こんなダイビング本が欲しかった!知識を広げたいダイバーのための中級テキスト「Deco for divers」

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ダイビングを始めたころは、いやそれからしばらく経ってインストラクターになった1970年代になっても、ろくなテキストもない時代のダイバーであるヤドカリ爺にとっては、ダイビング関係の情報が充実している今の時代はうらやましい限りであります。

やどかり仙人コラム

コースごとに立派なマニュアルがあって、それなりのハウツーは即座に勉強できるわけであります。
言ってみれば、ダイビングをどうやればよいかというテキストは氾濫しております。
つまり、ハウツーは充実の時代なのであります。

ところが、であります。
なぜなの?どんな理屈でそうなるの?という、もう一歩だけ踏み込んだお勉強をしたいといった時のなぜ“WHY”についてのガイドブックは、まるでないのであります。
 
例えば、今や安全停止は、ほとんどマストの標準的なダイビング手順でありますが、ではそれがどんな根拠でどんな効果があり、なぜ5mで停止し、3~5分なんてあいまいな時間なのか、なかなか納得できるような説明をしてくれる本は少ない、いやほとんど皆無なのであります。

コンピューター全盛の時代でありますが、ダイブコンピューターがどんな理屈で(アルゴリズムなどといいますが)減圧情報を提供するのか、ひいては自分の使っているダイブコンピューターが楽観的なのか・保守的なのか、なんてことを知りたくても、まずそんなテキストはありません。

その一方で、本当にシリアスな、テクニカルダイビングなどのダイバーのためのテキストは、それなりに存在しております。

この中間域を埋めるテキストがないのであります。
あっても、どこか研究者やらお医者さんの、上から目線の教科書的概論がほとんどであります。

セブ島のダイビング(撮影:越智隆治)

先ほどの例で言えば、「なんで安全停止は5分なの?」「もっと長くやればやるだけいいのでは?」「なぜ10分ではないの?」と、インストラクターに突っ込んでみてください。
10分でない理由がしっかり説明できれば、そのインストラクターは信用できますな。

西伊豆から御殿場越えで東京に戻ることは、減圧症の原因になるといわれておりますが、ではいったいどれほど待てばよいのか、それにはルールはないのか、というのは、素朴かつ真剣な疑問でありますが、ある程度の研究もルールもあるのですな。

このような、ダイバーの質問に応えられるようにと書かれたテキストが、マーク・パウエルというイギリスのインストラクターがこつこつと自分の勉強をかねて、自分の講習用のテキストのために基礎的な論文や情報を集めてまとめた「Deco for Divers」(ダイバーのための減圧理論)です。

Deco for Divers」(ダイバーのための減圧理論)

序文にあるとおり、ある程度の知識レベルのダイバーに質問されたときに、きちんと答えられる資料がなかった。
だから基礎的な研究や論文を探さなくてはならなかった。

これぞダイビング・インストラクターの鏡でありますまいか。

今から6年ほど前に、ヤドカリ爺は、この「Deco For Divers」を知りました。
ダイバーのための減圧理論ガイドというのがサブタイトルです。

語学の才に乏しいヤドカリ爺でありますが、辞書を引き引き、ポツリとポツリと読むと、目から鱗の連続でありました。ダイビングの基礎理論の、読む百科事典ともいうべき内容でした。
大事なところは、現場ダイバーの目線です。

残念ながら英国のインストラクターが書いたテキストです。当然英語なのですが、もともと知っていた領域のお話です。
テキトーに想像すれば、どうにか読めるものです。

ヤドカリ爺は、自分用に翻訳をして、必要なときに、読み返しております。

■Deco for Divers 版元のアクアプレス社の販売ページ
AquaPress.co.uk – diving books, underwater photography books and information about scuba diving and snorkelling

■amazon
Deco for Divers: Decompression Theory and Physiology
※日によって、値段に大きな差があります。

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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