ダイビングで見られるチョウチョウウオ25選~人気種の特徴と見分け方を徹底解説
サンゴ礁を彩る“トロピカルフィッシュ”といえば、真っ先に頭に浮かぶのがチョウチョウウオの仲間。穏やかな浅いリーフ内でも多くの種類が生息し、スノーケリングでも手軽に見られるので、ダイバーに限らず一般の方にもよく知られた人気のグループです。
チョウチョウウオってどんな魚?
チョウチョウウオの仲間は、世界の暖かい海を中心に130種ほど知られています。そのうち日本で見られるのは50種以上。人気の種類を紹介する前に、その特徴や生態を探ってみましょう。
サンゴ礁を舞う可憐な魚

チョウチョウウオの仲間は横から見ると丸い体形だが、正面から見ると平べったい。写真はタヒチで撮影されたスダレチョウチョウウオ
約130種いるチョウチョウウオの仲間のうち、そのほとんどがサンゴ礁を中心とする暖海に生息しています。まさに“トロピカルフィッシュ”の代名詞といえるでしょう。
チョウチョウウオの仲間は横から見ると丸っこいですよね。でも、真正面から見ると非常に薄い。そんな魚が明るいサンゴ礁をヒラヒラと泳ぐ姿は、花畑を舞う蝶のように愛らしい。そんなところから、英語圏ではバタフライフィッシュ(Butterflyfish=蝶のような魚)と呼ばれ、和名もその直訳でチョウチョウウオとなりました。
なお、暖海を好むチョウチョウウオの仲間ですが、例外もあります。たとえば、東部太平洋の深場に暮らすサイズ・バタフライフィッシュ(Scythe butterflyfish)や、水深100~300mから発見されているウラシマチョウチョウウオなど、低水温に適応した種類も少数ですが知られています。
雑食からポリプ食まで多様な食性

雑食性のシチセンチョウチョウウオは微小な藻類や小動物をエサとするほか、イシサンゴ類の表面を突っついて本体であるポリプも食べる
チョウチョウウオが何を食べているのか? その食性は種類ごとにだいたい決まっています。
最も多いのは雑食性。ヨコエビなどの小動物やガレキサンゴに生えた微小な藻類、サンゴのポリプ※など様々なものを食べています。
サンゴ礁に暮らす種類では、サンゴのポリプを主食とする種類もいます。その代表はミスジチョウチョウウオ。白化などによってサンゴ礁が荒れてくると姿が消えてしまうので、「サンゴ礁が健康である」ことの指標生物とされています。
※ポリプ:石灰質の“鎧”に守られた、サンゴという生き物の本体のこと。なお、刺胞動物(イソギンチャクやイシサンゴ、イソバナなど)には、浮遊生活を送るクラゲ世代と固着生活のポリプ世代という2つの形態がある。

中層に泳ぎ出てプランクトンを捕食するカスミチョウチョウウオ。流れが止まると低層に下りてくる
プランクトンをメインに食べる種類には、カスミチョウチョウウオやムレハタタテダイなどがいます。潮が動き出してプランクトンが流れてくると、いっせいに中層に泳ぎ出て、あちらでパクッ、こちらでパクッと食事を始めます。
大物ポイントを支える縁の下の力持ち

マンタにまとわりつくミゾレチョウチョウウオたち。マンタが集まって特定の根などでホバリングする「マンタポイント」は、クリーニングステーションであることが多い
チョウチョウウオの中には、ホンソメワケベラのように大きな魚をクリーニングするものもいます。
マンタをクリーニングする種類としてはミゾレチョウチョウウオが知られていますが、西伊豆・大瀬崎などではシラコダイがマンボウをクリーニングするシーンが見られます。そのほか、ムレハタタテダイなどもクリーニング行動をすることがあります。
この行動は、魚の体表に付く寄生虫を食べていると考えられおり、ダイバーが大物をウオッチングする際になくてはならぬ存在といえますね。
チョウチョウウオと目玉模様

背ビレに眼状斑をもつ、チョウチョウウオという種類の幼魚。本種の場合、眼状斑は成長につれて消えてしまう
チョウチョウウオの仲間には眼状斑(眼状紋)をもつ種類がいます。眼状斑とは白や淡い色で縁取られた暗色点のことで、昆虫などでも知られています。眼玉模様で外敵を驚かせる、あるいは頭部の位置を見誤らせるのではないかといわれています。
その効果のほどはよくわかりませんが、か弱い幼魚のときだけ眼状斑をもつ種類もいれば(チョウハン、フウライチョウチョウウオなど)、成魚になっても残る種類もいます(ウミヅキチョウチョウウオ、ゲンロクダイなど)。
チョウチョウウオの寝姿

