絶滅の恐れも!? タツノオトシゴを守るための最新アプリ「iSeahorse」

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iseahorse記事(提供:ボニー)

photo by Joe Platko

最近、タツノオトシゴの科学的知識や保護に希望を与えているのがスマートフォンの新アプリiSeahorse。

このアプリは、タツノオトシゴに関する新たな発見につながっています。
起動すると、誰でも、世界のどこにいても、「市民科学者」として海洋保護に貢献することができます。

野生のタツノオトシゴを見かけたら、いつでも手間をかけることなく目撃記録を残すのが狙いです。

そこで、iSeahorseプロジェクトに関わっているAsia Dive Academy Pte Ltd で、インストラクターにPADI Seahorse Specialty (PADIのタツノオトシゴスペシャルティ)を教えているMonica Chooさんと、Project Seahorse (タツノオトシゴプロジェクト)で博士課程修了後の研究に携わっているTse-Lynn Lohさんお二人に話をお聞きしました。

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――― iSeahorseはどんなきっかけで始まったのですか?

「iSeahorseは、カナダのバンクーバーに拠点を置いているProject Seahorse(タツノオトシゴプロジェクト)という、世界の沿岸海洋生態系の保護や持続的使用に打ち込んでいる海洋保護団体がスタートしたものです。タツノオトシゴは河口、サンゴ礁、マングローブ、ワカメや海草など、様々な海洋環境に生存しており、医療、経済、生態学、生物的な面など、いろいろな理由で保護する必要があります。しかし、小さい上、周囲の環境に紛れ込む可能性があることから、野生での研究は難しくて、どんな脅威に直面しているか十分な情報がありません。

iseahorse記事(提供:ボニー)

photo by Jong Dumalagan

iSeahorseを通して、誰でも、世界中のどこにいても、タツノオトシゴを観察して記録する事ができます。こういった市民科学者=citizen scientistsから情報を得るのは非常に簡単で手頃です。私達も理解を深める事ができて、世界中のタツノオトシゴ研究や保護もどんどん向上していきます」

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photo by Nicole Kit

――― タツノオトシゴが今直面している脅威は何ですか?

「毎年、何百万匹ものタツノオトシゴが捕まえられていて、水族館での展示、伝統的な漢方薬やお土産などに利用され、世界中で販売されています。それから、タツノオトシゴは主に人間の活動に影響される浅い沿岸部に住んでいるので、生息地の破壊に非常に弱いです。

残念ながら、タツノオトシゴの地理的範囲は非常に大きくて、周囲の環境に紛れ込むので 、野生での観察は難しいです。現在11種が絶滅の恐れのある生物種のリスト( IUCN Red List of Threatened Species)に載っていますが、26種は「情報不足」Data Deficientにカテゴライズされています。つまり、これらの種は生き残っているのか、絶滅しているのか、その中間に位置しているのか、情報が不十分だという意味です 」

――― そういった脅威は、国によってますます深刻な問題になっていますか?」

「世界最大のタツノオトシゴ輸出国は東南アジアの国々ですが、最近は西アフリカも主な地域のひとつとなっています。中国は唯一世界最大のタツノオトシゴ輸入国で、漢方薬のために輸入しているそうです。」

――― iSeahorseアプリはどうやって使うのですか?

「速くて簡単ですよ! 科学者、ダイバー、漁師、もしくは単にタツノオトシゴが大好きな方、誰でも使えます。まずは自分の内容を登録し、ログイン後、何を、いつ、どこで発見したかなど質問に答えて、情報を入力します。写真もあれば同時にアップロードできます。 アップロードされた情報や写真は、登録した他のユーザーも見る事ができて、情報が足りなければ追加することもできます。iSeahorseには地図、写真、ID 情報などデータがいっぱい載っています」

――― アップロードされた写真はどのように使われるのですか?

「写真はもちろんアップロードした方の写真で、自分の写真は好きなように使えます。アップロードされた写真は、他のユーザーも見る事ができて、種同定にも役立ちます。写真は観察情報の一部で、Project Seahorseの研究、教育、保護や管理にも利用されています」

iseahorse記事(提供:ボニー)

photo by Nicole Kit

――― タツノオトシゴが一番見つけやすい場所はどこですか?

「種によりますが、だいたい浅い熱帯の海や温帯海のサンゴ礁、マングローブや海草に住んでいます。日本も含めて、南アメリカから東アジアまで世界中で見られます」

――― iSeahorseアプリはどれくらい人気ですか。登録したユーザーは何人ですか?

「35種ものタツノオトシゴが合計で1,250回以上観察されており、ユーザーは何百人もいます。彼らの貢献や協力はタツノオトシゴの科学や保護の面で非常に貴重です」

――― iSeahorseは成功していると思いますか? タツノオトシゴの保護や記録にどれくらい大きな役割を果たしていますか?

「絶対に成功しています。そして面白いのは、15%以上もの発見はタツノオトシゴの普段の地理的範囲とは違うエリアから来ています。普段生存していない場所にもタツノオトシゴがいるという意味で、それも科学や保護にとても大事です。

それから、何人かのユーザーは タツノオトシゴの数を定期的に観測し、報告してくれています。一つの決まった場所で何回も熱心に観測し、 健康でちゃんと成長しているかどうか確認してくれているのです」

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photo by Jong Dumalagan

――― 将来の予定について教えてください。今年は新しいプロジェクト等に関わる予定ですか?

「今年はiSeahorseのTaking Action Toolkitが出ます。中には、一般市民が地元のタツノオトシゴの更なる保護をどう主張できるのかなど、さまざまなアドバイスやアイディアが載っています。また、決まった場所で定期的に観測してくれるユーザーのネットワークを拡大したいです。登録するすべての人は、変化をもたらす事ができますよ! 」

――― ありがとうございました!

世界中の市民科学者達と協力すれば、きっとタツノオトシゴや絶滅の危機に直面した他の海洋種のために大躍進を遂げることができるでしょう。
iSeahorseの今後の活動への期待が高まっているようです。
ちょっと変わった、楽しい海洋保護方法で、しかも無料ですのでぜひトライしてみてください。詳しい内容は下記のリンクに載っています。
https://itunes.apple.com/ca/app/iseahorse-explore/id705658119?mt=8

■情報協力:Monica Choo、Tse-Lynn Loh
■写真協力:Joe Platko, Jong Dumalagan, Nicole Kit
■iSeahorseウェブサイト:http://www.iseahorse.org

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PROFILE
イギリス生まれ、8歳から13歳まで日本で育ったイギリス人と日本人のハーフ。

2006年に再度来日し、ナレーター、翻訳者、ライターとしてNHKテレビ、ラジオ、日本駐在外国人向けのウェブサイトなどで活躍。
2010年ニューカレドニアで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、2011年以降定期的に日本で潜っている。

日本の海の魅力、多様な生物や地形等に感動し、海外であまり知られていない日本のダイビングを紹介する目的で、2011年にブログ(Rising Bubbles)を立ち上げた。

外国人向けのサイトや海外のダイビングサイトで日本のダイビングスポットを定期的に紹介しており、スコットランドのセントアンドリューズ大学で水産養殖も勉強中。

「ダイビングをきっかけに、日本の海がどれだけ魅力的なのかをすごく実感しました。この連載では、たくさんの情報を届けていきながら、海外からのトピックを取り上げ、日本と海外の違いや海外の視点等をシェアするのを楽しみにしております」
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