バディダイビングはタブーでもなんでもない。やらないことはビジネスの損失
近年、「バディダイビング(セルフダイビング)」と「フリーのインストラクター」をサポートするなど、”攻めている”印象を持つ白崎海洋公園。なぜ、そのようなマーケティングを行なうのでしょうか。白崎海洋公園の支配人であり、マレア・クリエイトの統括部長である中西剛史さんにお聞きしました。
全4回連載(4日連続)でお届けします。
なぜ、白崎海洋公園が“攻めている”と感じるのか
寺山
本題に入る前に、僕が”攻めている”印象を受けている理由を伝えないと、ピンと来ない方も多いかもしれません。
そこで、まずは背景をお伝えしておくと、白崎海洋公園は、由良町から指定管理事業を受託している(一社)白崎観光プラットフォームが運営。
そのダイビング部門運営の委託を受けているのが、日本最大規模のダイビングスクール(ショップ)事業を展開するマレア・クリエイトです。
そして、バディダイビング(セルフダイビング)やいわゆるフリーのインストラクターを応援するというのは、都市型ダイビングショップのマーケットを奪ってしまう、もっと俗的にいえば「客を取られる」という考え方があります。
客をとられないため、都市型ダイビングショップのネガティブな面を表す言葉として使われるのが”囲い込み”。
情報をクローズし、依存度を高める囲い込みの中では、バディダイビングは敵であるとか、そもそものCカード講習の集客の段階で敵となるフリーのインストラクターは排除という思考になるのも、まあ、わからなくはありません。
近視眼的で広がりのない考え方だと思う一方、僕のように、捨てるものがないから(笑)率直に言えることでもあるとも思うわけです。
それが、マレアといえば、いわゆるダイビングショップとしては日本最大規模で、僕からしてみると、“超ダイビングショップ”(笑)。
そもそも、ダイビングショップの会社がバディダイビングやフリーインストラクターをサポートするというのが、”攻めている”という印象を受けるんですよね。
中西
単純に、大事にしていることは、マレア・クリエイトの理念であり、ビジョンとミッション。そして、「人と自然をつなぐ」のがビジョンで、その大前提として、当然、社員の安心と安全が最も大事なこと。
それは、どこで何をやっても同じで、都市型のスクールと現地のセンターとではやり方が違うというだけです。
現地ダイビングセンターとして考えると、ダイビングショップがゲストを連れて来るのを待っているだけではどんどんゲストが少なくなるだけだし、もっと大きな視点から、自分たちだけが儲かるのではなく、業界としてダイバーの数や潜る回数を増やすことが大事。
そう考えた結果、行きついたのが、まずはバディダイビングだったんですよ。
バディダイビングをやらないことは
ビジネスの損失
寺山
僕らもまったく同じ結論にいたって「BuddyDive」 というサイトを立ち上げた。そんなとき、「なんか、西の方に同じこと考えている人がいる」ってことで興味を持ったわけですが、バディダイビングという結論にいきつくまでの考え方をもう少し詳しく聞かせてください。
中西
バディダイビングを受け入れていると言っても、やっぱり僕も寺山さんが言うところの“超ダイビングショップ”(笑)しかやったことがなく、現地は初めてだったので、最初はとまどっていたんですよ。
(一社)白崎観光プラットフォームからダイビング部門の運営委託を受けてから丸4年ですが、バディダイビングを受け入れたのはここ2年くらい。
最初に現地施設をやることになったとき、バディダイビング(セルフダイビング)というダイビングスタイルに衝撃を受けた。むしろ、「そんなんやってええの?」って。
事故起きたらどうするの? どうやったらいいの? とグレーなことが多すぎて、実は、最初は断っていました。
でも、よくよく考えてみると、Cカード認定の定義って、「バディ同士でストレスなく楽しむ」のがモットーなはずで、「なんかおかしくない?」「うちら間違ってない?」と疑問が出てきました。
そこから、だんだん、本気で受け入れる方向で動き出しました。
寺山
そこに、ビジネスチャンス的な視点もあるわけですよね?
中西
もちろん。
ただ、チャンスというより先に、需要があって、マーケットの可能性があり、それが正しいことなのにやらないのは、ビジネスの損失だなって。
それに、白崎海洋公園の特性を考えれば、自らがガイドや講習をするより、バディダイビングを受け入れる環境を整えた方が、客単価も高く、社員の負担も減らすことができるので、悪いことは何もないわけです。
寺山
もっといえば、ダイビング全体のマーケットを考えると、選択肢を増やすことの方が合理的。100のうち80を取りにいくのではなく、100を150にして100を取ればいいわけですものね。考え方としては単純。
それに、単にダイビング内での選択肢を増やすだけでなく、組み合わせやダイビングのメソッドを活かすことが大事だということを考えると、白崎海洋公園としてはキャンプや道の駅、マレア・クリエイトとしては教育ってことにもつながってくる。
中西
そうです。やらない理由がないのです。
(続く)
(撮影/中村卓哉)
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