況が異なります。
10メートルもないところで、伊豆では深場にいるはずのリュウグウハゼがやたらめったに群れていたり、レアであるはずのウミウシがいっぱいたり……そうかと思えば、ガイドたちは、伊豆では売るほどいるアオウミウシやソラスズメダイに驚いたり。何だか、いろいろあべこべです(笑)。
ダイビングは、単純に、その浮遊感や水の感触、美しい透明度や景色を楽しむのが王道といえますが、一方で、“持ち込むほどおもしろい”遊びでもあります。
持ち込むものは、物語、知識、カメラ、などなど。
物語や知識とは、例えば、いつもその海にいるはずの魚を知っていればこそ、潮に乗ってやってきたいつもはいない魚に驚き感動できるのです。
知らなければ、いつもいる魚もいつもはいない魚もただの同じ魚でしょう。
つまり、北の海でソラスズメダイを見ることは、渋谷のスクランブル交差点でマサイ族を見るようなもの。
伊豆で見ても、アフリカで見たのと同じで驚きはありません(ちょっと例えがあれですか……)。
そういう意味では、伊豆を始めとする本州のひとつの海を潜って、自分の中に座標軸を持っているダイバー(下記の記事参照)は間違いなく楽しめる海でしょう。
知識や経験があればあるほどおもしろい海です。
また、カメラを持ち込むダイバーにもこの海はオススメ。
まず、水深も浅く穏やかな海で、被写体となる小さい生物たちもあまり動かないので落ち着いて撮影できます。
また、例えば、同じギンポでも、北の海らしいきれいな海藻などを背景に入れることができるので、撮っていて飽きることがありません。
同行のむらいさちカメラマンは「おもしろいね~おもしろいね~」と子供のように興奮して、1時間以上潜っていました。
見たこともない北のアイドルに興奮し、いつもの海とのあべこべを楽しむ。
1度で2度おいしい「たげな」の海は、水温が下がるこれからが本格シーズンです。
※詳細は今月、ウェブマガジンで素敵な写真と共にご紹介します。
(撮影/むらいさち)
■こうしてダイビングエリアが再び潜れるようになるまでには、多くのダイバーたちの尽力があります。
この機会に振り返ってみました。