Q.安全停止はなぜするの?

ダイビング歴45年・やどかり仙人のアップアップ相談室

4月の半ばに雪が降る。テラ和尚の旅、多難そう。まー修行じゃ。
無事にいってこいと思ったところで、ヤドカリ相談室の催促電話。

前回は、安全停止を忘れて心配になった方への回答として、
無減圧のダイビングでなら、たぶん大丈夫でしょうという、申しました。
安全停止の安全という言葉の意味について、考えてみましょう。
※前回は→こちら

この”安全”って言葉、なかなか曲者であります。
とりようによっては安全を保証するみたいな、
えらく楽観的にも、あるいはしなけりゃ危険といった、
こちらはかなり怖-い意味にもとれますな。
この怖-いニュアンスがご相談のおもむきのようです。

ちょっとここで脇道にそれますが、
いつごろからこの安全停止が始まったからというと、
1960年代の終わりごろに、無減圧ダイビングをしても、
減圧症の症状を起さない気泡があること、
いわゆるサイレントバブルが発見されます。

それまでは、気泡の存在=減圧症と信じられていたので、
それまでの常識がくつがえる、びっくり仰天の大騒ぎになります。
こんな背景の中で、1975年、南カルフォルニア大学のビルマニスという先生が
減圧停止をしないでよいダイビングで停止をする、
今で言う安全停止の実験を行いました。

結果、わずか2分の停止で、
なんとサイレントバブルが1/5に大きく減っていたのです。
このような研究結果を受けて、気泡=減圧症ではないものの、
少しでもサイレントバブルを減らした方がよいだろうと、
安全保証ではない安全保険としての、安全停止が提唱され始められます。

5m前後に3分間(かなりアバウト)するだけでよいという手軽なテクニックなのですが、
それでも15年ほどの時間を経て、
1990年代の初めにリクリエーションダイビングで急速に一般化します。

しかしながら気泡の数が多ければ、
減圧症のリスクは高いことは分かっているのですが、
どれぐらいの気泡が血液中にあると減圧症になるといった
詳しい関係はよく分かっていないようであります。
それでも気泡がないほうがよいので、
現在多くのみなさんが先生たちの提唱を守って、
安全停止というか、サイレントバブル減少停止をなさっているわけです。

ここで結論を申し上げておきましょう。
安全停止はしたからどう、しなかったからどうというよりも、
あくまでも不必要なトラブルを避ける”安全保険”と考えたらよろしいということであります。

いやいや、この”安全保険”というのは、
わたくしヤドカリ爺ごときが言うことではございません。
レイモンド・ロジャース博士という、
かのPADI のRDPダイブテーブルを開発した偉い先生のお言葉です。

では、次回は、 ロジャース先生のおっしゃる 安全停止の効果について、ご紹介しましょう。
あまり引っ張ると和尚某の催促がうるさいのでなるべく早く……。
 

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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