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奄美大島でザトウクジラの親子と1年ぶりに再会⁉ 奇跡のような“ロマンチック体験”に感動!閲覧無制限

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現地からレポート
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こんにちは、水中写真家の上出俊作です。

2月の初旬から3月の初旬にかけて、奄美大島でザトウクジラの撮影とガイドをしてきました。

毎日のように海に出ていたので、お伝えしたいことも紹介したい写真もたくさんあるのですが、今日はその中からひとつ、僕にとって印象深かった話をお届けします。

奄美初日に出会ったシングルのクジラ。30回以上ブリーチしていました。

奄美初日に出会ったシングルのクジラ。30回以上ブリーチしていました。

昨年出会った個体と再会!?
“白い胸ビレ”を持つザトウクジラ

2月下旬のある日、今にも雨が降り出しそうな朝。

与路(ヨロ)島と請(ウケ)島の間くらいだったでしょうか。大人2頭と思われるクジラを発見しました。
※奄美大島の南に加計呂麻島があり、そのさらに南に与路島と請島があります。

「発見しました」と言うとあたかも僕が見つけたかのようですが、見つけてくれたのは船長とスタッフさんです……

比較的ゆっくり泳いでいるようだったので、しばらく船上から様子をみた後、エントリーしてみました。

水面から水中を観察していると、まず見えたのは1頭の大きなクジラです。

もう1頭が見当たらないなぁと思って目を凝らすと、大きなクジラの下に、少し小さめのクジラが隠れていたのですが……

この時、「あれ?」と思いました。

2頭とも、胸ビレの背中側が白かったのです。

2月下旬、与路島・請島・加計呂麻島周辺で撮影。最初はカップルかと思ったのですが…

2月下旬、与路島・請島・加計呂麻島周辺で撮影。最初はカップルかと思ったのですが…

胸ビレの腹側が白いのは何も珍しくないのですが、背中側が真っ白の個体は、比較的珍しいはずです。

今回の奄美滞在中に出会ったクジラたちも、胸ビレの背中側は、ほとんどの個体で黒っぽい色でした。

2月中旬、奄美大島周辺で出会った大人のクジラ2頭。

2月中旬、奄美大島周辺で出会った大人のクジラ2頭。

中には胸ビレに白い部分があるクジラもいましたが、これも全体が白いというわけではありませんね。

2月末、奄美大島周辺で撮影。今日の話とは直接関係のない親子クジラ。

2月末、奄美大島周辺で撮影。今日の話とは直接関係のない親子クジラ。

さて、僕が胸ビレの白いクジラと出会って「あれ?」と思ったのは、珍しいからだけではありません。

実は昨年の3月、沖縄本島で胸ビレの背中側が真っ白な親子クジラと出会ったことがあり、そのお母さんと赤ちゃんの姿が脳裏をかすめたのです。

その時は「胸ビレの色って遺伝するんだな……」なんて考えながら、人懐っこい赤ちゃんクジラを夢中で撮影していました。

2018年3月、沖縄本島周辺で撮影。大きいけれど、赤ちゃんです。

2018年3月、沖縄本島周辺で撮影。大きいけれど、赤ちゃんです。

そう、僕の頭の中には「胸ビレの色は遺伝する」という認識がありました。

なので今回奄美で出会ったこの2頭の胸ビレの白いクジラも、船上から観察している時は大人のペアかと思いましたが、「もしかしたら親子?」と思ったのです。

その後も何度か水中で観察できる機会があったのですが、「親子かも」という意識で見てみると、もう親子にしか見えません。笑

いつも2頭上下に重なっていて、しかも下のクジラの方が上のクジラよりも小さい……さらには、小さめの子がお母さんに甘えるように、クルクル回り始めたではありませんか。

別に僕が親子かどうか断定しなきゃいけないわけではないのですが、心の中では親子だと確信しました。

2月下旬、与路島・請島・加計呂麻島周辺で撮影。この姿を見て「親子だ」と確信しました。

2月下旬、与路島・請島・加計呂麻島周辺で撮影。この姿を見て「親子だ」と確信しました。

生態や胸ビレの模様から
親子と再会できた可能性を考える

ここで少しだけ、クジラの生態に触れておきます。

北半球に生息するザトウクジラは、夏の間はロシアやアラスカ、アリューシャン列島近海でたらふく餌を食べます。

餌を食べるのはこの期間だけで(諸説ありますが)、1年分の餌をまとめて食べているわけですから、冷たい海で出会うザトウクジラは丸々と太っているのでしょう。

秋になると北の海を離れ、冬、沖縄や奄美、小笠原やハワイなどの暖かい海にやって来て繁殖・子育てをします。

出産もこの海域でしますので、運が良ければ生まれたての赤ちゃんクジラと出会えることもあるわけです。

