ダイビングで見られるハナダイ20種~特徴から見分け方まで海の宝石を徹底解説

「花鯛」「花だい」といえば、一般的にはチダイ(マダイによく似たタイの仲間)を指すことが多いようです。でも、ここで紹介するのはダイビングで見られる可憐な魚たち。暖色を基調とした美しい姿は青や藍の海中でよく映え、ダイバーに大変人気があるグループです。

この記事でわかること

  • ・ハナダイ科は世界で約170種、日本では66種ほどが報告されている
  • ・メスからオスに性転換し、模様もそれによって変化
  • ・生息する水深が比較的はっきりしている

ハナダイってどんな魚?

色鮮やかな体色でダイバーを魅了するハナダイの仲間。サンゴ礁から伊豆の海まで幅広く生息し、性転換や水深によるすみ分けなど興味深い生態をもつ魚です。まずは、その基本的な魅力と観察のポイントを紹介していきましょう。

サンゴ礁を彩るアカネハナゴイの大群

サンゴ礁を彩るアカネハナゴイの大群。このように大きな群れをつくる種類もいるが、数尾程度でいる種類もある。なお、ハナダイの仲間には「ハナゴイ」という和名のものも多い

ハナダイの仲間は、以前はハタ科の中の1グループ(ハナダイ亜科)にまとめられていました。しかし、分子系統解析などを用いた最新の分類では「ハナダイ科」として独立しています。

ハタの仲間といえばマハタやクエなど、無骨で地味な色の大型魚をイメージしますから、小さくて華やかなハナダイの仲間がひとつの科として独立したことは、私たちダイバーにしてみればスッキリ!

ハナダイの仲間はサンゴ礁を中心とする暖かい海にもいますが、伊豆半島など南日本でも多くの種類が見られます。現在のところ、ハナダイ科は世界で170種ほど知られており、日本からは60種以上が報告されています。

華やかな体色の小さな魚

スミレナガハナダイのオス

スミレナガハナダイのオス。うっすらと色づいたヒレには、精緻な模様が入る。体側には四角い紫の模様があり、暗い海中でもよく目立つ

ハナダイの仲間の特徴は、第一に華やかな体色が挙げられます。赤やオレンジなどの暖色系をメインに、紫や黄色などが入り混じった模様は非常に美しい。また、よく色変わりすることが知られ、特に繁殖期のオスは独特の色や模様を出すことがあります。
体形はいたって普通、いわゆる「魚」というイメージ。大きさは10cm前後の種類が多く、全体に「小さな魚」ですね。

メスとオスで模様が違う

サクラダイという種類のオスとメス

「2種類のハナダイが写っている」ように見えるが、どちらも同じサクラダイという種類のオスとメス

ハナダイの仲間は多くの種類で、雌雄によって模様が異なります。サクラダイの場合はオス(左)の体側には美しい真珠模様があり、メス(右)にはありません。
ハナダイの仲間は「メスからオスへと性転換」することが知られており、模様もそれにつれて変わります。
サクラダイではメスとオスの模様が入り混じった個体がたまに観察され、おそらく性転換の途中であろうといわれています。

捜索には水深も要チェック

水深30mほどの深場を好むマダラハナダイ

水深30mほどの深場を好むマダラハナダイ。水深数m程度の浅場に上がってくることはまずない

ハナダイの仲間は、浅いところで見られる種類、深場にいる種類というふうに生息水深が比較的はっきりしています。
例えば、伊豆半島・大瀬崎のような急傾斜のビーチポイントでは、エントリーしてすぐの浅場ではキンギョハナダイと出会います。水深15~20mを超えるとサクラダイやナガハナダイが現れ、さらに進むとスジハナダイという具合。深く潜るにつれて変化するハナダイの種類を楽しめるというわけです。

「見たい」「撮りたい」ハナダイがいるのなら、水深も含めどのような環境を好むか事前に調べておくといいですね。

ダイバーが見たいハナダイ20選

海の中でひときわ目を引くハナダイたち。その中でもダイバーに人気が高く、「一度は見たい」「撮りたい」と憧れられる種類を厳選して紹介します。色彩や生態の違いを楽しみながら、お気に入りの一種を見つけてみてください。

どこでも見られるハナダイ界の有名魚
1 キンギョハナダイ

キンギョハナダイ

水深数mの浅場から見られる普通種。南日本では初夏から秋にかけては、しばしば非常に大きな群れが見られる。個体数が多いだけではなく分布も非常に広い。そのせいかオスの体色には地理的変化が見られ、日本近海(写真)では淡い色彩が上品だが、紅海やグレートバリアリーフなどで赤味が非常に強い。大きさ5~10cm ●分布/南日本の太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、琉球列島;インド-太平洋

