Underwater Photographers from Around the World(第5回)

世界初のアジア人女性受賞! 「 Wildlife Photographer of the Year」最優秀作品受賞~インドラ・スワアリ・ウォノウィジョジョ~

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Passing Giants

ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー 最優秀作品 『Passing Giants』

今回、ご紹介させていただくのは、インドネシア人の水中カメラマン・インドラ・スワアリ・ウォノウィジョジョ(Indra Swari Wonowidjojo)さんです。

2014年10月21日に、インドラさんの写真が、ロンドン自然史博物館とBBC(英国放送協会)が主催するフォトコンテスト「ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」(Wildlife Photographer of the Year)の海洋生物カテゴリーで、最優秀作品に選ばれました。

インドラさんは、世界初のアジア人女性受賞者です。
今回は、インドラさんとじっくりお話しをします!

インドラ・スワアリ・ウォノウィジョジョ(Indra Swari Wonowidjojo)

インドラ・スワアリ・ウォノウィジョジョ(Indra Swari Wonowidjojo)

―――賞を獲得したこの写真は本当に魅力的ですね。

インドラ

Passing Giants (通りかかる大物)と名付けました。この写真は、東インドネシアのチェンドラワシ・ベイ(Cendrawasih Bay)で撮ったものです。そこには「バガン」(bagans)と呼ばれる釣り用の網がいくつか設置されており、たくさんの小さな魚が入っています。ジンベエザメにとっては食物源です。チェンドラワシ・ベイは食べ物が多く、水温が暖かいのでジンベエザメには最適です。

―――写真はどの角度から撮ったのですか。

インドラ

その日は、朝から晩までほとんど水にいました! ジンベエザメはどこから現れて網に向かうのだろう、と思いながら泳ぎ回っていました。そしたら、大人が一匹、ちょうど私の真下を通り、もう少し深いところからもう一匹が現れました。いい写真を撮るには、ちょうど2匹の間ぐらいにいなければいけないなあと思い 、完璧なスポットが必要でした。

―――何が最も難しかったのですか。

インドラ

自分をどう位置づけるかでした。2匹は私の真下を通りそうで、もし急に方向を変えたら写真は撮れないと思いました。また、自分がもし位置をキープできなかったら大変なことになるとは知っていました。チャンスは本当に一回しかなく、それは大変でした。

―――緊張感がよく伝わります。でもタイミング、ばっちりでしたね。

インドラ

そうですね。2匹の間にいたくて、最も良い角度から独特な写真がうまく撮れたと思います。

―――水中写真やダイビングをはじめたきっかけは何でしたか。

インドラ

1994年に初めて潜りました。お母さんと一緒にカリブのセントルシア湾にバカンスで行っていて、とっさの思いつきで体験ダイビングをすることにしました。海の静さを感じて、青い水と綺麗な海洋植物を見た私はすぐに海の美しさに惚れ込みました。すごく落ち着いて、のんびりリラックスできました。それ以来、1,725本潜りました。

―――そののんびりした気持ち、私もとても良く分かります。どこで潜るのが一番好きですか。

インドラ

サンゴ礁や沈船、何でも好きですが、マクロ撮影が最も好きなので、マクロやマックダイビング(注:泥地を這いながら細かい生物を捜すダイビングスタイル)ができるところが一番好きです。マックダイビングが可能なレンべ島には何回も行きますね。

―――どうしてマクロやマックダイビングが好きですか。

インドラ

マックダイビングができるポイントは、見た目はあまり面白くないです。綺麗なサンゴ礁や面白そうな地形や岩がなく、海岸線にも近いのでゴミも堆積しやすいです。でも、強い流れがないので、多くの綺麗な生物はマックダイビングのポイントに集まります。マクロを撮る機会は無限にあります。もともと小さい物が好きで、マクロレンズを通して生物の細かい部分や美しさを写真ではっきり見せるのがとても好きです。

Nudibranch Gymnodoris

Nudibranch Gymnodoris

―――それにしても、送っていただいた写真はPassing Giants以外全部マクロですね。まず、この写真について少し話してくれますか。

インドラ

これは、インドネシアのレンべ島で撮ったウミウシです。ウミウシの種類は様々で、いろいろなサイズ、形や色があるから面白い被写体です。また、ゆっくり動くので写真は撮りやすいです。ダイバーの間では見くびられていると思いますが、まったく違う視点から撮って、キャラクターや特徴等を表に出すのは とっても大きなチャレンジで、楽しいです。

