Q.安全停止はなぜ5mで3分なの?

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ダイビング歴45年・やどかり仙人のアップアップ相談室

皆さんはさぞやGWのダイビングを楽しんでおられるのでしょうが、
そんなものとは無縁で和尚に追い立てられるままに今日も原稿を送りしましょう。

昨日、予告したとおり、安全停止の最後のお話。
※昨日は→こちら

安全停止は、なぜ5m、なぜ3分停止?

もともと5mというのはマストじゃなかったのですね。
さほど厳密なものじゃなく、
最初の頃はおよそ10-20フィート(3-6m)でよいとされていました。
その後混乱をさけるためでしょうか、
15フィート、メートル法の国では5mに統一されております。 

では、なぜ5mということになりますな。
わずか5mといっても、水面の1.5倍の周囲圧力。
これぐらいの周囲圧力が、高すぎず、低すぎず、
窒素の排出に、都合のよい圧力差とされております。
排出のスピードだけを考えれば、
伝統的なアメリカ海軍などの最終停止深度3mの方が効率がよさそうですが、
浮力コントロールのしやすい15フィート、5mとされたようです。

ときどき5mをぴったりキープしようなんて目の色を変えている
ダイバーもおられるようでありますが、リクリエーションダイバーにとっては、
あくまでも減圧症予防のテクニックであって、
停止深度はそれほどシビアーな問題じゃないようでございます。
もっと気楽にと申し上げたい。

では、なぜ3分?

長けりゃ長いほど減圧効果がありそうなもの。
窒素の排出は、最初は早く、その後は遅くなります。
特に安全停止は、窒素の排出の早い、いわゆる”早い組織”を対象にしているので、
3分間でも十分効果がある。反対に10分頑張っても、
理論的にはあまり効果はないということになっています。

そして、安全停止には見落とされがちな効果があります。
それは、浮上を遅らす効果

最も圧力の変化の大きい水面近くでは、一定スピードで浮上すると、
どんなダイバーも事実上浮上スピードが速すぎることになるわけ。
そこで5mでの3分停止は、浮上スピードを遅らせて気泡の成長を避けるだけでなく、
肺の過膨張などの事故も防げるというのも、1つの理由とされております。
すでに浮上スピードは10m/分、9m/分などグーンと遅くなっており、
技術的にもこれ以上遅くするのは至難の業。
安全停止は現実的なスピードコントロールってわけ。
また確実に5mで停止するのが習慣になっていれば、
肺の過膨張事故は防げるという、利点もございます。

長々としたお答えになっちまったので、ここでもう一度まとめておきましょう。

とにかく、安全停止は深度や時間を気にせず、まず停止することが大切。
特に深いダイビングをしたときには、
短時間の安全停止でもかなりの窒素を取り除くことができるということ。
安全停止も減圧停止もどちらも、言葉は違っても減圧のための停止です。

安全停止はあくまでも、自主的に行う減圧停止なのですが、
最近のPADIのテキストでは、深いダイブ、無限圧リミットに近いダイブをしたときには、
必ず安全停止をするとしており、
現実的にはすべてのダイビングでマストになってきたといえそうです。

と、マー、ヤドカリ仙人は、分かった風なことを書いておりますが、
ダイビングの生理学者レイモンド・ロジャース先生が、
安全停止が提唱された頃に、インストラクター向けに書いたご意見をもとに、
お答えしたものであります。

この記事が、GW後半戦、皆さんが安全に楽しく潜る一助となれば幸いです。

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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