沖縄・古宇利島の巨大沈船USSエモンズで初ダイビング!その存在感に圧倒され、心を込めて撮影をする

こんにちは、水中写真家の上出俊作です。

先日、沖縄本島近海に眠る沈船「USSエモンズ(EMMONS)」の撮影にチャレンジしてきました。

県内最大の沈船と言われており、また、国内においては数少ない水中戦跡でもある、USSエモンズ。

今日は、そんな貴重なダイビングポイントの魅力を僕なりに紹介していきます。

機銃や爆薬など、当時の様子を彷彿とさせる兵器がそのまま残っている

機銃や爆薬など、当時の様子を彷彿とさせる兵器がそのまま残っている

沈船「USSエモンズ」とは?

USSエモンズは、沖縄本島北部から橋で渡れる離島「古宇利島(こうりじま)」の沖に沈んでいます。

「ハートロック」や「古宇利大橋」など有名な観光スポットもありますので、皆さんも古宇利島という名前は聞いたことがあるかもしれません。

車に乗れば10分ほどで一周できる小さな島なのですが、日中は、絶景を求める観光客でひしめき合っています。

古宇利大橋から眺める古宇利島。撮影は晴れた日の午前中がおすすめ

古宇利大橋から眺める古宇利島。撮影は晴れた日の午前中がおすすめ

日が沈むと、昼間の喧騒が嘘のように、島が静まり返ります。

近頃は田舎に行っても街灯が増えてしまいましたが、古宇利島は通年星空観察ができる貴重な場所です。

島の北側のビーチで撮影。夏になると、肉眼でも天の川がはっきり見える

島の北側のビーチで撮影。夏になると、肉眼でも天の川がはっきり見える

そんな沖縄屈指の絶景スポット「古宇利島」の沖に、USSエモンズは眠っています。

「USS」というのは「United States Ship」の略、つまり米国海軍艦艇という意味です。

USSエモンズは太平洋戦争終盤の1945年、掃海駆逐艦として沖縄戦に投入され、日本軍特攻機による攻撃を受けました。

この攻撃によって大きな損傷を受け航行不能となったUSSエモンズは、日本軍の手に渡ることを回避するため、最終的には僚船によって沈められます。

ここでは細かい歴史や数字は割愛しますが、USSエモンズは、多くの尊い命が犠牲になった、第二次世界大戦の生々しい傷跡です。

船体中央付近には、亡くなった乗組員の名を記したメモリアルプレートが設置されている

船体中央付近には、亡くなった乗組員の名を記したメモリアルプレートが設置されている

USSエモンズが沈んでいる古宇利島は、僕が住んでいる名護市から車で30分ほどの所にあります。

言ってみれば、わりと近所です。

でも実は、5年間沖縄本島北部に住んでいるにもかかわらず、僕は今回初めてUSSエモンズを潜りました。

というか、10年ちょっとダイビングをしてきて、初めて沈船を潜りました。

改めて考えると、それもビックリですね……

以前、宮古島の記事を書いた時に告白しましたが、僕が好きなのは「生き物」です。

なので、「地形」や「沈船」というのは、正直に言って、これまであまり興味がなかったんですよね。

ただ最近、薄っすらこう思ってもいたのです。

「食わず嫌いだった地形の撮影もめっちゃ楽しかったし、沈船も潜ってみたら何か得るものがあるかもしれないな……」と。

エモンズに関しては、戦跡ということは知っていましたし、気軽に行くものでもないかな、という思いがあったことも事実です。

でも、そんなことばかり言っていても始まらないので、とりあえず潜って自分の目で確かめることにしました。

初めての沈船ダイブ
その巨大な存在感に圧倒

船体に取り付けられたブイのロープを伝って潜降していく

船体に取り付けられたブイのロープを伝って潜降していく

今回、水中ガイドはダイブジャーニーの高田洸也さんにお願いしました。

なんと高田さん、古宇利島在住12年目。この島の案内人と言ったら、多くの人が高田さんの顔を思い浮かべるとか、浮かべないとか。

USSエモンズが眠っている水深は40m前後とかなり深く、沈船の上に着底することもできないので、それ相応のスキルが求められます。

また、このダイビングポイントは深いだけでなく、潮の流れがきつい時もあるので、はっきり言って上級者向けです。

細かい参加条件等はショップによって違いますので、詳しくは問い合わせてみてください。

さて、ダイビング&撮影当日。

水中の滞在時間が限られていることもあり、事前のブリーフィングにも力が入ります。

古宇利島の港を出港すると、10分足らずでダイビングポイントに到着しました。

