ダイビングで見られるスズメダイ20選~特徴、生態、似た種の見分け方などを徹底紹介
私たちに最も身近な海水魚のひとつ、スズメダイの仲間。伊豆半島など温帯の岩礁から沖縄のサンゴ礁まで、浅い海をのぞいてみると何種類ものスズメダイと出会います。今回は日本で見られる種類を中心に、ダイビングやシュノーケリングで人気のスズメダイ20種を紹介。特徴や生態、似た種の見分け方を知っておくと、次の海がぐっと楽しくなります。
スズメダイってどんな魚?
スズメダイの仲間は、世界の暖かい海から約400種が知られ、そのうち日本では1/4以上の約110種が生息しています。人気の種類を紹介する前に、スズメダイ全体の特徴を探ってみましょう。
スズメダイは「雀鯛」

サンゴの周囲を乱舞するデバスズメダイ。危険を感じると、一瞬でサンゴの隙間に隠れてしまう
スズメダイの仲間は、ほとんどが大きさ8~15cm程度の小型種です。丸みを帯びた体形が特徴で、漢字にすると「雀鯛」。雀といえば私たちの身近にいる小鳥の代表で、体形も丸っこい。ぴったりのネーミングですね。
なお、「すずめ」とは「すず」と「め」という古語が由来だそうです。「すず」は小さい、「め」は群れを意味しており、「すずめ」とは「小さくて群れるもの」。実際、スズメは小さな群れをつくっていますし、スズメダイも群れで行動する種類が珍しくありません。
卵を守るのはオス。スズメダイは海の“育メン”

卵を守るオヤビッチャ。背後の壁面をよく見ると、紫色の卵が産みつけられていることがわかる
スズメダイの仲間には、メスが産んだ卵を孵化するまでオスが保護する習性があります。
まず、オスが産卵床(メスが卵を産みつける場所)を整えます。産卵床は種類によって異なり、例えば岩や石の上を掃除して使うコガネスズメダイ、海底の転石の下に巣穴を掘るソラスズメダイなど様々です。
メスは卵を産みつけると立ち去ってしまいますが、オスは産卵床から離れません。卵を狙って近寄る魚などを見つけると追い払い、ときにダイバーに体当たりし、噛みついてくることもあります。まぁ、小さいので大事には至りませんけれど。

びっしりと産みつけられた卵。ヤマブキスズメダイはムチカラマツ(写真)やヤギなど刺胞動物の上を産卵床とする
親子でガラリと変わる模様
スズメダイの仲間の中には、成長につれて模様が激変するものがいます。例えば、ルリホシスズメダイやヒレナガスズメダイなどなど(いずれも後半で紹介)。
模様が変わる理由はよくわかっていませんが、なわばりをつくる種類の場合は、成魚からの攻撃を避けるためと言われています。同じ模様だと同種のライバルとみなされてしまいますが、異なる模様なら「な~んだ、他の種類か」とスルーされるというわけです。
例えば、親子で模様が異なるミヤコキセンスズメダイ。
生息密度が高い環境では、かなり体が大きくなっても幼魚の模様のままということがよくあるそうです。しかし、水槽で単独飼育をすると、かなり小さいうちから成魚の模様に変わり始めるそうです。このことから、成魚からの攻撃頻度などによって、模様の変化がコントロールされる可能性が示唆されます。
日本で見られるスズメダイ19選
ここからは伊豆半島や沖縄で見られる種類を中心に人気のスズメダイを紹介。いずれも大きさは10cm前後です。種類を覚えてから潜るとダイビングが数倍楽しくなりますよ。
知っておきたい基本のスズメダイ
背中の黄色がポイント
オヤビッチャ

浅いサンゴ礁や岩礁に生息し、沖縄ではスノーケリングでもよく見られる普通種。表層近くで群れていることもある。●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島;インド-太平洋
尾ビレに入る黒帯が目印
ロクセンスズメダイ

よく似たオヤビッチャ(上)と同じような環境に生息し、しばしば混泳している。背中の黄色がなく、尾ビレに黒帯が入ることで識別可能。●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島;インド-太平洋
体側の横帯が淡い
クラカオスズメダイ

水深15mまでの浅いサンゴ礁で見る普通種。オヤビッチャやロクセンスズメダイに似ているが、全体に模様が淡いことで見分けられる。●分布/琉球列島;東部インド洋~中・西部太平洋の熱帯域
光の加減で体色は青~緑に変化
デバスズメダイ

水深数mほどの浅いサンゴ礁で大きな群れをつくっている。危険を感じると一瞬でサンゴの隙間に隠れてしまうが、静かに待っていると再び出てくる。●分布/琉球列島;インド-太平洋
青い体に背筋の黄色がよく映える
セナキルリスズメダイ

水深20m以深のやや深いサンゴ礁に生息。潮通しのよい場所を好み、数尾でいることが多い。警戒心が強く、近寄りづらい。●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島;西部太平洋の熱帯域
南日本でも繁殖行動が見られる普通種
ソラスズメダイ

水深10mほどまでの浅い岩礁やサンゴ礁に生息。転石やガレキサンゴの下にオスが産卵床をつくる行動は、伊豆半島でも初夏から観察される。●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島;東部インド洋~中・西部太平洋の温・熱帯域
前半の青と後半のレモン色がキュート
レモンスズメダイ