Harlequin shrimp

Harlequin shrimp

―――確かに、違う視点から見るといろいろな発見がありそうですね。この写真はどこで撮ったものですか。

インドラ

ラジャアンパットで潜っていた時、このフリソデエビを発見しました。独特な形や色を持つこのエビは、水中写真家の間で最も人気な生物の一つです。 海綿にじっとしていたので、海綿をバックに写真を撮ったら綺麗かもしれないと思いました。

 Pipefish Kyonemichthys rumengan

Pipefish Kyonemichthys rumengan

―――そしてこれは、タツノオトシゴに見えますね。

インドラ

これは、ピグミーシードラゴンやピグミーパイプホースと呼ばれていますが、確かにタツノオトシゴと少し似ていますね。体が細くて、長さは2.5センチしかないので見つけるのは非常に難しいです。また、とてもアクティブ でいつも動き回っていますのでうまく撮るのはとても難しいです。

―――インドラさんは潜っていない時は何をしていますか。

インドラ

10年間ずっと水中写真を撮ってきたのですが、最近は地上で写真をもっと撮るようになりました。最も好きな被写体は野生生物ですが、風景写真や人の写真を撮るのも好きです。人間は、国、地域や町を特徴づけると思います。旅行やダイビングをしていない時は写真の処理や娘の世話でとても忙しいです! 写真の仕事のためにどこかへ行かなければいけない時、娘はいつも一緒に来てくれて、旦那はとてもいいアシスタントになってくれます。

―――仕事のために、旦那さんと娘も動いてくれるのですね。とてもいい事です。日本へ来る予定はありますか?また、日本の海やダイビングの印象は何ですか。

インドラ

実は日本にあまり詳しくなく、まだ行ったことがないのですが、とても行きたいです。一応行きたい国のリストがあり、日本も載っています。

―――ぜひ、日本の海洋生物の写真も撮ってください! Wildlife Photographer of the Year最優秀作品を受賞してちょうど1年経ちましたが、今後の予定について教えてください。

インドラ

写真はもともと趣味で、あのジンベエザメの写真が 最優秀作品になるとは思わなかったです。今後、写真の面で何が起きるか分かりませんが、時々水中写真のトークやセミナーを開催していますので、そんなイベントを通して、人の海や陸等自然保護への関心を高めたいです。また、サメを嫌うのはよくない、環境をきれいにしなければいけない等のメッセージも世界に発信できればと思っています。

インドラさんの写真を見ていた時、彼女はマクロ生物を撮る時のチャレンジや難しさが最も好きと今回すごく感じました。
単にマクロ生物の写真を撮るのではなく、その生物の個性を発見して写真でうまく表すのが独特な写真を撮る鍵なのではないかと思いました。

また、水中写真がコンテストに受賞されるには何が大事でしょうか。
マクロの場合は、被写体に寄るか離れるか、フォーカスエリアを変えて構図を工夫したり等、さまざまな技があると思いました。
ちょっとした工夫で、より良い写真を撮るのが重要ですね。

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PROFILE
イギリス生まれ、8歳から13歳まで日本で育ったイギリス人と日本人のハーフ。

2006年に再度来日し、ナレーター、翻訳者、ライターとしてNHKテレビ、ラジオ、日本駐在外国人向けのウェブサイトなどで活躍。
2010年ニューカレドニアで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、2011年以降定期的に日本で潜っている。

日本の海の魅力、多様な生物や地形等に感動し、海外であまり知られていない日本のダイビングを紹介する目的で、2011年にブログ(Rising Bubbles)を立ち上げた。

外国人向けのサイトや海外のダイビングサイトで日本のダイビングスポットを定期的に紹介しており、スコットランドのセントアンドリューズ大学で水産養殖も勉強中。

「ダイビングをきっかけに、日本の海がどれだけ魅力的なのかをすごく実感しました。この連載では、たくさんの情報を届けていきながら、海外からのトピックを取り上げ、日本と海外の違いや海外の視点等をシェアするのを楽しみにしております」
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