ブイを取ったら早速エントリー……なのですが、さすがに気が引き締まりますね。

沖縄本島に住んでいるとは言っても、戦跡に触れる機会は日常の中にそうあるものではありません。

「初めての沈船をどうやって撮ろうか」という気持ちは一旦わきに押しやり、哀悼の念を抱いてエントリーしました。

ここからがある意味本番なのですが……ごめんなさい、どうしても上手く言葉にできませんでした。

水深20m付近まで潜降し、海底に横たわるエモンズの姿がぼんやりと見えたとき、その存在感に圧倒されてしまったのです。

生々しい迫力と美しさに、心を打たれました。

犠牲になった方々を悼む気持ちと、この光景を自分なりに表現したいという気持ち。

そして、水深40mで流れに逆らいながら撮影するという、慣れない環境での焦り。

いろいろなものが交錯していたんだと思います。

「冷静に冷静に……やれることは全部やろう……」と自分に言い聞かせながら、夢中でシャッターを切り続けました。

船長さんやガイドさん、ご一緒させていただいたダイバーの方々の協力を得ながら全力で撮影してきましたので、写真から何かを感じていただけたらうれしいです。

船首側から撮影。沈没から70年以上経った今も、その美しいフォルムを残している

船首側から撮影。沈没から70年以上経った今も、その美しいフォルムを残している

敵軍の航空機を撃墜するための機銃。色とりどりのカイメンが付着していて、独特の存在感がある

敵軍の航空機を撃墜するための機銃。色とりどりのカイメンが付着していて、独特の存在感がある

艦船を攻撃するための魚雷や、対潜水艦用の爆雷もそのままの姿で残っている

艦船を攻撃するための魚雷や、対潜水艦用の爆雷もそのままの姿で残っている

撮影に協力してくれたダイバーの方々を、主砲越しに撮影。「エモンズに潜るためにダイビングを始めた」という方もいて驚いた

撮影に協力してくれたダイバーの方々を、主砲越しに撮影。「エモンズに潜るためにダイビングを始めた」という方もいて驚いた

プロペラの美しさに見入ってしまい、撮影にも長い時間を要した

プロペラの美しさに見入ってしまい、撮影にも長い時間を要した

*

以上が、僕にとっての“初沈船ダイビング”の記録です。

毎ダイブ、びっくりするくらい興奮してしまいました。

はっきり言って、USSエモンズのダイビング、かなりおもしろいです。

ただ、「これからは沈船もどんどん潜ろう」という気持ちになったかというと、そうでもありません。

機会があれば他の沈船を潜ることもあるかもしれませんが、今回「沈船」の魅力に気づいたと言うよりは、「エモンズ」の歴史や造形美に魅せられました。

同時に、エモンズの魅力を最大限伝えるには、もっと時間をかけて撮影する必要があるということも知りました。

今回は撮影のため計4本潜ったのですが、正直、全然撮影しきれていません。

船首から船尾まで100m以上あり、しかも砲台や魚雷、特攻機が突入した穴など、当時の姿を残している箇所が多いので、すべてを撮影するにはかなりの時間がかかります。

ただ撮って回るだけなら簡単かもしれませんが、心を込めてそのひとつひとつを撮るには、10本潜っても足りないはずです。

これからも機会を作って、USSエモンズの撮影にチャレンジし続けたいと思っています。

それでは、今日もここまで読んでくださりありがとうございました!

少しでも皆さんの参考になればうれしいです。

■撮影/取材協力:Dive Journey(ダイブジャーニー)

上出俊作さん
プロフィール

水中写真家上出俊作氏

2014年、かねてから抱いていた沖縄移住の夢が抑えきれなくなり、製薬会社を退職し沖縄本島に移住。現在は「水中の日常を切り取る」をテーマに、海で暮らす生き物たちの姿を撮り続けている。

▶上出俊作さんのブログ「陽だまりかくれんぼ」
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writer
PROFILE
1986年東京都生まれ。
2014年、かねてから抱いていた沖縄移住の夢が抑えられなくなり、沖縄本島の名護市に移住。
「水中の日常を丁寧に切り取る」というテーマで、沖縄を中心に日本各地の水中を撮影。
ブログ「陽だまりかくれんぼ」や写真展などのイベントを通して、水中写真と沖縄の海の魅力を発信し続けている。
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