ナイトダイビングで撮影されたヤリカタギ。まぶたがないので眼は開けたままだが、こう見えて「熟睡」している
チョウチョウウオの仲間は昼行性。明るい時間帯は活発に行動し、夜になると岩陰やサンゴの隙間などで休んでいます。
「熟睡」しているときは、水中ライトを照射しても身動きひとつしません。興味深いのは、すべてのヒレをきれいに開いていること。体を大きく見せているのか、あるいは潮に流されないようにしているのでしょうか。
また、休息時には体表に白い斑紋が浮き出る種類もいます。通常の模様と変えることで外敵の目をくらませているのか、あるいは仲間同士のシグナルか? 理由は諸説あるようです。
なお、寝ているチョウチョウウオを起こしてはかわいそう。長時間ライトを照射したり、指で触れたりするような行動はNGです。
日本で見られるチョウチョウウオ25選
南日本や沖縄などで見られるチョウチョウウオのうち、人気がある種類を集めてみました。チョウチョウウオの仲間は体形があまり変わらず、模様の個体差も少ないので図鑑との絵合わせで比較的簡単に種類がわかります。フィッシュウオッチングの練習にオススメ!
目印は背ビレ後端から伸びる「トゲ」
トゲチョウチョウウオ

サンゴ礁や岩礁に生息する普通種。季節来遊魚として2~3cmほどの幼魚は南日本でもよく見かけ、磯やタイドプールでもおなじみ。大きさ10~13cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;インド-太平洋
「風来坊」が英名&和名の由来
フウライチョウチョウウオ

英語圏では海中をあちこち泳ぎ回る様子からバガボンド・バタフライフィッシュ(Vagabond=放浪者、風来坊)と呼ばれる。雑食性。大きさ8~12cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;インド-太平洋
夏の風物詩、簾の模様に注目
スダレチョウチョウウオ

潮通しのいいサンゴ礁外縁などでよく見られ、しばしば群れをつくっている。好奇心が強く、ダイバーをあまり恐れない。大きさ8~12cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;東部インド洋~中・西部太平洋の熱帯域
南日本でも普通に見られる種類
チョウチョウウオ

低水温に強く、温帯によく適応した種類。しばしば大きな群れをつくることがある。幼魚には眼状斑がある。大きさ8~15cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;東部インド洋~西部太平洋の熱帯域
涙のようなにじんだ黒点がポイント
イッテンチョウチョウウオ

サンゴ礁ではサンゴのポリプを好んで食べるが、岩礁では藻類や小動物も食べる雑食性。大きさ8~12cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島;東部インド洋~中・西部太平洋の熱帯域
「海の月」の由来は謎だがキレイ
ウミヅキチョウチョウウオ

「ウミヅキ」の由来は出典が残っていないようだが、英名のひとつにエクリプス・バタフライフィッシュ(Eclipse=日食、月食)がある。なるほど、大きな眼状斑は金環食のイメージにぴったりだ。30m以浅のサンゴ礁や岩礁で見られ、やや内湾的な穏やかな環境を好む。大きさ8~12cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;インド-太平洋
目印は大きな暗色の斑紋
トノサマダイ

水深30m以浅の、やや内湾的な穏やかなサンゴ礁で見られる。たいていペアで行動しており、主食はサンゴのポリプ。大きさ8~12cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;インド-西太平洋
黄色に入る青い一筆が美しい
スミツキトノサマダイ

チョウチョウウオには珍しい青い斑紋をもつ種類。ミドリイシ類のポリプを主食とする。大きさ7~10cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;東部インド洋~西部太平洋の熱帯域
オレンジのストライプが目印
ハナグロチョウチョウウオ

岩礁やサンゴ礁に生息する。付着藻類なども食べるが、主食はサンゴのポリプ。大きさ8~15cm ●分布/伊豆・小笠原諸島、和歌山県以南~琉球列島;インド-太平洋
扇というより海苔巻きを連想(⁉)
オウギチョウチョウウオ

水深30m以浅のサンゴ礁や岩礁に生息。サンゴのポリプを主食とし、個体数はやや少ない。ペアまたは単独で行動している。大きさ8~15cm ●分布/琉球列島;インド-太平洋
途切れた眼帯が注目ポイント
アミメチョウチョウウオ

