【屋久島】シリテンスズメダイ(仮称)の生息状況と考察 by 原崎森

【ポイント】 一湊タンク下No.1
【水温】 24.5℃
【透明度】 20m
【海況】 凪ぎ
【天候】 雨
【潜水時間帯】 14:04-16:47
【潮まわり】 06:17 202cm 満潮 / 12:07 94cm 干潮 / 17:46 213cm 満潮 / 大潮(月齢:13.3)
【日の出・日の入】 日出06:38 日没17:25

雨水が入り込んでいるからだろうか?
水温がとうとう24℃台になってしまった。。。(・_・;

今日は雨だった事もあり、ホームグラウンドの一湊タンク下には釣り人はまったくおらず、心置きなくシリテンスズメ(仮称)調査ができた!(笑)
ただ雨で水面直下が白く濁り、サーモクラインも入り込み、よく群れ全体が水面直下に泳ぎ上がるオヤビッチャ観察にはちとキツイ。。。(^^;)
それから3時間近くずっと、カメラを構えた姿勢で泳ぎながらオヤビッチャの群れを追っていたので、首が痛い。。。
最大水深6.7mなのでエアーもなかなか減らず、いつもはエアー切れでエクジットするのに、今日は首の痛さと寒さで上がった。(笑)

以下の記事は6日、8日の記事を参照して下さい。(続き物です)
11月6日 まさか全部、シリテンスズメダイ(仮称)なのか?(・_・;).
11月8日 オオヒレテンスモドキの産卵.

じっくり一湊タンク下のオヤビッチャの群れを観察してみたのだが、「まさか、すべてがシリテンスズメダイ(仮称)なのでは?」という予想は外れていた。
やっぱり、ほとんどはオヤビッチャで、シリテンスズメダイ(仮称)らしき子は全体の5%にも満たないくらいに思えた。
成魚に関しては確認できたのは3匹くらいで、あとの大きめの子はみんなオヤビッチャだった。

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シリテン・タイプの成魚(典型例)

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オヤビッチャ(成魚)


シリテンスズメダイ(仮称)らしき子を見分けるために僕自身が目安にしたのは次の4つだ。

1. 体が全体的に淡い黄色である事(背中の黄色が下の方まで薄く広がっており体の半分以上が黄色く見える)
2. 尾ビレに2つの黒点がある事
3. 1本目の横帯が胸ビレの後ろを通り抜ける事
4. 側線の上の鱗は2列である事

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シリテン・タイプの成魚(点が薄い例)

ただ、2〜4の識別点は近くでかなり良く見ないと分からないため、最初はまず1の条件だけに当てはまるオヤビッチャを探し、そのあと2〜4の識別点を確認するという手法をとった。
その結果、1の識別点だけでほぼ99%シリテンらしき子を選別できたようだ。
そう。。。シリテンスズメダイ(仮称)だとするタイプのオヤビッチャは、基本的に体全体が黄色いのだ。(オヤビッチャは背中だけ濃い黄色で体の白い部分とクッキリ分かれている)
これは遠目で見ても分かる識別点だ。

ある程度サイズのある成魚に関してはこの4つの識別点はすべて合致していた。

問題は一回り小さな幼魚〜若魚のステージのようだ。
下の写真を見比べてもらうと分かるのだが、若魚サイズになると2つのタイプ(シリテン・タイプとオヤビッチャ・タイプ)はクリソツだ。
なぜならオヤビッチャの若魚は黄色い部分が成魚よりもやや薄目であり、よりシリテン・タイプに似るからだ。
おまけにシリテン・タイプの若魚はそのほとんどが尾ビレに2つの黒い点はない。。。(^^;)

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シリテンの若魚(側線の上が広い子)

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オヤビッチャ(若魚)


さらにオヤビッチャの成魚の体の横帯はやや青みががっていたりするのだが、若魚は黒っぽい子も多く、下の写真を見比べれば分かるのだが、この辺もシリテンとよく似ている(シリテンの横帯はオヤビッチャほど青味がない)。
ちなみに下の2枚はほとんど同じ種類に見えるかも知れないけど、側線の上の鱗の列数を数えれば明らかに違う。(左のシリテン2列、右のオヤビッチャ3列)

