できること。潜ること。 @大瀬崎②
1本目は外海「柵下」。
雲ひとつない真っ青な空は澄み渡り、
富士がかぶっている真っ白な雪がよく映えている。
ばかりか、この日はアルプスの山々も青い空にくっきり浮かんでいる。
富士をバックにエントリー。
降り注ぐ陽光は、水の屈折を通して柱となり、
スポットライトのように水底を照らす。
キンギョハナダイの橙色が散らばっていて奇麗だ。
この1週間の重苦しい気持ちがスッと晴れる。
いや〜ダイビングっていいな〜、しみじみ。
やはり、ダイバーにできることは、潜ること。
予定では水深30m手前まで一気に潜り、
そこから徐々に浅場へ向かう予定だったが、浅瀬の砂地で中野さんが見つけた
メイタガレイの赤ちゃんのかわいさに思わずロックオン。
小っさ!
中野さんにうながされ、再び深場を目指す。
それにしても、慶松さんの水中での身のこなしはただ事ではない。
うまい人の特徴は、動きがゆったり。
僕は〝懐の広い潜り方〟と言っていて、究極がクジラなわけだが、
水平姿勢を崩さず、小さい動きでスゥ〜っと移動していく泳ぎ方は、
落ち着きなくキョロキョロしている自分と対照的……。
一気に深場へ行かねばならないのに、今度は砂地でセミホウボウのペアを発見。
遊びたい。チラッと中野さんを見ると、目で「ちょっとなら、いいよ」と。
わーい。
促されて深場を目指す。
やっと30㍍付近に到着。しかし、
スミゾメミノウミウシとアナハゼspをちゃちゃっと撮ったらすぐにDECOの限界。
砂地で道草を食い過ぎたせい……。
すぐに引き返す。
僕と中野さんで、交互にちゃちゃっと写真を撮りながら帰るのだが、
後で写真を比べると、嫌になるくらいの差。
まあ、中野さん、水中写真家でもあるからな、と自分に言い聞かせる。
イロウミウシsp(左が自分で右が中野さん)
サラサウミウシ(やっぱり左が自分で右が中野さん)
浅場に来ると、中野さんが「これを撮るとおもしろいですよ」と海藻を指す。
確かにファインダーをのぞいてみると、花のようでおもしろい。
でも、やっぱり同じものを撮っても差が激しい……。
カギケノリ(そりゃ左が自分で右が中野さん)
さらに浅場を目指そうとすると、慶松さんが「ちょっと待て」とサイン。
水深10㍍でディープストップ。
最大水深から徐々に水深を上げていくという予定を、
道草して、最大水深から慌てて水深を下げるという、
ダイコン上はOKでも、最もよくない潜り方をしてしまった僕には、
とても効果的だ……。
その後、5mでも安全停止をし、海底をはいつくばるようにゆっくり浮上。
中野さんの写真はさすがだし、慶松さんの潜り方もさすがで、
自分だけが今イチだが、久し振りのダイビングは気持ちよく、
心がスゥっと軽くなったのでした。
(続く)