エンドユーザーを向くべき ~ショップからの収益が8割でも個人ダイバーを応援する理由~
バディダイビングはタブーでもなんでもない。やらないことはビジネスの損失
批判も聞いたことがないし、懸念もない
エンドユーザーを向けばいいだけ
寺山
バディダイビングはやって当たり前だということはわかりました。ただ、言うは易し、貧すれば鈍するで、そういう視点にならない人も少なくない。囲い込みの邪魔をする要素は排除したい人もいるわけです。
で、もう一回言うと、捨てるものがない僕と違って(笑)、今度は、白崎海洋公園を現地ダイビングセンターとしての立場を考えた時、これまでの最大顧客であるダイビングショップにそっぽを向かれるという懸念はありませんでしたか?
中西
ない。今もダイビングショップのゲストが8割ですが、ショップさんに対して真面目にサービスを提供して、「おかしいものはおかしい」と正しいことをやればいいだけだと思います。
それに、日本最大規模のダイビングショップとして、ダイバー数を増やすために、業界を引っ張るという自負もありますし。
もし批判をされたら、「じゃあ、使わなければええやん」って思うだけですし、エンドユーザーを見た商売に切り替えないと。
そもそも、料金表が無い施設なんておかしいと思いません?
寺山
料金表が無い? どういう意味ですか?
中西
ダイビングショップはそのお店なりの料金設定をしているので、違う料金が見えてしまうとマズイってことで、出さない現地も多いんですよ。
寺山
なるほどー。そういえば、ショップ用の施設と個人客用の施設を分けているセンターさんもありますね。そこまでやるんだ!と逆に感心しましたけど。
そういう料金の表示もですが、バディダイビングを楽しんでいるダイバーが増えて目に見えるようになってくること自体、ネガティブにとらえる方もいると思いますが、バディダイビングをガンガン推進して、ショップからの影響はないんですか?
中西
ない。直接、そういう話を聞いたこともないし。
逆にショップは増えています(笑)。
外から見てなんでやと思いますか?
寺山
まず、中西さんのキャラが大きいかも(笑)。
冗談のようですが、背景にある理念を含めて「おかしいものはおかしいやん」って言える人は強いですよ。しかも実際に力もあるし。
(後日、現場スタッフに聞くと「遠まわしにはバディダイビングを妨害するような動きはありますよ。でも、中西のキャラで、直接言う人はいないんでしょうね(笑)」)
以前、伊豆のダイビングセンターで、器材販売店がモニター会をやろうとしたとき、告知までしていたのに横やりが入って中止になったことがありました。中西さんなら、絶対に中止しないでしょ?(笑)
中西
当たり前ですやん。
エンドユーザーにとって、いろんな器材を試せるのはいいこと以外にない。
中止にする意味がわかりません。むしろ絶対にやるべきだと考えます。
寺山
そう言うと思いました(笑)。
そういうキャラ、と言っちゃうと語弊がありますが、根底にある真剣な理念がちゃんと浸透しているのがまずひとつ。
それと、ダイビングセンターとしては、大阪から1時間半のアクセスやプール、宿泊などのハード面が圧倒的ですよね。
伊豆だと、この規模だと西伊豆の101が似た存在ですが、アクセスが圧倒的に違う。
東伊豆の伊豆海洋公園が西伊豆よりはアクセスがよくて施設もよいですが、室内プールも含めて、Cカード講習だけを考えると白崎の方がやりやすい。
関西のショップが講習をやるにはとても良い環境ですし、僕がイントラ復活したら、近くにあったら使いたいですもん。
ぶっちゃけ、ファンダイビングとしては、伊豆海洋公園とかと比べると物足りないって思いますが(ごめんなさいw)、バディダイビングを始める海としては最適だと思いますし、今回、同行の「何を撮るかでなく、どう撮るか」がモットーのカメラマン、中村卓哉君なんかは面白がって撮影しています。それに、ただ浮遊感を楽しみたい人もいれば、友達を連れて潜りたい、彼女にいいところを見せたいなどなど、ダイビングの楽しみ方、ポイントの良し悪しはその人次第ですしね。
中西
BuddyDiveで登録しているダイビングセンターには、何か影響あったりしたんですか?
寺山
皆さん、ほぼ共感、同意でしたよ。問題意識も同じ。
ただ、やっぱりこれまでのショップさんに対してのケアは大事だと考えていらっしゃって、足並みそろえないとそっぽ向かれたら困るって意識はあったようで、スタートの段階で、その辺は慎重に動きましたけどね。
指導団体もメーカーも表立っては支援しにくい感じはありますよ。
中西
自分が話をすると、みんなウェルカムとは言うんやけどな~。
寺山
そりゃ、中西さんだからですよ(笑)。
指導団体もメーカーも頭ではわかっているんだと思いますよ。
販売ルートが多い方がそりゃいいですし、落ち込んでいるショップ販売に危機感もあるでしょうし。
だけど、現時点で収益の多くがショップである以上、モゴモゴしますよね、そりゃ。
逆に、中西さんが「バディダイビングけしからん!」って言う人だったら、自分が取引先メーカーの営業マンなら、とりあえず「ですよね~」って言いいますってば。だって「明日から、マレアの器材、全部チェンジ!」とか言われたら困るし、言いそうですもん(笑)。
とりあえずは、ビジネス的にいえばリスクヘッジしながら進める、悪い言い方をすれば、どちらにもいい顔するしかない状況じゃないですかね。
中西
これからは、エンドユーザーを見た商売に切り替えないといけないのは、目に見えているわけだし、思い切ってやったらええと思うんやけどな。
寺山
当たり前のことを当たり前にできるってのは、そう簡単じゃない。
だから、白崎海洋公園のダイビング収益の8割がショップなのに、バディダイビングをガンガンできちゃうのが攻めているって見えるんです。他のセンターでここまで明確にやっているところはないですから。
でも、心憎いのは、白崎海洋公園として、ダイビング事業じゃない事業もちゃんと並行させて成功させているところだったりもするんですけどね。ちゃんと2つ以上の事業を走らせている。
顔に似合わず戦略的なんですよね(笑)。
(続く)
■第3回
バディダイバーは1000人に届く勢い ~海況判断もダイバーの自己責任~
(撮影/中村卓哉)
白崎海洋公園の挑戦 ~中西剛史さんインタビュー~(連載トップページへ)
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