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シリテンの若魚(横帯が黒い子)

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オヤビッチャ(シリテン似)


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シリテンの若魚(横帯が胸ビレで止まった子)

というわけで、このオヤビッチャの2型が別種か?という事についてなのだが、正直、僕の中ではまだなんとも言えない。。。
なぜなら左のような子もいたりするからだ。

側線の上の鱗の数は明らかに2列なのだが、1本目の横帯はオヤビッチャと同じように胸ビレの手前で切れているような子もいたりするからだ。(笑)
いろいろなタイプの子が見つかれば、見つかるほどオヤビッチャという魚は変異が多く現れる種類で、遺伝的な多様性が高い魚であるだけなのかもしれないからだ。

また、体側の横帯や尾ビレの黒点、体の色など、色や斑紋に関する違いは、他の魚でもよく言われるように個体差があらわれやすい。
なので、最も信頼がおける確実な識別点は、「側線の上の鱗の数」だと思うのだが、これとて???な子をたまに見かける。

例えば下の2枚は同じ個体を裏と表で撮った写真だ。
左側の写真(魚の左側面)を見ると、尾ビレに2つの黒点はないものの、1本目の横帯が胸ビレの後ろを通り抜け、側線の上の鱗は2列である事から、シリテン・タイプの若魚だと即答できるのだが、右側の写真(魚の右側面)の側線の上の鱗の列数を数えると何かちょっと悩んでしまう。。。
そう、、、この子、左側面と右側面で鱗の大きさが違うんだもん!!!(爆笑)
しかも、3列に見えるんだけど。。。気のせい?(^^;;

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シリテンの若魚(左側面)

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シリテンの若魚(右側面)


まぁ〜生き物というのは1匹で生きているわけではなく必ず社会というものがあるわけで、常に他の仲間とのつながりの中で、互いに関わり合いながら社会行動を行なって生きている。
なので、こういうのは1個体1個体別々に写真を見て形態や斑紋の違いを検討して分類する事には何か違和感が。。。(^_^;)
下手すると何の意味もないのではないか?とさえ個人的には思ってしまう。。。
そもそも、フィッシュウォッチング的にそんなの全然面白くないしね。。。(笑)

こういう形態での分類は研究者の方々に任せ、僕は社会行動を観察することで分類していきたいと常々思っている。
なので、あとはこいつらの産卵行動を観察してみたい。。。
本当に産卵生態がまったく違うのか?オヤビッチャと確実に繁殖隔離されているのか?(今のところ完全に混泳しているので、繁殖隔離が行われていることがちょっと信じがたい。。。(^^;;)その辺を来春に観察してやる〜!!!
楽しみ♪(^^)

今、屋久島ではオヤビッチャ類の繁殖期は完全に終わっているようなので、取りあえずシリテン・タイプとオヤビッチャ・タイプの2型が群れて混泳している様子を可能な限りマクロで撮ってみた。
あとから検索等でシリテンスズメダイ(仮称)を調べる方のために3-4枚貼っておきま〜す!
こんな感じで混泳していて、それぞれがこんな風に見えます。。。(屋久島では)

シリテン・タイプはオヤビッチャ・タイプに比べて、”背中の黄色が下の方まで薄く広がっており体の半分以上が黄色く見える事”に注目!

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左からオヤビッチャ、シリテン

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左からオヤビッチャ、シリテン


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左からシリテン、オヤビッチャ、オヤビッチャ

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左からシリテン、ロクセン、オヤビッチャ


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PROFILE
世界遺産の島・屋久島の海をほぼ毎日潜っているショップ「森と海」のブログ。そのオーナーガイド原崎森(しげる)さんは水中写真とフィッシュウォッチング(生態観察)において日本でも有数の、まさにスーパーガイド。また、的確な思考力・文章力にも定評がある。
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