スリランカでニタリクジラの貴重な水中撮影に成功
スリランカ北東部海岸で見た鯨類の中の一つ、ニタリクジラ。(学名 Balaenoptera brydei)は、クジラ目ヒゲクジラ亜目に属する。
日本では、土佐湾に通年生息していることでも知られていて、ウォッチングの対象にもなっている。
今回の滞在では、5日間目撃。
しかし、その多くが透明度の悪い、陸に近い海域にいたために、なかなか水中での撮影は困難だった。
しかも、ガイドのメナカも、最初は「若いシロナガスクジラ」と僕らに紹介していたように、この海域にニタリクジラがいることを知らなかったようだ。
僕らも、そのような紹介をされつつも、どうも納得がいかなくて、どうにか水中での撮影に成功して、ネット検索で調べたり、クジラに詳しい知人などに写真を確認してもらい、ニタリクジラであることを確証した。
その決め手となったのが、噴気口から吻にかけて3本の隆起線があること。
この特徴はニタリクジラにのみある。
元々、ニタリクジラは、イワシクジラと混同とされて捕獲されていた。
ナガスクジラに似た噴気をあげ、背びれも似ていることなどから、「似たり」、「ニタリクジラ」と名前が付けられたということなので、まあ船上からでは誤認しても仕方無いのかもしれない。
しかし、僕らからすると、体色も黒いし、噴気口から背びれまでの距離も違うし、背びれの形も違うので、最初から違うクジラだとは思っていたけど。
また、Wikipediaによると、日本ではカツオの群れと行動を共にする事が知られているとのことだが、ここのニタリクジラも、カツオの群れに先導されるかのように、一緒に泳いでいた。
証拠写真程度だけど、これがカツオと一緒に泳ぐニタリクジラの写真。
5日目撃したうちの1回は、親子だった。
しかも子どもの胴体部分には、ロープのようなものが巻き付いていた。
撮影を試みたが、船上からでも僕らの接近を嫌がって撮影はできなかった。
これはあくまで、自分の憶測なので断定はできないのだけど、この海域では、外洋での定置網が盛んに行なわれていて、あちこちに長い定置網が設置されていた。
長いものでは3キロもの長さになるものもあるそうだ。
これが、クジラの泳ぐ海域にも沢山設置されているので、「絡まってもおかしくなさそうだな〜」と思いながら、そんな前例は無いのか質問してみたら、「定置の深さは、せいぜい4〜5mだから、クジラが絡むことは無いし、今まで聞いたことは無い」とは言っていた。なるほど・・・。
トンガで毎年ザトウクジラスイムを行なっていて、ある年身体中に釣り糸が絡まったクジラと遭遇した事がある。
逃れようともがいたせいか、糸が身体に食い込んで、皮膚が引きちぎられて、傷口には沢山のクジラジラミが発生していた。
おまけに、弱ったそのクジラの死を待っているかのように、何匹ものサメたちがその後を追っていた。タイガーシャークも数匹目撃した。
その写真を地元のカフェで見ていたら、白人の女性が「これは地元漁師の仕掛けたカメ獲り用の網に違いない、抗議してこの網漁を止めさたいから、写真をちょうだい!」と名前も名乗らずにヒステリックにUSBメモリーを突きつけられた。
もちろん、写真はあげなかったけど。
実際には、その網漁に使うようなものは、この写真には写っていないとトンガ人から言われた。
しかも、カメ獲り用の網は、クジラが入って来ないような浅い海域に設置しているので、クジラが絡まる可能性は低いと聞いた。
一時的な感情と憶測だけで判断して、確証も無いのに、それが原因だと決めつけてしまうのは、悪い言い方をすると「魔女狩り」に近い感覚を感じる。
僕が感じた事もあくまで憶測に過ぎず、絡まったクジラの写真も撮影できていないし、何も調べていないので、ここで漁師たちの行なっている定置網を引き合いに出すのはまずいのかもしれない。
このことに関しては、もっとリサーチが必要だ。
クジラやイルカたちと常に一番身近にいるのは、トンガでもここ、スリランカでも漁師たちだ。
彼らが生きるために細々と行なっている漁でさえ、「悪」と決めつけてやり玉に上げるのであれば、彼らの生活の事も考えた発想をして解決策を導いてあげるべきだよなと感じる。
一枚の写真というのは、それを見た人の「感情」を間違った方向へと一人歩きしさせてしまう可能性があることも、常に考えに入れておかなければいけない。