水深5m以浅の岩礁やサンゴ礁に生息する普通種だが、波の荒い場所を好み、すぐ岩穴に逃げ込んでしまう。●分布/南日本の太平洋岸、伊豆諸島、琉球列島;東部インド洋~西部太平洋の熱帯域
3本の黒い横帯で覚えやすい
ミスジリュウキュウスズメダイ

浅いサンゴ礁で見られる普通種。枝状サンゴの周辺に群れ、危険を感じると一瞬で隙間に逃げ込む。デバスズメダイやフタスジリュウキュウスズメダイなどと混泳する。●分布/琉球列島;インド-太平洋
2本の黒い横帯が目印
フタスジリュウキュウスズメダイ

浅いサンゴ礁に生息し、枝状サンゴの周辺で群れている。ミスジリュウキュウスズメダイと似た姿と生態。幼魚(写真)ほど「二筋」が鮮明で、成魚になると薄れてしまうのが少し残念。●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;東部インド洋~中・西部太平洋の熱帯域
よく似た種類が多いのでご注意
コガネスズメダイ

水深20~30mのやや深い岩礁に生息。オスは岩や石の上を掃除して産卵床とする。タンポポスズメダイなどよく似た種類が多くまぎらわしい。●分布/南日本の太平洋岸、伊豆諸島;西部太平洋
ヤギ類の近くを探してみよう
ヤマブキスズメダイ

水深10~30mの潮通しのいい場所に生息。あまり泳ぎ回らず、幼魚・成魚ともにヤギやイソバナの近くにいることが多い。●分布/琉球列島;東部インド洋~中・西部太平洋の熱帯域
親子で模様が変わる種類
幼魚の模様は阪神タイガース
ヒレナガスズメダイ

3cmほどの幼魚はサンゴ礁の浅場にいて、あまり泳ぎ回らない。、黄と黒のツートンカラーは一度見たら忘れないほど印象的。成長につれて縦縞は薄くなり、全体に暗色となる。●分布/琉球列島;東部インド洋~西部太平洋の熱帯域
瑠璃色の星は幼魚ほどキレイ
ルリホシスズメダイ

(写真/堀口和重)
成魚は水深12mほどまでの浅いサンゴ礁に生息。なわばりをもち、単独生活をおくる。幼魚は季節来遊魚として、南日本でもたまに見られる。●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島;インド-太平洋
青白い三ツ星は幼魚ほどクッキリ
ミツボシクロスズメダイ

1cmほどの幼魚はイソギンチャクやウミシダの近くにいることが多く、季節来遊魚として南日本でも見られる。成長につれて白点は薄くなる。●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;インド-太平洋
容姿自慢の幼魚たち
青黒くて地味な成魚より人気
クロスズメダイ

この美しい姿は幼魚のときだけ。成長すると全身暗色の地味な姿となる。幼魚・成魚ともに浅く穏やかなサンゴ礁に生息し、成魚は20cmにもなる大型種。●分布/琉球列島;インド-太平洋
背中の蛍光ブルーがよく目立つ
ミヤコキセンスズメダイ

明るい暖色にブルーラインが美しい幼魚は、浅く潮通しのいい岩礁で夏は南日本でも見られる。成長すると全身暗色の地味な姿になる。●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島;インド-太平洋
晩夏に見られる定番の季節来遊魚
メガネスズメダイ

幼魚は夏から秋にかけて、伊豆など南日本の浅場で見られる。成魚は浅いサンゴ礁に生息するが、全体に黒っぽく地味。●分布/南日本の太平洋岸、伊豆諸島、琉球列島;東部インド洋~西部太平洋の熱帯域
青を基調に黄色のヒレがおしゃれ
カンザシスズメダイ

以前はモンスズメダイと混同されていた種類で、2017年に新種として記載された。小さい幼魚ほど美しいが、成長につれて暗色となる。●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島;インド-太平洋
小さいほど青味が濃くキレイ
ナガサキスズメダイ

幼魚は青い体と背ビレの眼状斑が印象的で、ウミシダやヤギなどの近くにいることが多い。成長につれて黒っぽくなる。●分布/南日本の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島;インド-太平洋
※眼状斑:周囲が白く縁取られた、黒または暗色の斑紋。眼状紋ともいう。
番外編:世界最大級のスズメダイ!
最後に番外編として、皆さんにぜひ見てほしい種類を紹介して終わりといたします。残念ながら日本には生息していませんが、水族館で会えるかもしれません。
ケルプの森の緋色の“巨人”
ガリバルディ


日本産のスズメダイは大きくても15cm程度ですが、ガリバルディは成長すると30cmを超えるという大型種。ジャイアントケルプという海藻が繁茂する冷たい海に生息し、現地ではよく見られる普通種。●分布/モントレー湾からバハカリフォルニア、グアダルーペ島にかけての東部太平洋
スズメダイの仲間はこのほかにもたくさんいますし、似通った種類も多いグループ。興味を持った方は、ぜひ次回のダイビングでどんなスズメダイがいるか探してみましょう。その際は図鑑も持っていくと楽しいですよ。