2月末、奄美大島周辺で撮影。生まれたてだけど、体長はすでに4mほどあります。

2月末、奄美大島周辺で撮影。生まれたてだけど、体長はすでに4mほどあります。

授乳期間が終わり、1年ほどで親離れする子どもが多いようですが、人と一緒で親離れがなかなかできない子どももいるようです。

今回出会った個体は、サイズ的に今年生まれた子供とは考えづらいので、おそらく去年生まれて、なかなか親離れできずにいるのでしょう。

そんなことを考えながら撮影し、宿に帰って写真を編集し、早速SNSに投稿したのですが……

写真をアップするとすぐ、

「去年の作品に写っていた、胸ビレの両側が白い親子と同じではないですか?」

と、コメントしてくださった方がいました。

僕も、薄々そんな期待はしていたのです。

でも、この広い海で、そして沖縄と奄美という別の場所で、同じクジラに出会うなんてことはないだろうと勝手に決めつけて、ちゃんと調べていませんでした。

2018年3月 沖縄本島周辺で撮影

2018年3月、沖縄本島周辺で撮影。

2018年3月 沖縄本島周辺で撮影

2018年3月、沖縄本島周辺で撮影。

2019年2月下旬、与路島・請島・加計呂麻島周辺で撮影。

2019年2月下旬、与路島・請島・加計呂麻島周辺で撮影。

2019年2月下旬、与路島・請島・加計呂麻島周辺で撮影。

2019年2月下旬、与路島・請島・加計呂麻島周辺で撮影。

しかし、写真を見直してみると、お母さんの胸ビレの模様が同じです。

通常は尾ビレで個体識別をしますが、左右どちらも胸ビレの模様が同じですし、ここでは同一個体と言っていいのではないか、そう思うようになりました。

子どもは1年間泳ぎ回って成長するうちに模様も結構変わるので、同一個体と言えるような特徴は見つけられませんでした。

サイズ的には、去年が生まれたてで、今年が生後約1年だとすると、辻褄は合いますね。

大海原でクジラと再会…
ロマンチックな体験に感動!

なんだか味気ない報告のようになってしまいましたが、この事実を確信した時の鼓動の高鳴りは今でも忘れられません。

「水中でクジラと出会えるだけでも奇跡のようなことなのに、元気に成長した親子と1年ぶりに再会できるなんて、ロマンチックすぎるじゃねぇか。

しかも大好きな沖縄と奄美で、素敵な人たちに囲まれながら、こんな経験をさせてもらえる俺は、なんて幸せ者なんだ……!!

そんなことを思いました。

昨年沖縄で出産し、北の海に帰る途中で奄美に立ち寄り、気に入ったから今年は沖縄まで行かずに奄美に来たのか?

それとも、実は出産したのも奄美で、僕たちが昨年沖縄で出会ったのはお散歩の途中だったのか?

もちろんそれ以外にも可能性は無限にありますが、そんなことを想像すると、なんだか温かい気持ちになりました。

海と写真の世界に導いてくれた方々、クジラを通じて関わってくれた方々、そして奄美と沖縄の自然、本当にありがとうございます。

2月末、奄美大島周辺で撮影。後ろにはエスコートと呼ばれる雄クジラもついていました。

2月末、奄美大島周辺で撮影。後ろにはエスコートと呼ばれる雄クジラもついていました。

来年もまた奄美大島へ!
美しい自然と触れ合う時間を大切にしたい

今年は一ヶ月ちょっとの間、アクアダイブコホロさんにお世話になり、クジラの勉強をさせていただきました。

オーナーの太田健二郎さんのクジラ愛と操船に惚れ込み、昨年からお世話になっています。

アクアダイブコホロさんのショップ・ボートは奄美大島南部の瀬戸内町というところにあるのですが、ここがまた、いい所なんですよね……

奄美大島と加計呂麻島にはさまれた大島海峡に、ぽつりぽつりと浮かぶ小島。

迷路のようなリアス式海岸と、現れては消える静かな航跡。

ホエールスイムは思い通りにいかないことも多いので、ついつい頭の中が「クジラクジラクジラ……」となってしまうのですが、こんな景色をのんびり眺める時間や、奄美の自然を丸ごと楽しむ心の余裕も必要なんだと思います。

午前9時、高知山展望台から大島海峡を望む。

午前9時、高知山展望台から大島海峡を望む。

また来年もこの海でクジラと出会えると思うと、今から楽しみで仕方ありません。

2020年も、奄美大島ホエールスイムツアーを開催する予定です。

日程は僕のブログ「陽だまりかくれんぼ」にアップしていますので、ご興味のある方はチェックしてみてください。

それでは、今日もここまで読んでくださりありがとうございました!

上出俊作さん
プロフィール

水中写真家上出俊作氏

2014年、かねてから抱いていた沖縄移住の夢が抑えきれなくなり、製薬会社を退職し沖縄本島に移住。現在は「水中の日常を切り取る」をテーマに、海で暮らす生き物たちの姿を撮り続けている。

▶上出俊作さんのブログ「陽だまりかくれんぼ」
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