中学生でピラニア飼育!? シャークジャーナリスト、沼口麻子図鑑!〜『ほぼ命がけサメ図鑑』発売インタビュー(前編)〜

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世界でただ一人のサメ専門のジャーナリスト“シャークジャーナリスト”の沼口麻子さん。

沼口さんが6年がかりで、サメへの熱い想いを詰め込み執筆した本『ほぼ命がけサメ図鑑』が発売され、なんとわずか5日で重版。
今回は沼口さんに、ヒット中の『ほぼ命がけサメ図鑑』への想いと、シャークジャーナリストとして活動するまでの生い立ちをインタビュー。
”ほぼ命がけ!? 沼口図鑑”を2回に渡ってお届けしていきます。

■インタビュアー:寺山英樹(オーシャナ編集長)
■写真:菊地聡美(オーシャナ編集部)

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中学時代からピラニア飼育?
“ほぼ命がけ”沼口伝説の始まり

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寺山

僕の勝手な印象なのですが、沼口さんって、専門的な研究という視点ではなく、文化とか食を含めたサメの全部が一つに詰まっていておもしろいなと思います。
解剖して喜んでいるかと思えば、サメがかわいいと思っていたりもするし。魚類って堅くなりがちですが、それがない。

沼口

そうですね。
科学者とか研究者が書くと、白か黒かの世界なので、間違いを指摘されたり、勉強していないんじゃないかって、バッシングが来たりすると思うんです。

でも私はジャーナリストだから、グレーな部分も含めておもしろく書ける。この本は、科学的な正しさはもちろん前提にしているのですが、わたしの個人的な視点と経験を合わせて書いてみました。

寺山

サメのいろいろな話はこの本を見ていただくのが一番だと思うので、今日は沼口さんのことを聞かせていただこうと思います。
この中のエピソードというよりは、“ほぼ命がけ沼口図鑑”の感じで聞かせていただければなと。

そもそも、サメに取り憑かれたというか(笑)、興味持ったのはいつ頃ですか?

沼口

記憶を辿っていけば小学校1年生の時に、当時流行っていたモコモコペン(ドライヤーを当てるとモコモコ浮き出てくるペン)で、白いTシャツを買ってサメを描いて着ていたりしていたから、なんとなくイルカとかじゃなくてサメに惹かれるものがあったのかなと思います。
子どものころは金魚、メダカ、ミドリガメ、クサガメ、ザリガニ、カブトムシみたいなプラスチックケースで飼えるのをずっと飼っていて、中学生になったころには、ピラニアの水槽を作りました。

寺山

どのあたりが面白かったんでしょう?

沼口

生き物を飼育していて面白いのは、餌を食べるところとか。水槽の前で彼らの行動を観察するのが好きでした。一日中ずーっと見ていられましたね。
小学生の頃は、あまり気の合う友達はいなかったですね……(苦笑)
見ていたら1日が終わってたというのもしょっちゅうでした。

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寺山

そして、中学生になるとピラニアへ?

沼口

中1で大きめのアクリル水槽を買ったんです。
熱帯魚に憧れていたんですね。金魚よりワンランク上というイメージがあるじゃないですか。
図鑑みたり、ペットショップを回ったりして悩んだ結果、ピラニアに落ち着きました。お小遣いで買える範囲の値段(300円)だったこと、最大でも30cmにしかならない大きさもよかったですね。その横にピラルクの赤ちゃんも売ってて、すごい飼いたかったけれど、7mになると聞いて断念。
エサが手に入りやすいのも重要で、ピラニアの場合、小さい時は糸ミミズ、少し大きくなったらメダカ、成魚なったら金魚。全部生き餌だったんですけど、普通に熱帯魚屋さんで売ってるので、自分で週1回買ってあげてました。

「アフリカでライオンの写真を撮る」
単独でアフリカに乗り込んだ高校時代

寺山

なるほど。
それが中学で、高校のときは?

沼口

ずっとそのピラニアですね。
8年ぐらい生きてたので、大学生くらいまで一緒にいました。

高校1年生の時には、母に「アフリカへ行ってライオンの写真を撮りたい」と話をしました。
動物が大好きで動物にまつわる仕事につきたいという思いは一貫してもっていたのですが、その時は、野生動物カメラマンになりたかったんです。
そうしたら、あっさり「いいよ」と往復チケットを買ってくれて。あれよあれよと言う間に、16歳の夏休みに1人で行くことになりました。

たまたま弟の友達で、ジンバブエのブラワヨという街に転勤しちゃったご家族がいたんです。とりあえずそこまで行けば、向こうでは大丈夫、ということで。(笑)
初めてブリティッシュエアウェイズで3回乗り継いで行きました。「Hello!」とかも言えずガチガチになりながら。

寺山

写真は撮れましたか?

沼口

ライオンは遠すぎて撮れなかったんですけど、ハイエナとかキリンとか結構いい感じで撮れて。父親から借りたマニュアルの一眼レフを使ってたんですけど、すごい楽しかったです。

実は、高校生活も友達がいないのを引きずったまま過ごしていたんです。ちょっと曲がった感じの子だったんですね。そんな中、アフリカに飛び込んだら、もう! アフリカの人たちがダイナミックで。

最後の帰る前の空港の待ち時間が、3時間くらいあったんです。近くで観光してからチェックインしようと思って、タクシー拾ったら、爬虫類園を紹介されました。動物全般はもちろん、爬虫類も大好きなので即答しました。

でも、走れど走れど着かないんですよ。やっと着いたところが、空港から100km先……。さすがに自分でチケットを買うスキルもお金もないので、帰りの飛行機に乗れなかったらやばいって青ざめました。さすがに当時の自分はチケットを買い直すスキルもお金もなかったので。

「私は今日日本に帰らないと行けないのに、なぜこんなに遠くまで連れてきたのか」って、かなり怒ってドライバーに文句を言いました。そうしたらドライバーが「100kmは近いだろ!? これがアフリカンスタイルだよ」って。

結局、爬虫類園も楽しめて、そのタクシーでまた空港まで送ってもらって、飛行機は無事チェックイン。なんだか自分が小さかったなって恥ずかしく思いました。それから、私が思う小さな常識は世界から見たら、全然常識なんかじゃないんだって思ったら、なんか生きるのが楽になりましたね。

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寺山

高校で女子高生でピラニア飼ったりアフリカ行ってる感じは、やっぱりあまり普通じゃない(笑)。
わりともう、外に目が向いていたんですね。

幼少期からちょっと変わった(?)嗜好を持っていた沼口さん。
後編はサメと出会った大学生時代から、紆余曲折を経てシャークジャーナリストになるまでの道のりをお届けしていきます。

ほぼ命がけサメ図鑑

帯なし

著者名:沼口 麻子
単行本: 389ページ
定価 : 本体1,800円(税別)
販売: 株式会社 講談社

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