岡本・木下選手が金メダル! 日本女子が全種目メダル獲得のフリーダイビング世界大会レポート
2015年9月11日から20日まで、フリーダイビング海洋種目個人戦世界大会、「2015 AIDA Depth World Championships」がキプロス共和国のリマソール(Limassol, lemesos)にて開催されました。
世界各国から28カ国、150名以上の選手が集結する2年に一度の世界選手権。
日本からは男女11名の代表選手が参加しました。
この大会では3種目の競技が競われ、並みいる世界の強豪選手の中、日本女子選手は全種目でメダル獲得、という快挙を成し遂げました!
■コンンスタント・ウェイト・ウィズフィン
(略称:CWT・・フィンをつけて潜る競技)
岡本美鈴選手 90m 金メダル
木下 紗由里選手 88m 銀メダル
■コンスタント・ノーフィン
(略称:CNF・・フィンをつけず平泳ぎで潜る競技)
木下 紗由里選手 58m 金メダル
■フリーイマージョン
(略称:FIM・・ロープを手繰って海に潜る競技)
廣瀬花子選手 76m 銀メダル
岡本美鈴選手 70m 銅メダル
メダルを獲得した各選手のコメント
■岡本美鈴選手
・コンンスタント・ウェイト・ウィズフィン 90m 金メダル
・フリーイマージョン 70m 銅メダル
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ナタリアから託された金メダル。これからも彼女を追い続けます
今回は悪い海況や10年に一度の砂嵐など、自分の思うような練習ができず、調子の良い時の自分と比べて自信を失いかけたこともありました。
本番前日の練習で大深度の感触がとても良く、安全圏内で最大限可能と思える申告を行ないました。
しかし、本番当日は予想以上に海況が悪く、緊張も恐怖感も最高潮。このダイブは今までの競技生活の中で一番厳しい状況でのディープダイブでした。
90mではボトムプレートを少し通り過ぎてしまうという失敗をしてしまいましたが、無事にホワイトカードを取る事ができました。
絶好調の木下選手と花子選手から良い刺激をもらい、皆さまから頂いた応援に心を支えられ、コーチの夫にサポートしてもらい、何とか心を保ち、いつものダイブができました。
自分の競技に支障が出てしまうくらい親身にコーチをしてくれた夫、日頃から応援下さったスポンサーのスズキマリン様、岡本美鈴サポーターズクラブの皆様、支援
関係者の皆様、家族友人、ダイバー仲間の皆様、そして共に全力を尽した日本代表選手の皆さん、日本から応援くださった皆様、心の力をありがとうございました、本当に感謝しています。
また、世界選手権前に急逝してしまった女子チャンピオンのナタリア選手がいない大会は初めてでした。
彼女の事故(※)は本当にショックで今まで言葉にできません。
金メダルは自分が頂いたものではありますが、彼女から何か託されたような気もします。
ナタリアは本当に手の届かない遠い存在になってしまった……。
今でも心に穴があいたような気持ちです。それでもこれからも彼女を想い追いかけ続けます。
※
■木下 紗由里選手
コンスタント・ノーフィン 58m 金メダル
コンンスタント・ウェイト・ウィズフィン 88m 銀メダル
特別賞ナタリア・モルチャノバ賞(※)受賞
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「悪条件の中で出せた結果に満足、今後の目標は全種目世界記録!」
コンスタントノーフィンは流れ、波の悪条件を考慮して失敗しても絶対行ける最大の深度58mにしました。
ノーフィンは大会初日だったこと、BOが多かったこと、コンディションが悪かったことがあり、かなり緊張していました。
ダイブはリラックスして潜れず、また流れもあり体はかなり疲労しました。
感触はあまり良いものではありませんでしたが、どんな時でここまではできるという自信になりました。
また、コンスタントはプレ大会の85mの感触からあと3mは行けると思ったので88mを申告しました。
コンスタントも同じく条件の悪い中で、今まで感じたことのない疲労感と体がビックリしていると感じました。
初めての世界選手権だったことの緊張感、悪条件への不安感、を自分の味方につけるのが難しかったです。
この大会の運営も軌道に乗るまでは選手にとってとても良かったとはいえず、そんな中でも自分の最大の力を出す選手になりたいと思いました。
今後の目標は全種目世界記録です!
そして何よりも、どんな大会でもどんな海でもその瞬間を楽しめる選手でありたいです。
※
■廣瀬花子選手
フリーイマージョン 76m 銀メダル
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「海が主導権を握る戦いの難しさと面白さを感じた。来年は団体戦人魚JAPANで金メダルが目標!」
フリーイマージョンは経験が浅く、ある意味まだまだ挑戦できる分野でした。
ワクワクしながら大きく伸ばすことも考えました。
でも、この種目は大会最終日。
やっぱり最後の種目は必ずきっちりとホワイトカードをとって笑顔で終りたいと思いました。
「必ず成功してベスト更新!」と、前日のトレーニングで潜っていた75mから1mだけ伸ばした深度申告を決めました。
申告した時にはメダルのことは全く考えていませんでしたが、スタートリスト(他選手の申告深度)を見て、成功すれば3位に入ることが分かってからは「あ、これは絶対はずせないな」という気持ちになり、かなり集中力が復活した状態で潜れたと思います。
慣れない種目でかなり疲れて浮上しましたが、ホワイトが出たときは本当に嬉しくて、日本に、応援してくれてるみんなにお土産ができてよかった!とホッとしました。
本命だったCWTではメダルを狙うというよりは、今大会の目標としてきた90mを成功させたい気持ちが強かったので、自分の挑戦心のままに90mを申告しました。
でも、本番までのトレーニングで潜りたかった深度がとれなかったこともあり、少し自分を信じきれていなかったようです。
前日から今まで感じたことのなかったネガティブな気持ちと戦ったり、緊張で夜眠れなかったり。
当日ダイブが始まってから途中でアーリーターンして帰ってくるまで、ずっと緊張していて、目の前のやるべき事への集中ができていなかったと思います。
浮上中はロープを見ながら「なんでできなかったか」反省タイムを過ごして上がってきました。
今大会は海洋3種目にエントリーした初の世界選手権でしたが、海が主導権を握る戦いの難しさと面白さを改めて感じながら、新しい自分も知る事になる経験ができました。
今後のトレーニングが楽しみで、いつでも迷わずに潜れるように、早くもっと練習したいです!
そして来年は団体戦、プールの種目もベストを伸ばして、また人魚JAPANで金メダルをとることが目標です!!
※
これまで団体戦でも金メダル、銀メダルを獲得して来た日本女子選手達は個人戦でも大活躍。
日本人選手はチームワークの良さも世界から賞賛されました。
エースの岡本美鈴さんを筆頭に快進撃の続く日本代表チーム。
今後のますますの活躍にご期待下さい!
(※)ナタリア・モルチャノバ選手について
海洋、プールとも全種において驚異的な世界記録を保持していたロシアの女性フリーダイバー。
今年8月にスペイン沖の海で行方不明になる。
フリーダイビング界は衝撃とともに大きな悲しみに包まれ、今大会でも追悼式が執り行われた。
(インタビュー・文章/武藤由紀)
フリーダイバー。自身も今大会に代表選手として参加、前哨戦にあたるプレ大会でCWT-60mの自己新記録を達成した。