ダイビング前中後の運動って、体にいいの?~運動の減圧症への影響・専門家のさまざまな意見~
やどかり爺の楽しみは、DANのサイトをのぞくことで、そのエキスパートオピニオン(専門家の意見)というコーナーが大好きであります。
これまでにも何度かご紹介してきました。
好きな理由は、減圧症というのは、まるで正体のつかめない、これだと断定しきれない、専門家ですら意見が分かれる、厄介な病気であるということ、これを専門家が正直に意見を戦わすところであります。
これは私ごとき、単細胞人間には、どれを信じてよいやら、困ったことでもありますが、見方を変えれば、どの意見にもそれぞれの真実があるということでもあります。
減圧症の最大の要因はもちろん、深度と時間なのですが、ダイバーの体調つまり生理的なファクター、その他環境条件、さらにはダイビング中、前後の運動などもあります。
これは誰もが知っておることであります。
これらのファクターをどれほど軽減するかが、減圧症の予防ということになります。
あえて大げさに言えば、ダイブコンピューターは多くの減圧症のファクターのうち、深度と時間ファクターの情報をくれるにすぎないともいえるわけであります。
そんなわけで、減圧症にならないためのコンディションづくりについての、DANのエキスパートオピニオンを、長いので3回に分けてご紹介します。
その1.運動とダイビング
その1、運動はダイビングによいのか
Q.
ダイビングと運動に関して、ダイビングの前後の強い身体活動を避けるというのは、広く言われていることですが、ある種の運動が減圧症のリスクを減らすとも言われています。
運動は減圧症のリスクを高めるのか、減らすのでしょうか。
運動とダイビングについて、アドヴァイスがありますか?
ダイビング前の運動がよいことを発表する研究者が増えています。
しかしそのメカニズムははっきりしていません。
(体を)”動かす“のがその鍵のようです。
運動のよさの理由は、心臓、血管系、リンパ系が動くことによるようです。コンスタンチーノ・バレストラ(DANヨーロッパ水中高圧医学会副会長ベルギー)
ダイビングと運動の関連性はここ数年大きな関心事になっています。
従来の考え方は、ダイビング前の運動はDCI減圧症のリスク要因とされていました。
理由は循環が増すことにより、組織の窒素の吸収が高まるというものです。しかし最近の研究ではこの理由は簡単すぎるとされています。
最近の動物と人体実験では、シミュレーションダイビング前24-2時間前までの中程度、強い運動では気泡形成、したがってDCIのリスクも下がることを示めしています。
理由は明確ではありませんが、(中略)運動中に気泡を形成するマイクロヌクレイ微小核が取り除かれるためかもしれません。
たくさんの仮説があります。
中には運動によるこの予防効果は中程度の血液量減少という説もあります。
ダイビング2時間前までの運動が害があるという証拠はありませんが、運動をすることを私は積極的にアドヴァイスをしません。ダイビング中の過度の運動は窒素の吸収を高めるのでDCIのリスクを高めますが、減圧中の軽い運動はガス排出を助けるのでDCIのリスクを減らすとされています。
さらにダイビング後の強い運動は、動作による気泡形成を促進するので、好ましくありません。マイケル・ベネット(ニューサウス・ウェールズ大学高圧医学教授オーストラリア)
ダイバーの定期的な運動はお勧めできます。
ダイビング前のエアロビックス運動は、血管での気泡形成を減らします。
ダイビング後の運動は気泡形成を増やしたり減らしたりします。
その効果はダイバーの一般的な体調によります。
しっかりしたやり方を推奨するだけの情報がありません。アルフ・ブルバック(ノルウェイ科学技術大学環境生理学)
一般的な体調作りのための運動は、よいというのは理解できるところでありますが、ダイビング中は過度の運動を避けるのと、減圧中の適度の運動との違いをどうやって区別するのか、この過度とか適度というのは、非常に難しいというか、具体性にかけるのが、ヤドカリ爺のようなへっぽこダイバーは困るのであります。
DANのサイトで意見を述べるのは、それなりに実績のある先生方でしょう。
減圧症というのは、もともとつかみどころのない病気、つまり理屈はそうだが、どうすりゃ大丈夫というのが、よくわかっていないということを物語っているようであります。
ということは、このさまざま意見があるということを理解することが重要なことなのでありましょう。
専門家といえども、あまり断定的な言い方をする先生はこれまた、問題ではありますな。
今日のところはこの辺で、、、。
次回は水分摂取のお話をご紹介いいそうと思っております。
※詳しいことはぜひDANの「Alert Diver Magazine Online」をお読みください。