キンギョハナダイのメス

メスは全身オレンジ色で、オスの胸ビレにあるような赤い斑紋や背ビレから糸状に伸びる白い鰭条がない。また、オスより圧倒的に数が多い

このハナダイを見たいなら伊豆半島がベスト
2 サクラダイ

サクラダイ

濃い暖色に白い斑紋が散ったオス(写真)の模様が、桜の花びらを連想させることから和名がついた。和名だけではなく、学名(Sacura margaritacea)にも「サクラ」が入る。伊豆半島の大瀬崎や伊東、熱海などでは、20m以深くらいから普通に見られる。雌雄が入り混じった群れをつくるが、たまにオスだけのこともある。大きさ10~13cm ●分布/南日本、伊豆諸島;台湾、朝鮮半島

サクラダイのメス

サクラダイのメス。以前は「オウゴンサクラダイ」と呼ばれ、別種と考えられていた。目立った模様はないが、背ビレ中央に黒い斑紋がある

オスもメスも模様があまり変わらない
3 スジハナダイ

スジハナダイ

雌雄ともに体側によく目立つ赤い縦帯があり、他の種との識別は簡単。ただ、婚姻色を出したオスや老成魚では、縦帯の色が薄れることがあるそうだ。大きな群れはつくらず、単独か数尾で見られることが多い。大きさ10~13cm ●分布/南日本の太平洋岸、伊豆諸島、琉球列島;インド-太平洋

深場に生息するハナダイ・マニアの憧れ
4 キシマハナダイ

キシマハナダイ

水深30m以深の岩礁域で見られることが多いため、通常のダイビングで出会うことはめったにない。美しい黄色の縞模様はオスの特徴で、メスにはない。オス1尾とメス数尾の小さな群れをつくる。大きさ5~8cm ●分布/伊豆半島、紀伊半島、伊豆・小笠原諸島;メラネシア、トンガ海嶺

小笠原・父島や久米島の深場で遭遇チャンスあり
5 ニラミハナダイ

ニラミハナダイ

日本で初めて観察されたのは、1992年の小笠原・父島で、座礁船があることで知られる「境浦(さかいうら)」。潮通しのいい水深40m以深を好み、会うチャンスはめったにないが、それだけにダイバー憧れのハナダイ。写真はオス。大きさ5~7cm ●分布/伊豆・小笠原諸島、琉球列島;ハワイ諸島を除く中・西部太平洋

ニラミハナダイのメス

メスは背中や各ヒレが美しい黄色。ハナダイはオスのほうが目立つものだが、ニラミハナダイはメスも印象的

「ゴンベ」と名がつくハナダイの仲間
6 ハナゴンベ

ハナゴンベ

水深20m以深とやや深場を好む。中層に泳ぎ出ることはなく、海底や岩肌の近く、亀裂などにいる。体形は丸っこく、雌雄で模様があまり変わらない。幼魚は頭部の斑紋が色濃く美しいため、ハナダイ好きには特に人気がある。大きさ5~8cm ●分布/南日本の太平洋岸、伊豆諸島、琉球列島;西部太平洋の熱帯域

出会えたら超ラッキーの深場の住人
7 マダラハナダイ

マダラハナダイ

通常は水深40m以深の深い岩礁に暮らしているため、ダイビングで出会うことはまれ。深場に生息するハナダイとして、キシマハナダイと並んでマニアの憧れだ。大きさ6~13cm ●分布/南日本の太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、琉球列島;西部インド洋

四角いパッチがオスの目印
8 スミレナガハナダイ

スミレナガハナダイ

潮通しのいいサンゴ礁外縁やドロップオフで見られ、水深は20m以深のことが多い。オス(写真)は体側に四角い模様が浮かび上がり、暗い海中で見ると蛍光を帯びて美しい。大きさ8~12cm ●分布/琉球列島;東部インド洋~中・西部太平洋の熱帯域

スミレナガハナダイのメス

メスは体全体が一様に明るいオレンジ色

日本で初めて発見された場所が和名の由来
9 ケラマハナダイ

ケラマハナダイ

水深10~30mほどのサンゴ礁で見られる。雌雄であまり模様が変わらないが、オス(写真)は背ビレに赤い紋があり、尾ビレ後端が丸い(湾入しない)という特徴がある。日本で初めて確認された海が、沖縄・慶良間諸島であったことから和名がついた。大きさ7~10cm ●分布/南日本の太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、琉球列島;インド-太平洋

派手な求愛行動が見事なパーフォーマー
10 アカネハナゴイ

アカネハナゴイ

潮通しのいい浅いサンゴ礁で見られ、しばしば大きな群れをつくる。オス(写真)は真っ赤な背ビレと長い腹ビレをもつ。素早く泳ぎ回りながら瞬時に広げたり閉じたりしてメスに求愛する様子は、クリスマスの電飾のようにも見える。大きさ7~9cm ●分布/琉球列島;東部インド洋~中・西部太平洋

雌雄ともに全身がパープルカラー
11 ハナゴイ

ハナゴイ

サンゴ礁外縁などで大きな群れをつくり、潮が流れているときは中層に泳ぎ出して動物プランクトンを食べる。オス(写真)は背ビレに赤い斑紋が入り、口先が尖っている。メスの口先は丸く、全身がオスと同じ紫色。大きさ6~10cm ●分布/伊豆・小笠原諸島、琉球列島;中・西部太平洋