水深20m以深の、やや深い岩礁やサンゴ礁に生息。ベニオチョウチョウウオ(下)と似ているが、目を通る黒帯が途切れていることで識別できる。大きさ8~13cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;西部太平洋の熱帯域
小笠原で比較的よく見られる種類
ベニオチョウチョウウオ

水深10~100mと幅広い水深で見られるようだ。沖縄などでは珍しいが、小笠原では比較的よく見られる。大きさ8~13cm ●分布/琉球列島、小笠原諸島;インド-太平洋
元気なサンゴの近くでよく見かける
ヤリカタギ

背ビレや尻ビレの後端が角張っているため、何となく四角い印象のチョウチョウウオ。ミドリイシ類のポリプを主食とする。大きさ8~10cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;インド-太平洋
細長い吻(口)で獲物を捕食
フエヤッコダイ

体側に目立った模様がなく、ストローのように長い口で他種との識別は簡単。サンゴの枝の間や岩の亀裂に潜む小動物を捕食する。大きさ8~12cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;インド-太平洋
南日本の磯遊びでもよく出会う
アケボノチョウチョウウオ

浅いサンゴ礁や岩礁に生息し、夏場は季節来遊魚として伊豆半島などでも2~3cmほどの幼魚をよく見かける。微細な藻類やポリプを食べる。大きさ8~10cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;インド-太平洋
日本海でも見られるチョウチョウウオ
ゲンロクダイ

低水温に強い種類で、日本海にも生息する唯一のチョウチョウウオとされる。岩礁の内湾などに生息し、数は少ない。大きさ10~15cm ●分布/下北半島以南~南日本;東部インド洋~西部太平洋
長く伸びた背ビレから「旗立て」
ムレハタタテダイ

和名の通り群れをつくり、数百尾という大群となることもある。季節来遊魚として、伊豆半島などでも毎年のように姿を見せる。大きさ10~13cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;インド-太平洋
健康なサンゴ礁でしか生きられない
ミスジチョウチョウウオ

穏やかなインリーフなどに生息。ポリプを主食とするため、生きたサンゴの周辺でしか見られない。大きさ8~12cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;東部インド洋~中・西部太平洋の熱帯域
高貴な色と模様は和名にピッタリ
ミカドチョウチョウウオ

サンゴのポリプを主食とするため、健康なサンゴ礁でしか見られない。ペアで行動することが多い。大きさ8~12cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;東部インド洋~西部太平洋の熱帯域
黒い体に小さな白点がびっしり
ハクテンカタギ

30m以浅のサンゴ礁に生息し、ポリプを主食とする。個体数は少ないが、小笠原では比較的よく見られるようだ。大きさ8~12cm ●分布/伊豆・小笠原諸島、高知県、琉球列島;中・西部太平洋の熱帯域
和風の名をもつ日本固有種
ユウゼン

黒を基調としたシックな模様で、和名の由来は「友禅」。八丈島や小笠原でよく見られ、初夏にはユウゼン玉と呼ばれる群れをつくる。海底の小動物や魚卵などを食べる。大きさ8~12cm ●分布/南日本の太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、南・北大東島
和名の由来は平安時代の盗賊?
チョウハン

南日本でも季節来遊魚として幼魚がよく見られる。和名の由来は不明だが、平安後期の盗賊(熊坂長範)にちなむという説がある。大きさ8~12cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;インド-太平洋、大西洋南東部
独特の模様で他種との識別はカンタン
セグロチョウチョウウオ

15m以浅の穏やかなサンゴ礁で普通に見られる。藻類や小動物、サンゴのポリプなど何でも食べる。大きさ10~15cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;東部インド洋~中・西部太平洋の熱帯域
見た目は地味だがマニアに人気
シラコダイ

温帯によく適応し、本州沿岸でも繁殖する。目立った模様もなく地味だが、マンボウをクリーニングするなど興味深い生態で注目度が高い。大きさ8~10cm ●分布/南日本の太平洋岸、台湾、フィリピン
大きな群れで中層を舞う姿は圧巻
カスミチョウチョウウオ

潮通しのいいサンゴ礁外縁などでよく見られる。動物プランクトンを主食とし、潮が動き出すと中層に泳ぎ出て捕食する。大きさ10~12cm ●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;東部インド洋~中・西部太平洋の熱帯域
チョウチョウウオの仲間について紹介してきました。サンゴ礁の魚を代表するグループですが、南日本でも初夏から秋にかけて季節来遊魚として多くの種類が見られます。磯遊びでも見つかるので、ぜひ探してみましょう。