東南アジアでよく見るハナゴイのソックリさん
12 パープルクイーン

パープルクイーン

ハナゴイのオスとよく似ているが、口から下アゴにかけて黄色いことで区別できる。背ビレの赤い斑紋は、ハナゴイも本種も大きさや入り方に個体差がある。メスは全身紫色で、背中と尾ビレ上・下葉に黄色いラインが入る。大きさ8~12cm ●分布/インド-西太平洋の熱帯域

ふだんは赤っぽく、繁殖期は白っぽく変身
13 カシワハナダイ

カシワハナダイ

水深10~30mのサンゴ礁に普通に見られ、活発に泳ぎ回る。繁殖期のオス(写真)は体側が白っぽくなり、中央に細い横帯が浮き出るが、通常は全体に赤っぽい。大きさ7~9cm ●分布/南日本の太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、琉球列島;インド-太平洋

尾の付け根の赤い縦帯がポイント
14 アカボシハナゴイ

アカボシハナゴイ

水深20m以深のサンゴ礁に生息し、日本ではやや珍しい。背中の模様がアサヒハナゴイとよく似ているが、本種は尾柄部に赤い縦帯があることで見分けられる。模様の雌雄差はほとんどない。大きさ4~6cm ●分布/琉球列島;東部インド洋~中・西部太平洋の熱帯域

狙い目は伊豆諸島や南日本の深い岩礁
15 アサヒハナゴイ

アサヒハナゴイ

背中に紅白の斑紋が交互に並び、尾柄部に赤い縦帯がないことでアカボシハナゴイと識別できる。やや深い岩礁域で見られ、模様の雌雄差はほとんどない。大きさ4~6cm ●分布/南日本の太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、琉球列島;インド-西太平洋

和名の由来は背と腹で色が異なること
16 フタイロハナゴイ

フタイロハナゴイ

あまり数は多くないが、潮通しがよく、周辺に砂地があるサンゴ群落の周辺で見られる。雌雄の模様はほとんど変わらないが、オス(写真)は背ビレの第2・3棘が伸びる。大きさ6~8cm ●分布/南日本の太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、琉球列島;インド-太平洋

体側に浮き出る赤い帯がチャームポイント
17 アカオビハナダイ

アカオビハナダイ

やや深い岩礁やサンゴ礁に生息する。鹿児島県・錦江湾では数百という大群で生息することが知られるが、ほかでは伊豆半島などで見られる。オス(写真)は体側に赤い横帯があり、これが和名の由来。メスはケラマハナダイのメスに似ている。大きさ8~12cm ●分布/南日本の太平洋岸、東部インド洋~中・西部太平洋の熱帯域

オレンジ色の小さな斑点がかわいらしい
18 オオテンハナゴイ

オオテンハナゴイ

水深1~70mと幅広い水深に生息する。日本ではあまり見られないが、パラオなどでは浅場から大きな群れが見られる。体に小さい斑点が多数入ることが特徴で、模様の雌雄差はあまりない。大きさ5~6cm ●分布/伊豆諸島、琉球列島;東部インド洋~中・西部太平洋

岩礁の深場で大きな群れが見られることも
19 ナガハナダイ

ナガハナダイ

深場を好むハナダイで、水深30mより深い岩礁では大きな群れが見られることが知られている。西伊豆・大瀬崎などでは、サクラダイの群れと混泳していることも。オス(写真)は繁殖期になると婚姻色となり、体の前半が赤く染まる。大きさ8~12cm ●分布/南日本の太平洋岸、伊豆諸島;台湾

伊豆大島や伊豆半島の深場で遭遇チャンスあり
20 コウリンハナダイ

コウリンハナダイ

水深30mより深い岩礁で見られ、雌雄ともに頭部に赤紫の「光臨」のような模様をもつ。よく見られるのは幼魚やメス(写真)。雌雄差はそれほど大きくないが、オスは背ビレや尾ビレの上・下葉の縁などが青白くなる。大きさ6~8cm ●分布/伊豆大島、相模湾、駿河湾、高知県柏島;インド-西太平洋

日本で見られる種類を中心に、ハナダイの仲間20種を紹介しました。キンギョハナダイやアカネハナゴイなど浅い水深で普通に見られる種類もいますが、中には深場に暮らす種類もいます。安全ダイビングを心がけつつ、いろいろなハナダイに会いに行きましょう!

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PROFILE

東京水産大学(現東京海洋大学)在学中、「水産生物研究会」でスキンダイビングにはまり、卒論のサンプルであるヤドカリ採集のためスキューバダイビングも始める。『マリンダイビング』『マリンフォト』編集部に約9年所属した後フリーライターとなり、現在も細々と仕事継続中。最近はダイビングより弓に夢中。すみません。

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